改めて俺ガイルの人気を思い知りました。
夜も更けた午後10時。俺は大きく伸びをした。
「やっと終わったかー」
なんとか高校1年生分の数学を終わらせて呟いた。やっぱり1年分終わらせとかないと安心できないんだよな。雪ノ下家の長男というプレッシャーは洒落にならんし。他の教科もやらなくてはいけないから、まだまだ大変だけど。
「お疲れさま」
雪姉が紅茶を持ってきてくれた。いつ飲んでも美味しいなぁ。
「ありがとう。いつも美味しいよ」
雪姉は優しく微笑んで答える。今のところこの優しそうな雪姉の表情は俺しか見えないから優越感あるなぁ。
「そう。喜んでくれるなら、作った甲斐があるわ」
ここまで仲のよい姉弟も珍しいんではないだろうか。不意に雪姉が聞いてきた。
「星斗、今日はどこで寝るつもりかしら?」
「雪姉のベッドに行くわけにはいかんし、リビングで寝ることに……」
俺の言葉は途中で遮られた。
「……別にいいわよ」
「……へ?」
俺は驚いて雪姉を見る。
「別に悪いことでもないでしょう。姉弟なんだし。それに星斗なら変なこともしないでしょうし」
変なことって何を想像したんでしょうかね。思春期の高校生がしそうなことか。まあ、信頼されているというなら素直に受け取っておきますかね。
「ま、そうか。じゃあ布団買うまでよろしくさせてもらっていいか?」
「ええ。もちろん。なんなら、ずっとそのままでもいいのよ」
なんか今日雪姉テンション高いなぁ。久しぶりに弟に会えたからかな。
その後、俺たちは風呂に入り(さすがに風呂は別々に入った)雪姉の部屋に向かった。
二人で横になりながら、俺は呟いた。
「なんか久しぶりだな。雪姉と寝るの」
「そうね。小学生のとき以来かしら?」
「ああ。陽姉と雪姉と俺の三人でいつも寝てたっけか。あとときどき葉山先輩とかもいたっけ」
俺が葉山先輩の名前を出したところで雪姉の表情が少し陰った。小学生のときにいろいろあったもんな……。葉山先輩は雪姉を助けられなかったことを悔やんでいるらしいが、俺からしてみれば雪姉のことでほとんど周りからいじめられなかったのは、葉山先輩と陽姉が圧力をかけていたからであり、ある意味恩人でもあるのだ。
「……ごめん。なんか無粋だったね」
「別に気にしないでいいわよ。事実なのだし」
そうは言うものの今までの明るさは少し欠けているような気がする。
「今日は来て良かったよ。それで雪姉。なんで今日帰ってくるのが遅かったんだ?」
今日、雪姉は7時前に帰ってきており、彼女のいない間に合鍵を使ってマンションに入ったのだ。
「最近、部活に入ったのよ」
「そうなんだ。どんな部活?」
「奉仕部っていう部活よ。依頼の解決に手を貸す部活よ」
なんかイヤらしいネーミングだなぁ。そんなことを思っていたら見破れたようだ。
「……星斗が思っているような部活ではないわ。なんで男子高校生はそういう考えになるのかしらね」
雪姉は呆れたように言った。
「誰が他にいるんだ?」
「目の腐った男子と私だけよ」
「おい、それって……」
俺は思わず口調が強くなる。
「大丈夫よ。平塚先生によると彼はリスクリターンの計算には長けているらしいし、そんな変なことをする度胸もないでしょうし」
そうは言うものの不安なものは不安である。これはもはやシスコンの性である。
「そうは言ってもなあ……」
「大丈夫よ。危なくなったら向こうに地獄を見せてあげる」
「雪姉が言うと冗談に聞こえねぇわ。何かあったら、すぐ教えろよ。雪姉は可愛いんだから、手遅れになる前に俺か陽姉に相談しろよ」
俺が軽く笑うと、雪姉は天使の微笑みを浮かべて答えた。
「分かったわ。何かあったらよろしくね」
その目の腐った男子というのがどんな男子かまだ分からないが、俺に今できることはこの穏やかな笑顔を弟として支え続けることだけだ。そう誓って眠りについた。
今回はここまでとなります。そろそろ書き置きが費えそうです。ネタ切れを避けるためにはどうすればいいのか……。
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