クリスマスなのに執筆をするまっちゃんです。
いやはや、プレゼントは良いですなぁ。
…まぁ、それも自分へのご褒美ですけども。
では本編どうぞ。
退院する日、俺はその準備を着々と進めていた。
それをしている途中に病室の中に扉をノックする音が響いた。
俺が返事をすると、今井さん達が入ってきた。
「やっほ~。手伝いに来たよ」
今井さんが手を振りながらそう言った。
「いえ。もう直ぐで終わりますので」
俺がそう言うと今井さんは何故か唸り始めた。
それに構わず淡々と作業を進めていると、今井さんが急に話しかけて来た。
「もうすぐお昼だしさ、その、一緒にご飯食べよ!」
「まあ、良いですけど…少し待ってもらうことになりますよ」
「大丈夫!時間ならまだあるから!」
今井さんがエッヘン、と言わんばかりの表情を俺に向けてそう言った。
後ろでは白金さんが微笑を浮かべながら宇田川さんとコソコソ話していた。
「今井さん…波谷さんと、会える日…いつも楽しそうにしてたから…」
「そうだね。でも今日でお別れかぁ~。でも、またいつか会えるよね!」
宇田川さんが何やら眩しい笑顔を白金さんに向けた。
「そう、だね」
白金さんも何故か笑顔を宇田川さんに向けていた。
俺は何故二人が互いに笑顔を向けているのか分からなかったが、それを知る必要は無いと割り切り、素早く準備を終わらせた。
病院から出て今井さんに何処で昼食を取るのか尋ねる。
すると、今井さんは少し考え込んでから「マックでも良い?」と言った。
俺は今井さんの言う場所が分からなかったが、取り敢えず頷くと、宇田川さんが「よーし!速く行こー!」と元気な声音を出して駆け出して行った。
白金さんは「あこちゃん…!危ないよ…」と言って宇田川さんを追いかけて行った。
俺はその後ろ姿に不思議な感情を抱いた。
心が温かいような、そんな感じだった。
ふと、ガラスでできた病院の自動ドアを振り返ってみると、そこにはガラスに反射した口角を上げて微笑んでいる俺がいた。
それに気づき、驚きのあまり、唇を指先でなぞった。
確かに口角が上がっている。
笑うのなんて何年振りだろうか。
そう思いながら空を仰ぐ。
…俺には、笑う資格などない。自らの手で、とはいかずとも殺めてしまったのだから。
そうして上がっている口角を下ろし、今井さんの方に向き直った。
「楓、速くー!」
そう言いながら笑顔で手を振る今井さんの姿がそこにはあった。
それから少しして、マックと言う場所に着いた。
「ねえ、楓、何食べたい?」
今井さんが両手を背中で組みながら俺の顔を覗き込んで言った。
その仕草に少しドキッとして思わず目を逸らしてしまった。
「…特に無いです。今井さんのお勧めで良いですよ」
「うーん、紗夜?何かお勧めのものある?」
「…ポテトです」
氷川さんが頬を染めながら小声で呟いた。
「…では、それをいただきます」
「りょうか~い!それじゃ、早く入ろうか」
今井さんがそう言うと、皆は頷いてそこに入っていった。
俺も置いて行かれないように急いでそこに入っていった。
昼時の所為か、マックの中はお客さんで一杯になっていた。
俺は後ろめたさを感じながら今井さんに声をかけた。
今井さんは振り返って「どうしたの?」と言った。
「俺、その、一文無し、なので。奢っていただけないでしょうか?」
「もっちろん!良いよ!」
今井さんは陽だまりの様な笑みを浮かべてそう言った。
「ありがとうございます。…では、俺は席を取って来ますね」
そう言って今井さんの元を離れ、席を探す。
何故ここまで親切にしてくれるのだろうか、と思いながら。
丁度空いた6人席に腰掛け、今井さん達を待つ。
