命に嫌われた少年   作:まっちゃんのポテトMサイズ

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どうも皆さん。
この小説のお気に入りが120件を超えていることに驚きのまっちゃんです。
ありがとうございます。
これからも精進していきます。
では、本編どうぞ。


第7話 心霊

リビングで、お義父さんから渡された本を読んでいると、背後から急にリサに声をかけられた。

俺は本を閉じ、振り返って用件を問うと、誕生日は何時なのかと問われた。

…誕生日。懐かしい響きだ。

かれこれ5年間も祝われて無かったからな。

 

「…ごめん、忘れちゃった」

「ええ!?忘れちゃった!?」

 

リサが目を見開いて驚いた様な声音を出してそう言った。

俺はその仕草に少しだけ頬が綻び、大袈裟だなぁと思った。

 

「そうだなぁ…。じゃあ、六月三十日が良いかな」

「オッケー!ありがとね」

 

リサはそう言っていそいそと自室に戻って行った。

それを見送ると、本を開き、視線をそこに落とす。

…六月三十日の誕生花はスカビオサ。

花言葉は、『私は全てを失った』。

リサは、そのメッセージに気づいてくれただろうか。

…いや、それは無いか。見たところ、その方面には疎いようだ。

そう思いながら本を読み進める。

暫くして、昼時になると、リサが降りてきてキッチンに立ち、料理を始めた。

今日はお義父さんもお義母さんも居らず、リサもこの後Roseliaの練習で一旦家を離れるようだ。

さて、何をして暇を潰そうか…。

そう考えている内に料理が出来た様なので、キッチンに向かい、それを運ぶ。

 

「…冷やし中華?」

「そうだよ~。もしかして、苦手だった?」

 

リサが心配そうに聞いてくるが、頭を横に振り、箸を手に持つ。

 

「いや、苦手じゃないよ。…頂きます」

 

そう言って麺を口に運ぶ。

リサの作ったそれは料理屋で出されても問題ないような味だった。

…あの時以来、食べ物の味は家族の作ったもの以外感じられず、最初の内はその変化に混乱していたが、今となってはもう慣れてしまった。

少しすると、目の前にあった料理は無くなっており、それの代わりのように満腹感が残っていた。

 

「ご馳走様でした。…そろそろ家を出ないと、間に合わないんじゃない?」

「え?あっ、ヤバッ!!」

 

リサは慌てながら自室にあったベースを持って来て「行ってきます!!」と言って家を出ていった。

その慌て具合に溜息を吐きながら皿を流しに入れる。

 

「…さて、どうしようか。適当にテレビを見ながら暇を潰すか、コンビニでお菓子を買ってそれを食べながらテレビを見るか…」

 

俺はその二つの選択肢で迷いに迷った結果、そのままテレビを見る事にした。

今の時間帯であれば何処かのチャンネルで映画がやっている頃だろう。

そうして、机の上にあったリモコンを取り、適当にチャンネルを回していると、ホラー映画をやっているところを見つけた。

どうやらその映画は『イット・フォローズ』というもので、肉体関係になった男に呪いを移され、それを持っていると、名前の無い何かに追いかけられ続ける女性の話だ。

それはとても面白く、今度リサと一緒に見てみようかと思い、名前を覚えておく事にした。

暫くすると、心配そうな顔をしたリサが帰ってきた。

 

「…何かあった?」

「いや~何でもないよ?」

 

リサは目を逸らし、眼を涙で潤ませながらそう言った。

そんなリサの頭に軽くチョップを入れ、何があったのか問うと、どうやら『CIRCLE』で幽霊についての噂話を聞いたようだ。

それを話すリサの足は震えており、少し怖がっているようだった。

 

「大丈夫だよ。そんなことあり得るわけ無いから」

 

俺はリサが幽霊が苦手なのを意外に感じながら微笑んでそう言った。

その直後、キッチンから物が雪崩落ちる大きな音が鳴り響いた。

 

「ひゃっ!?」

 

リサは急に俺にしがみ付いて背中に回った。

俺はそのまま音がしたところに行き、その正体を確認した。

 

「…リサ、食材のストックが棚から落ちているだけだったよ」

 

俺がそう言うと、リサは手を放し、俺から離れた。

 

「な~んだ。良かった~。って、ひゃあっ!!」

「次は何だ…って、危ない!!」

 

俺はリサを庇うように前に立ち、別の棚の上から落ちて来た鍋を片手でキャッチする。

 

「リサ、大丈夫?」

 

そう問うと、リサは俺を抱きしめ、身動きが取れないようにしてしまった。

 

「…離れないでね。怖いから…」

 

俺はそのまま後ろにあるリサの頭を撫で、鍋を置いた。

 

「…リサ、まだ怖い?」

「…うん」

「それじゃあ、皆を呼ぼう。その方が安心するよね?」

 

