この作品のお気に入りが70件超えたことで嬉しく思うまっちゃんです。
ありがとうございます。
これからも精進していきますので、よろしくお願いします。
では、本編どうぞ。
いつもとは違う、床に敷いたベッドの上で寝たからだろうか。
夜中に目が覚めて、上体を起こす。
両隣に人のぬくもりを感じ、その場所を見下ろす。
左には、とても穏やかな顔で眠りについているリサがおり、右には氷川さんが俺の腕にしがみ付く様な感じで抱きしめながら眠りについていた。
昨日の事件があった為、氷川さん達は一人で帰路に就くのが怖いのか、今日だけは帰りたくないと言って一晩をここで過ごした。
氷川さんには悪いが、俺の腕に抱き着いている腕を剥がして皆を起こさないようにそっとベッドから出る。
一階に降りてコップに注いだ水を飲み干す。
喉に味もしない透明な液体が通っていくのを感じて庭に出る。
身体を通り過ぎていく春の風はとても爽やかで、涼しかった。
そう思いながら縁側に腰掛け、夜空を仰ぐと、星々が煌めいており、少しだけ美しいと感じてしまった。
「ふぅ…」
改めてあの事件を思い返すと、色々と反省点が浮かび上がってくる。
もっと早くリサ達を助けられたのではないのか、リサ達を人質に取る可能性を考えられなかったこと。
考えれば考える程浮かび上がってくる。
…だが、根本的な問題は俺がいるから、という事だった。
俺の周りの人は昔から絶対に死んでいく。
だからリサ達を危険な目に合わせてしまった。
「…もしかしたら、最悪な結果になりかねなかった」
そうしてキッチンに戻り、包丁を取り出した。
夜中に目が覚めてしまい、一階に降りると波谷さんが包丁を首に当てており、そこからは少量の血が流れていた。
「な、波谷さん…?」
私がそう言うと、波谷さんは直ぐに包丁を背中に隠し、首の血を寝間着の袖で拭って私の方を向いた。
「どうしましたか?」
先程の事が何も無かったかのように平然とした表情で私に問いかけた。
「いえ、包丁を首に当てているように見えましたので…」
「…っ!!そんなことしませんよ」
波谷さんは私から目を逸らしてそう言った。
私はそれを見て確信した。
あれは見間違いなどではなく、確かにやっていたことだと。
「嘘です…!」
「…え?」
視界が滲んでいるが、それも気にならない程に声を荒げて叫んだ。
「自殺なんて馬鹿なことやめてください!!」
「馬鹿な事、か」
波谷さんは俯いたままそう呟いた。
「昔からそうだ。人を死なせるという馬鹿な事を繰り返している」
「えっ…?」
「親、親友、親戚…。数えればキリがない。俺は、もうこれ以上他人が死ぬのを見たくないんだよ!!」
「波谷さん…」
波谷さんのその叫びは彼の大きな背中だけでは背負いきれない程重いものだった。
「昨日だってそうだ。もしかしたらお前らを死なせてしまったかもしれない。俺が、俺がいるから…!」
俺がそう叫ぶと氷川さんは俺を抱きしめた。
「そんなことありません!!」
「あるさ。俺だって信じたくない」
「あの時、波谷さんが助けに来てくれたこと、少なくとも私は嬉しかったです。もしもの事を考えたってしょうがないです。私達は今確かにここにいる。それだけです」
…あの時母さんの腕を引っ張っておけば救えたかもしれない。
あの時御霊を無理矢理引っ張り上げておけば救えたかもしれない。
氷川さんはそのもしもを考えず、現在の事を受け止め切れるのだ。
「…氷川さんは、強いね」
「いいえ、私は強くありません。私は、妹を傷つけてしまいましたから」
氷川さんは強く抱きしめてそう言った。
「…私は、何もかもを受け止め切れる程できた人間ではありません」
「そっか。…でもやっぱり、君は俺よりも強い。…俺は君の反対で、現実から逃げ続けているんだ」
俺はそう言って氷川さんを強く抱きしめ返した。
「波谷さん…?」
「…ごめん。少しだけこのままでいさせてくれ」
「…はい」
俺はリサ達を起こさないように声を押し殺して肩を震わせて涙を流した。
少しして、俺は紗夜から離れて、寝室に戻った。
翌日、紗夜達は朝食を食べてそれぞれの自宅に戻っていった。
椅子に座りながらあの夜の事を思い出す。
すると、何故だか胸が温かくなってくる。
これは一体、何なのだろうか。
そう思いながら胸を押さえて居ると、いきなりリサから話しかけられた。
「楓、ちょっとだけ買い物に付き合ってくれない?」
「…え?」
「ちょっとだけだからさ!お願い!」
リサはそう言いながら合掌して頭を下げた。
「分かった。それじゃあ早速行こうか」
溜息交じりにそう言いながら席を立ち、玄関に歩きだす。
「ホント!?ありがと!」
