前回赤点取っててこりゃまずいと勉強せざるを得なかったんです()
これからもナメクジで頑張ります。
白金さんからの告白から一週間、俺は返事を保留にしたまま家でずっと考え続けていた。
リサからも両親からも心配されたが、これは俺一人の問題だからと言わないでいた。
「…確かに、彼女の事は好きだ。でも、それが恋愛対象なのかどうかは…」
溜息を吐き、気分転換にと外に出る。
燦燦とした太陽が俺の背中をじりじりと照りつけ、昨日の雨のせいか、じめじめした空気が肌に纏わりつく。
鬱気を払いに喫茶店でも行こうかと商店街に行くと笹に色とりどりの短冊が飾ってあるのが目についた。
「…もう七夕の時期なんだ」
…結局、母さんが俺に見せたかった景色は見られなかったな。
そよ風になびく短冊を眺めながら少し残念に思っていると精肉店の方向からあこの呼ぶ声が聞こえてくる。
その方に向き直ると彼女はいつの間にか目の前に立っている。
わざわざ走って来なくてもいいのに。
彼女の無邪気さに自然と笑みがこぼれる。
「楓兄はここでなにしてるの?」
「特に何も。ただこれを見てただけだよ」
笹に視線を戻す。彼女も同じようにそれを眺める。
「もうすぐ七夕だもんね!」
「うん。…あこは短冊、何書くの?」
笹の下に用意された短冊の山から取った1枚を彼女に差し出す。
「えっ!?えーっと…」
そう問うと、彼女は受け取ったそれを見つめたまま口籠ってしまった。
俺から言い出した方が彼女も言いやすいのではないかと、自分の願いを吐露する。
「俺はね…父さんと母さんにもう一度逢いたいんだ」
「お父さんとお母さん?」
「うん。俺が小学生の時に居なくなっちゃったんだ。…まだお別れも言ってなかったのにね」
家でも、葬式でも、どこでもお別れなんて言わなかった。
…恥ずかしかったんだ。『行ってきます』なんて言うのが、子供っぽい気がして、嫌だった。
「それどころか、感謝もね。…だから、せめてそれだけは伝えたくて」
「そっか…」
「ごめんね。こんな重い話」
そりゃ、その6文字は大事だって今なら分かる。別れたあとだから、分かってしまうんだ。
その事実が痛い程に胸を締め付ける。…でも、葬式で言わなかったのは。
お別れを言えなかったのは。
その事実を前にして、俺は目を逸らす。
そんな訳は無いと、それを最初から無かったものとして片づける。
「ううん、全然!」
彼女は笑みを浮かべながら俺の目の前に立つ。
「大丈夫だよ!楓兄なら絶対2人とまた会えるよ!」
「…そっか」
頬が綻ぶ。
彼女の慰めに一縷の望みを得る。
そうだ。御霊と俺がもう一度逢えたように、きっと両親ともまた逢えるはずだ。
「ありがとう」
彼女の頭に手を置くと彼女は頬を赤らめたまま満面の笑みで頷く。
「それで、あこはどんなお願いを書くの?」
手を離し、自分の分の短冊を取る。
「えっ…と…。ひ、秘密!」
そう言いながら彼女は俺から視線を逸らす。
「そう言われると気になるな」
大して返答を期待せずに意地悪く問うてみる。
「うぅ…」
予期していた返答とは反対に、あともう一押しでその答えが聞けそうな雰囲気だった。
これはと思い、再度尋ねてみる。
「教えてくれないんだ」
すると、彼女は苦悶する様に、何度も口を開いては考え込む様子を見せた。
俺はその様子に思わず吹き出してしまった。
「そんな無理して言わなくて良いよ。意地悪してごめんね」
彼女の頭を撫で、自分の短冊とボールペンを2本とり、一方を彼女に渡す。
「ささっと書いてどこかでご飯食べよう。お腹空いてない?」
「そう言われると少しお腹が空いたような…」
「じゃあ決まりだね」
俺は短冊に『家族ともう一度逢えますように』とペンを走らせ、笹に糸で括り付ける。
「あこは書けた?」
「もうすぐで…。出来た!」
あこはそう言うと直ぐに俺とは違う場所に括り付ける。
「それじゃあ行こっか。…マックでいい?」
「うん!」
彼女の歩調に合わせながら歩いていると、しきりに俺の手を見ては自分の手を近づけたり、引っ込めたりを繰り返している。
俺は彼女が手をつなぎたいのだと思い、掌を表に手を差し出す。
「はい」
「えっ?」
「繋ぎたいんでしょ?いいよ、繋いで」
「えぇっ!?」
すると、彼女は遠慮がちに手を近づけると、掌を乗せる直前で躊躇して止まってしまったので、こっちから手をつないだ。
「じゃ、行こっか」
彼女が赤面しながら上の空になっているのを横目に手を引きながらマックへと歩を進める。