少しすると、トレイを持った今井さん達が来て、俺の両隣に今井さんと氷川さん、向かい側の席には湊さん、白金さん。宇田川さんが腰掛けた。
「はい。これ楓の分ね」
「ありがとうございます」
そう言って今井さんから差し出されたポテトとバーガーを受け取る。
小声で「頂きます」と呟き、バーガーに手を付ける。
それを口に運び、咀嚼をするも、口の中に味が広がる事は無かった。
その驚きを繕うためにバーガーを更に食べ進める。
「そういえば、楓ってどこに住んでるの?」
今井さんが急にそんな事を聞いてきた。
俺は何も答えられずに口籠った。
「…あの」
すると、白金さんが口を開いた。
「失礼ですけど…もしかして、波谷さん…家、無いのでは、ないでしょうか…」
「…ええ。まあ、そうですよ。…でも、どうしてそう思ったのか聞かせていただけないでしょうか」
「…まず、あの時間帯で…千鳥足で、歩き回る人は、そうそう居ませんから…。それと、身体が、余りにも…やせ細って、いたので…」
白金さんは自信なさげに片方の腕を掴みながらそう言った。
「…成程。白金さん、自信を持ってください。貴女の予想はあってましたよ。…確かに、自信を持つのは怖い事ですが…。自信がなきゃ、何もできないので」
「は、はい…!」
「昔の俺が、そうでしたから」
「…何か、言いましたか?」
「いえ」
そう言いながら、ポテトをついばむ。
「それじゃあ楓はどうするのかしら」
湊さんがこの瞬間の最大の疑問を口に出した。
「…良いですよ。俺はそこらの路地裏で勝手に野垂れ死んでおきますから」
俺がそう言うと、その場が一瞬で凍り付いた。
他の皆が唖然としている中、今井さんの鋭い眼光を肌に感じていた。
「駄目!そんな事はアタシが許さないから!!」
今井さんが目に涙を浮かべながらそう言った。
俺は泣かせまいと、苦渋を飲んで頷いた。
「…じゃあさ、アタシの家、住んでも良いよ」
「…へ?」
今井さんが余りにも突拍子もない事を言ったので思わず気の抜けた声を出してしまった。
「…そうですね。今井さんの家の方が、湊さんの家も近いですし、安全かと」
氷川さんが頷きながらそう言った。
俺は別に良いんだが…。
今井さんは一体何を考えているのだろうか。
昨日会ったばかりの男を家に上げるなど、流石に警戒心が足りていないのではないだろうか。
「それじゃあ、ちょっとお母さんに連絡してくるね」
今井さんがそう言って席を離れる。
数分しても戻ってこないことに疑問を覚えた俺は席を立ち、トイレに行ってくるという名目で今井さんを探しに行った。
店の外に出て辺りを探し回る。
すると、路地裏がある事に気づいた。
その路地裏は気づかれにくい場所で、所謂穴場、というやつになっていた。
そこから今井さんの悲鳴が聞こえて来たので、急いで入る。
「やめてください!!」
少し走ると、今井さんに二人の男が群がっている場面に遭遇した。
「まあいいじゃねぇか。少し位、ほんのちょっとだけ付き合ってくれよ」
一人の男がそう言って今井さんの手首を掴む。
俺はそれを見て何故か苛立ちを覚えた。
そうして、オレはその男どもに声をかけた。
「おい」
その声はオレの思うよりも遙かに威圧感を含んでおり、驚いた。
「あ?何だよ」
今井さんの手首を掴んでいた男が振り向いて言った。
「楓!!」
「…こいつの知り合いか?…まあ、取り敢えず、邪魔だから何処か行ってくれねぇかな。こちとら忙しいんよ」
男がへらへらとしながら言った。
オレは「忙しい、ねぇ。笑っちゃうな。本当に君みたいなやつを見てると反吐が出てきそうになる」と言って相手のヘイトを買う。
「テメェ!!」
男は今井さんの手首を放し、キレて殴りかかってきた。
オレはその拳を飄々と躱し、相手の鳩尾にアッパーカットを決めた。
