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おやすみなさい(徹夜でこの話書いてました())
俺は急いで着替え等の荷物をバッグに詰め、玄関で待つリサの元に向かった。
今日は日曜日。この前リサに誘われ、付いて行くことになった日だ。
どうやらRoseliaの息抜きとして行くことになったらしく、それに俺が付いて行って良いのかと疑問を抱く。
だが、今更そんな事を気にしても仕様が無いと割り切り、黒いスニーカーを履く。
そして、扉を押し開け、外に出る。外は雲一つない快晴で、太陽は俺の身体を照らしつける。
如何やら、昼頃に最寄り駅に集合だったようだが、俺たちは少し早めについてしまった。
何もすることが無かった俺は何となく近くの壁に体重をかける。
それから暫くした後に皆が集まってきた。俺は何故かお洒落をしてきた皆の服装を見ないように、リサの後ろを付いて行く。
駅のホームに着くと、ベンチに座り、バッグの中から本を取り出す。
笑いながら会話しているリサ達に視線を向けると、余りにも雰囲気が明るく、本当に俺が付いて行って良いのか疑問に思えて来る。
そんな事を思っていると、『間もなく電車が参ります』と言うアナウンスが流れ、ベンチから立ち上がってリサ達の元に向かう。
電車の中は人で一杯になっており、地獄の様に暑苦しかった。その上、俺の身体にあこがくっついて居る為、その恥ずかしさから余計に身体が熱かった。
「…あこ、大丈夫?」
「う、うん!」
あこがそう返事した時に目が合ってしまい、俺は直ぐに目を逸らした。
そして、その恥ずかしさを紛らわす為に本を読み始める。
暫くして、心臓の鼓動が落ち着いてくると、俺は本を閉じ、瞼を閉じる。
すると、近くから変に色気の込められた女性の声が聴こえて来た。
それがリサの声だと気づくのには、時間は要らなかった。
瞼を開けてリサの方を見やると、リサの顔は赤みを帯びており、怯えた目でこちらを見つめてきていた。
俺は直ぐに周囲の人間を押し退け、リサの背後に立つ。
「…リサ、大丈夫?」
「な、何とか…」
「良かった。一旦、あこの所に行ってて」
「分かった」
俺は右手で吊革を掴みながら本を読み始める。
次の駅に着くと、リサを痴漢していた男は急いで降りて行った。
俺は溜息を吐き、本のページを捲る。
次のページのタイトルには「平行世界について」と記されており、ふっ、と小さく笑ってしまった。
平行世界…か。
そこはきっと、理想郷だ。御霊が死ななくてよかった世界、両親が死ななくてよかった世界、御霊が虐待されなくてよかった世界…。
そんな理想が叶えられた世界。だが、その理想が叶ってしまえば、リサ達と出会う事は無いのだろう。
そんな事ならば、俺はそれを否定しよう。それに、平行世界は理想だけじゃない。絶望が待っている可能性だってある。
…それに、俺は俺を否定などしたくない。人は、これまでの人生から形成されるもの。
平行世界に行くという事は、それまでの自分の人生を変えるという事。それが僅かな差だったとしても、後に強大なものに変わるかもしれない。
きっと、それでも行きたいという人もいるだろう。…昔の俺だったら、そうだっただろう。
だけど、今の俺はそんな事は望まない。友人に囲まれ、両親も居て…こんなにも、恵まれているのだから。
俺は本を閉じ、それをバッグの中に入れる。もう直ぐ、目的地の最寄り駅に着く頃だろう。
その駅に着くと、俺はホームに出て溜息を吐く。
まったく、あの中は地獄だった。熱中症になっても可笑しくなかった位だ。
「ほら、楓行くよ!!」
リサは先程の事を忘れてしまったかのような眩しい笑みを浮かべながら俺の手を引く。
「分かったって」
俺は苦笑いを浮かべ、転ばないように何とか歩を進める。
暫く歩くと、漸く目的地に着いた。駅から徒歩で十分と言うのが嘘に思えてくるほど長く感じた道のりだった。
中に入ると、リサの言っていた通り、ウォーターアトラクションが沢山あり、余りにも広大な敷地に俺は思わず驚いてしまった。
「取り敢えず、水着に着替えよっか。更衣室は…」
「…あっちだね。それじゃあ、集合はそこの前で良いかな」
「うん、またね」
俺は更衣室に入ると、長袖のラッシュガードを着て、集合場所へと歩を進める。
そこには既に皆が集まっており、リサが俺に気づくと、手を振ってきた。
手を振り返し、小走りでリサ達の元に向かう。
そして、皆の水着姿を間近で見ないように視線を逸らす。
男に水着姿をまじまじと見られるのは些か不愉快だろう。
「それじゃあ、早速何処に行こっか」
「俺は…プールサイドでゆったりと…」
「いやいや、折角来たんだし、一緒に泳ごうよ~」
「まぁ、リサが言うんだったら…」
「…特に向かうところが無いようでしたら、先ずはウォータースライダーの優先パスを取ってしまいましょう。その後は…」
不意に紗夜が発言したと思うと、スラスラとプランが口から紡がれていく。
俺は舌を巻く。恐らく、紗夜さんはこの息抜きをとても楽しみにしていたのだろう。
そうでなければ、こんなに言葉を紡ぐことはできない。