朝起きたとき、雪姉は隣にはいなかった。恐らく、朝食や弁当の準備をしてくれているのだろう。わざわざご飯まで作ってくれるのは、本当にありがたい。
「おはよう、雪姉」
「おはよう、星斗。急がないと遅刻するわよ」
雪姉は穏やかに言う。朝食を食べながら、もつべきものは姉だなぁとしみじみ思った。兄がいても、もちろん嬉しいが、ここまで世話を焼いてくれることはないだろう。
俺はご飯を片付けて、
「それじゃ先に行くよ。高校生にもなって姉と登校するのを同級生に見られるのも少し恥ずかしいしな」
と言った。
「そうね。それじゃ、いってらっしゃい。また、学校でね」
雪姉は小さく手を振って笑顔で俺を見送ってくれた。雪姉と結婚した人は、朝からあんなに幸せな気分になれるのか。そう考えると、将来の雪姉の旦那さんが羨ましく思えてくる。
俺は電車に揺られながら、ぼんやりと外を眺めた。広がっているのは穏やかな千葉の景色である。こうして見ると、都会過ぎず、田舎過ぎずとちょうどいい町であることがはっきり分かる。
ぼんやりと物思いに耽りながら歩いていると、いつの間にか総武高校に着いていた。ここのC組が俺のクラスである。
俺はあくびをしながら席に座る。すると、後ろから声がした。
「星斗くん、おはよっ」
可愛らしい声で挨拶してきたのは、クラスメートの一色いろはである。もう、何というか、すごいあざとい。陽姉からあざとさを鍛えられた俺ですらドン引きするレベルであざとい。
「おはよう、一色」
俺が答えると、一色は首を横に振り、あざとく呼びかける。
「星斗くん、いろはって呼んでよ~」
いや、別に呼んでもいいよ。いいけど、俺を見る周りの男子の目が鬼みたいになってるんだよなぁ。粛清されてしまうのは何としてでも避けたい。
よっしゃ、それじゃ俺も陽姉譲りのあざとさで迎え撃ってやる。
「いやさ、なんか一色のこと、下の名前で呼ぶのは緊張しちゃってさ」
そう言ってみる。しかし、彼女は俺がまったく本気でないことに気づいているだろう。俺があざとさで迎え撃とうとしていることにも気づいているだろう。
「そんなこと、言わない方がいいよ。だってほら」
一色は俺の後ろを指差した。なんか鼻血を流している女子が数人いた。
「え? これ、俺のせいなの?」
俺が聞くと、一色は苦笑いしながら答えた。
「星斗くん、自分のあざとさを少しは認識した方がいいよ」
お前がそれを言うのかよ。ていうか、俺の発言で変な妄想してるとか、そして鼻血流すとか女子としてどうなの?
放課後、俺は雪姉がやっているという奉仕部とかいう部活の様子を見に行くことにした。とはいえ、勝手に行ったら怒られるだろうから、とりあえず平塚先生に挨拶して行くことにした。
「失礼します」
生徒指導部のドアをノックして、中に入ると、書類を整理していた平塚先生が答えた。
「君は……。雪ノ下の弟か?」
俺は頷いて答える。
「はい。雪ノ下星斗と言います。姉がいつもお世話になってます」
平塚先生は優しそうに笑う。
「気にするな。あの二人にはこっちも世話になってるからな。それで、何かあったのかね?」
「突然、すみませんが、姉が少し心配でして」
「これといった問題はないと思うが……」
「そう言われましても、弟が姉を心配に思うのは弟としての思わざるをえないことでして」
先生は軽く笑った。
「そうか。まあ、様子が心配なら見に行ってくればいいが、大丈夫だろうさ。奉仕部の部室は特別棟の四階だ」
何というか、男らしい先生だなぁ。俺より全然、男子っぽい気がする。
「ありがとうございました。それじゃ」
そうして俺は生徒指導部を後にした。というか、特別棟の四階ってめちゃくちゃ遠いところにあるんだなぁ。
どこだろうとぼんやりと歩いていると、雪姉の声が聞こえた。その部屋のドアに向かって歩き、俺はドアをノックした。
「どうぞ」
俺はゆっくりドアを開けた。中には雪姉と退屈そうにしている男子が一人いるだけだった。
「雪姉、部活はどう?」
雪姉が答える前に、男子が言う。
「……誰?」
「……私の弟よ」
「……似てねぇな」
ちょっとそこー、丸聞こえだよー。
「雪姉の弟の雪ノ下星斗です。よろしくお願いします」
俺は男子に頭を下げる。
「2年F組の比企谷八幡だ、よろしく」
比企谷先輩が言う。何というか、目がなんか個性的な感じだなぁ。まぁ、初対面の先輩に腐ってるとか言うほど失礼にはさすがになれないけど。言っちゃってるって?
モノローグは聞こえないから、セーフでしょ。
同級生ポジのいろはすの再現が無理ゲーなんだがwww
おそらくこんなんだろうなって思って書いてるんで、イメージと全然違っていたらごめんなさい。
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