リサはそう言いながら後ろについてくる。
俺は父さんたちに「行ってきます」と言って外に出る。
空はどんよりとした雲で覆われていたが、その僅かな隙間で太陽が煌めいていた。
「それじゃ、行こっか」
そう言ってリサは歩き出した。
俺はそれに釣られるようにポケットに手を突っ込みながらリサについて行った。
数分歩くと駅前にある大きなショッピングモールに着いた。
前世ではショッピングモールに行ったことが無い為、俺は上を見上げたまま固まっていた。
「楓、どうしたの?」
「…いや、何でも無い。そんなことより速く行こう」
「うん!」
そうして、ショッピングモールに入ると、中は人でごった返していた。
俺はリサとはぐれないように人混みを掻き分け、必死について行った。
そうして辿り着いた先は洋服店だった。
俺はリサにベンチに座って待っているという旨を伝え、その場を後にしようとしたのだが、口を開く前に腕を掴まれ、洋服店に連行されてしまった。
少しして、リサからいきなり黒い半袖のシャツと白いズボンを渡され、試着室に押し込まれた。
俺はそれに着替え、試着室のカーテンを開けた。
「おお~!似合ってるよ」
「そうか?取り敢えず、似合ってるなら良いかな」
そうして、試着室のカーテンを閉め、着替えを終え、洋服を持って外に出た。
会計をリサに任せ、洋服店の外にあるベンチで待っていると、会計を終え、店を出たリサが隣に座ってきてこう言った。
「そろそろお昼だね。ご飯どうする?」
「…リサに任せるよ。俺はまだこの町の事詳しく知らないし」
「そう?ならちょっと歩くけど、それでもいい?」
「良いよ。それじゃあ行こう」
リサはそれを聞くと、頷いてから立ち上がり、出口に向かった。
俺はリサに釣られるように立ち上がり、リサの後ろについて行った。
リサについて行くと、そこは商店街だった。
俺は思わず頭を押さえて歯を食いしばった。
「ど、どうしたの!?」
リサが俺の異変に気付き、駆け寄ってくる。
俺はリサに心配させないように頭から手を放し、平然とした顔を装った。
「大丈夫、何でもない」
「ほ、ホントに?」
リサが心配そうに俺を見上げて、俺の額を触る。
「大丈夫だよ。それよりも早く行こう」
「なら良いんだけど…。何かあったら言ってよ?」
リサはそう言って商店街を進んで行った。
俺はなるべく人々の会話や表情を見ないようにしてリサの後ろについて行った。
リサはある喫茶店の前で立ち止まり、振り向いた。
「…ここがリサの来たかった場所?」
「そう!」
リサはそれだけ言ってその中に入っていった。
俺は看板に記されてある名前に目を通してからそこに入った。
「あっ、リサ先輩、いらっしゃいませ!…と、その隣にいる人はリサ先輩の彼氏さん…ですか?」
中に入ると、茶髪のショートヘアーの子が歩いて来てそう言った。
リサは赤面しながら「いやいや、違うよ!この子はアタシの新しい家族!」と言った。
すると、そのもう一人の子は赤面してモジモジしながらこう言った。
「…その、家族って言うのは…」
「…断じて違います。恐らく、貴女の想像しているものとは遙かにかけ離れています」
俺は少し顔が熱くなっているのを理解しながらそう言った。
何故かリサは少しだけ落ち込んでいる様子だった。
「あっ…。そうなんですね。…と、取り敢えず、お席にご案内しますね!」
茶髪の子は空いている席に俺らを案内してからメニューをテーブルの上に置き、去っていった。
俺はメニューを手に取り、一通り目を通す。
注文する物が決まり、メニューをテーブルに置き、リサに声をかける。
リサは驚いてから置いてあるメニューをそそくさと手に取り、眺め始めた。
少しして、リサの注文する物が決まり、茶髪の子に注文をする。
茶髪の子は直ぐに注文を伝え、俺たちのテーブルに来た。
そして、暫くの沈黙の後、彼女は小さな声で「…その、お二人の関係って、何でしょうか…」と言った。
俺は少し驚いたが、いつもと変わらないトーンで「…俺は養子で、リサは義姉です」と言った。
「そうそう!只の家族だよ!」
リサがそう言うと、茶髪の子は成程と言うかのような清々しい表情を浮かべてからお礼を言って料理を受け取りに行った。
そうして、料理を食べ終え、羽沢珈琲店を後にした。
外はいつの間にか夕方になっており、景色は夕日の光で橙色に染まっていた
「今日はありがとね。買い物に付き合って貰って」
「いや、別に良いよ。それに、買い物って言っても俺の為のだろ?そしたらお礼を言うのはこっちの方だ。ありがとう、リサ」
はい、今回はこれまでです。
今回は紗夜さんと主人公の絡みが大変でした。
…では、特に話すことも無いのでまた次回。