俺がそう言うと、リサは頷き、片手を放し、Roseliaのグループチャットにその手でメッセージを送った。

そして、スマホの電源を落とし、それを握りながら手を元の位置に戻した。

すると、直ぐに返信が着て、皆、少ししたらこの家に来てくれるそうだ。

それまでは良かった。

その後に来た『もし、怖いならあこ、今日リサ姉の家にお泊りするよ!』という宇田川さんの爆弾発言も問題なのだが、それに対する『ほ、本当…?どうせなら、皆も一緒にどう?その分、気がまぎれるし…』というリサの返信により、何故かお泊り会に発展してしまった。

 

「…はぁ、まったく…」

 

溜息を吐きながら瞼を閉じると、俺を揶揄う御霊の声が脳内に響いた。

 

『あらあら、大変ですねぇ…』

『お前…他人事だと思って…』

 

俺は御霊を冗談交じりに睨みながらそう言って瞼を開け、立ち上がった。

 

「か、楓…?」

 

俺の服の裾を握りながらリサが心配そうに見上げてそう言った。

リサの腕を取り、立ち上がらせて俺の背後に立たせる。

 

「ほら、もうすぐ来るぞ。早く片づけをしておこう。…リサはソファに居てくれ」

 

俺はそう言って鍋を元に戻し、皿洗いを済ました。

すると、インターホンが鳴り、真っ先にリサが玄関に駆けて行った。

 

「ちょっとリサ!!」

「怖かったよ~友希那ぁ~」

 

俺はその光景を目の端で捉えながら手に付いた水滴をタオルで拭い、玄関に向かった。

すると、玄関前で立っている湊さんに抱き着くリサの姿がそこにはあった。

その光景に苦笑いを浮かべながら家に湊さんを招き入れる。

 

「お邪魔します。…荷物はどこに置けばいいかしら?」

「隅っこにでも纏めておいて~」

 

リサは湊さんから離れ、先程の怯え具合など噓であったかのように気丈に振舞いながらそう言った。

俺はソファに座り、次の心霊現象のようなものに備えていた。

だが、一向にそれが起きる気配が無い為、本を開き、暇を潰す事にした。

リサは湊さんと楽しそうに話しているため、先程のように怯える事は無いだろうと思い、本に意識を向けた。

…あのように幼馴染と話すのは、幸せな者の特権だ。

不幸せな者にはその権利どころか、家族と過ごす事さえも許されない。

だから、俺にはその光景が眩しく感じてしまった。

それと同時に、何時かはそのように話す事が出来るのかもしれないと思った。

 

「そうなると、いいな」

「え?何か言った?」

 

リサが俺に視線を向けてそう言った。俺はそれに微笑みながら頭を振った。

 

「…いいや、何でも無い」

「そう?ならいいけど」

 

リサはそれだけ言うと、湊さんに視線を戻し、再び会話を始めた。

俺は本に視線を落とし、文章を目で追い続けた。

すると、ある一文が目に留まった。

『幸せとは、人生を彩る物である。だが、その人生に幸せを求めてはいけない。何故なら、幸せは求めるものではなく、自分の中にあるものだからだ』

確かに、そうかもしれない。だが、今の俺にはどうだ?

その欠片は無く、あるのは人々の怨念。幸せとは程遠いものだ。

そうして、次の文章に目を移すと、そこには『だが、これが全ての人に通用する訳では無い。だが、家族が居て、友が居て、普通の生活が送れているのにも拘らず、自分を不幸だと思っている馬鹿共に言いたい。勘違いすんな。世界中には親が居ない者や、食べ物が食べられない者もいるのだ』とあった。

俺はそれを見て、自分の足りない頭でどれだけの普通(幸せ)があるのか、怨念の中から探し出した。

リサ達のような家族がいる事、湊さん達のような友達が居る事、料理を食べられている事…。

考えだしてみればキリがない。

俺は改めて自分の環境が恵まれていることに気が付いた。

前世の自分では、家族も、友も、何もかもが居なかった。

…何だ。俺はとっくに幸せだったんだ。

俺は微笑みながらそう思った。

すると、家のインターホンが鳴り響き、俺は本を閉じ、顔を上げて玄関に向かった。

玄関の扉を開け、前に立っていたあこ達を家の中に招き入れた。

少しだけ洋服が濡れていたので、雨が降り始めたのだと理解し、扉を閉じた。

そして、紗夜の大荷物を目の端で捉え、思わず苦笑いしてしまった。

 

「紗夜…随分な大荷物だね。持ってあげるよ」

「いえ、大丈夫です。このくらい…」

 

俺は、そう言って嘘を吐く紗夜の荷物を取り上げ、肩に背負う。

 

「…ここまで大変だったでしょ」

「いえ。そんなには」

「そうか」

 