男は気絶して顔から倒れこんだ。
「…」
2人目の男は無言のままオレに突撃してきた。
ショルダータックルを受けたが、強化されたオレの身体は微動だにせず、軽々と受け止めた。
そして、足払いをして転ばせた後に鳩尾にストレートをお見舞いした。
男は腹を抑えながらその場にうずくまった。
オレは露わになった項に手刀を入れて気絶させた。
「大丈夫ですか?」
俺は今井さんに歩み寄り、そう言った。
「楓って、意外と喧嘩強いんだね」
「そうですかね。…取り敢えず、皆の所に戻りましょう」
そう言って踵を返してマックへと戻る。
マックに戻ると、いきなり湊さんが「遅かったわね。何かあったの?」と聞いてきた。
俺はそれに驚き、一瞬言葉に詰まったが何もなかったと伝え、席に着いた。
少しして、俺らは解散となった。
どうやら湊さんは今井さんの向かい側の家に住んでいるらしく、昔からの付き合いがあるらしい。
今井さんの家に着き、湊さんに別れを告げ、今井さんに続いてそこに入る。
「…お邪魔します」
すると、今井さんのお母さんがどたどたと足音を立てながら玄関に向かってきた。
「あら、初めまして。貴方が波谷楓君ね。リサから聞いているわ」
「初めまして」
今井さんのお母さんは気さくそうな人で、とても話しやすかった。
「ささ、入って入って」
俺は靴を脱ぎ、踵をそろえてから中に入った。
そこには新聞を読んでいた今井さんのお父さんが居た。
彼は俺を見つけると、読んでいた新聞を閉じて俺に向き直った。
「…君が波谷君か。初めまして。私の名前は今井
そう言って手を差し出してきた。
俺は自己紹介をしてから彼の手を握った。
「さ、もう直ぐで夕飯出来るから席に着いてて」
俺はそれを聞くと、洗面所に行き、手を洗ってから席に着いた。
少しすると今井さんのお母さんが来て、持ってきたお皿を置いて席に着いた。
「…頂きます」
小声でぼそりと呟いて、白米を口に運ぶ。
俺に釣られたように今井さん達は談笑をしながらご飯を食べ始めた。
俺はその光景に思わず涙を流してしまった。
頬を伝うものに気づき、お皿と箸を置いて、指で拭うも、それは止まる事を知らなかった。
俺はそれを拭っても無意味だと悟り、ご飯に手を付けた。
白米を口に運ぶと、今まで感じられなくなっていた味が、口一杯に広がった。
「あれ…どうして…?」
不思議に思い、味噌汁を飲む。
それもまた、味がした。
俺はこんなに暖かいものを直に感じてしまった為、声を荒げて泣いてしまった。
そんな俺を今井さんは「大丈夫だよ」と言って泣き止むまで背中をさすり続けてくれていた。
そして、今井さんのご両親は俺を見守ってくれていた。
「…ありがとうございます。もう落ち着きました」
「そう?なら良かった」
今井さんは優しい笑みを浮かべてそう言った。
「…それとさ、もう、敬語は止めにしない?だってアタシ達、家族だよ?」
「…そう、だね」
ぎこちない溜口を試しに言ってみる。
…ん?家族?
「何時の間に家族にされてるの?」
「え?だってもうお母さん手続き終わらせちゃったよ?」
今井さんはあたかも普通であるかのように首を傾げながらそう言った。
「…まあ、良いか」
内心苦笑しながら言った。
「改めてよろしくね!楓!」
「…うん。よろしく。…リサ」
「…その~。水を差すようで悪いけど、速く食べてもらっても良いかな?早く食器洗いしたいから」
お義母さんが口籠りながら言った。
リサは何故か頬を赤らめて俯いてしまった。
どうしてだろうか…。
そう思いながら俺はご飯を食べ進めた。
さて、お気に入り、祝35人突破!
ありがとうございます!
感想も前回ので3件ももらって作者は嬉しい限りです!
では、感想、評価等お待ちしております!
ではまた次回。