命に嫌われた少年   作:まっちゃんのポテトMサイズ

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第10話 シナリオ

 

「…ああ、うん。彼は頑張って生きてるよ」

 

神は目の前にいる男に笑いかけた。

目の前の男は安堵したように溜息を一つ吐き、腰を上げた。

 

「そうか。良かった」

 

それだけ言って男は神に背を向けて去っていった。

 

「ま、今のところは、ね。…私は、彼の間違った思い込みを正すためにはどんな法でも犯す。それが、ちっぽけな世界の神に託された任務だ。…まったく、憎まれ役を務めるのは骨が折れるね」

 

神はあるシナリオが書かれた一枚の紙を取り出し、その最後にある一文を書き加えた。

 

「今のところは順調。そのまま行けば、彼の思い込みは正される。さて、暫くしたら二つ程命を奪おうか。壊すなら、もっと親密になった後の方が良い」

 

そう言って口をニヤリと曲げて、紙を握り潰した。

 

「さぁ、楓。君の精神はどれだけ強いのか、試させてもらおう」

 

 

 

「…なんで俺がそこに絡んで来るんだ」

 

俺は新たな本に視線を落としながら、向かい側にいるリサにそう問いかける。

 

「良いじゃん、いこーよ!!」

「…まぁ良いか」

 

俺は本を閉じ、机に置いて椅子に体重をかける。

そして、目を休める為に瞼を閉じる。

 

「…それで、いつ行くの」

「今度の日曜日だよ」

「分かった。…にしても、もう夏か」

 

俺は右眼を開けながらリサに視線を合わせる。

彼女達と出会ったのは、まだ寒気が微かにあった春。

彼是数か月経って居る。存外、俺はこの人生を楽しんでいるのかもしれない。

他人と関わる事が怖いのは変わっていないが、それが治るのも時間の問題だろう。

 

「うん。時間が経つのってほんっとに速いよね~」

「…うん」

 

俺はそう呟き、気分転換に行こうと重い腰を上げる。

 

「それじゃ、ちょっと散歩に行ってくるよ」

 

俺はそれだけ言って外に出た。

炎天下の中、小さな子供たちは元気に走り回りながら笑みを浮かべている。

 

「…そう言えば、もう直ぐ七夕か」

 

俺は母さんと行った七夕祭りの事を不意に思い出した。

当時、まだ小さかった俺はそれに対して何も思わなかったが、それはとても美しかったものだと、今更ながら思う。

 

「…もし、この世界にも、七夕祭りがあるんだったら、行ってみよう」

 

母さんが俺に見せたかった景色をもう一度見てみたいのだ。

母さんと過ごした日々を、忘れないように。

 

「…いけないな、気分転換に出たのに、余計に気持ちが沈んで行く」

 

俺は溜息と共に憂鬱さを吐き出し、前を向いて行く当てもなく、再び歩き出した。

 

 

「…七夕か。だったら、偶には会わせても良いよね。それを、彼が願うんだったら」

 

神はシナリオを眺めながら小さな笑みを浮かべた。

子を思う母親と言うのは、どの世界でも強くある存在。

私は、それを知っている。

何度も見て来た。

子を守り、死んだ者。子を思い、死に絶えながらも、地上に姿を現した者。

それらは、子供の無事が確認できたと同時に成仏していった。

それらにとっては子供と言う、ちっぽけな存在だけが、自らの生存理由だと言えるだろう。

 

「…滑稽だったよ。皆。そんなの、偽善でしかないのにさ」

 

そう言って、神は顔をしかめた。

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