リビングに着き、紗夜の荷物を湊さんの荷物の近辺に置き、冷蔵庫の中を確認しに行く。

 

「リサ。これで材料足りるのか?」

 

俺はリビングで談笑しているリサに問いながら何も無いに等しい冷蔵庫の中を見回す。

 

「…あっ、ごめ~ん。ちょっと一緒に買い物に行ってくれない?」

 

俺は頷き、コートを羽織ってフードを被り、外に出る。

外は先程よりも雨が強く降っており、これから激しく降るようだった。

少しすると、何故かリサだけではなく、全員出てきてしまった。

俺は特に問題も無いだろうと思い、そのまま近所のスーパーに向かった。

途中、リサが傘の中に俺を入れてきたが、これではリサが恥ずかしいだろうと思い、直ぐに外に出た。

お陰でコートは濡れてしまったが、寒気は感じなかったため、そのままスーパーの中に入った。

人数が多かったため、買い物は直ぐに終わり、荷物だけを傘の中に入れて帰っていると、行き成り土砂降りになってしまった。

傘を指していたものの、家に着く頃には俺もリサ達もびしょ濡れになっていた。

 

「あちゃ~。皆びしょ濡れになっちゃったね~。シャワー浴びよっか」

 

リサがそう言うと、そのまま皆は脱衣所に行き、俺は玄関でリサ達がシャワーから出るのを待つことになった。

 

「わ~!やっぱり燐子ってスタイルイイね~!」

「そ、そんなこと、ありません…。今井さんだって、綺麗ですよ…」

「そう?ありがと!」

 

脱衣所からそんな話声が聞こえるが、俺は耳を指で塞ぎ、そちらに集中しないようにしていた。

だが、所詮は指で押さえた程度。多少だが、聞こえてしまっていた。

 

「…落ち着け。落ち着け、俺」

 

そう言い聞かせながらリサ達がシャワーを浴び終えるのを待っていた。数分すると、漸くそれが終わり、俺は脱衣所に向かった。

そうして、服を脱ぐと、俺の身体を鏡が映した。

あまりにも体つきがしっかりしているものだったので、俺はそれを見て驚いてしまった。

だが、直ぐに風呂場に入り、身体を洗い流そうかと思ったが、中は女性特有の香りが充満しており、思わず危険な妄想をしてしまうところだった。

ここに居たら正気でいられる気がしないと思い、直ぐにシャワーを浴び、脱衣所に出た。

何時の間にか着替えが置かれており、俺はリサが置いておいてくれたのだろうと思い、身体をタオルで拭き、それに着替えた。

頭をタオルで拭きながら脱衣所を出ると、既に料理を始めているリサ達の姿がそこにあった。

 

「俺も、何か手伝おうか?」

「そうだな~。それじゃ、後片付けお願い」

 

リサが鍋で煮込んでいる何かをお玉で時計回りにかき混ぜながらそう言った。

 

「分かった」

 

俺はそれだけ言ってリサの夕飯が出来るまでソファに座りながら本を読んでいると、行き成り湊さんが俺に声をかけて来た。

本を閉じ、湊さんを見上げる。

 

「…隣、いいかしら」

「はい。どうぞ」

 

俺がそう言うと、湊さんは隣に座った。

何か用があるのかと思ったが、一向に話しかけてくる様子も無いため、本を開こうとした時、行き成り湊さんが話しかけて来た。

 

「…今度の日曜、空いてるかしら?」

「…え?」

「だから、今度の日曜、空いているのかと聞いているのよ。…それで、どうなのかしら?」

 

俺は頭の中で今週の用事を整理したが、特にその日には用事が無かったので、その約束を承諾した。

何故俺を誘ったのかと尋ねると、湊さん曰く、あの事件のお礼をしたいらしい。

俺は微笑みを浮かべて、湊さんを見つめた。

 

「な、何よ」

 

湊さんは頬をほんのり赤く染め、俺から目を逸らしてそう言った。

 

「いいえ。…何でもありませんよ」

 

俺はそれだけ言うと、本を開き、それに視線を落とした。

暫くすると、リサの料理が完成したようで、俺は本を閉じてテーブルに向かった。

 

「…頂きます」

 

俺はそう言って目の前にあるビーフシチューを一口食べた。

一口サイズにしては大きすぎる野菜を手違いで一気に口の中に入れてしまった時には危うくむせて食べ物を噴出してしまうところだったが、何とか飲み込み、それを防いだ。

 

「…ごほっごほっ。…野菜が思った以上に、大きかった…」

「ごろごろしてた方が美味しいかなって思ったんだけど…」

 

あこはそう言いながら俺の背中をさすった。

俺は口元を手で押さえながら折り曲げていた身体をまっすぐに戻した。

 

「まったく、君らしいな」

 

俺はそう言ってビーフシチューを食べ進める。

数分もすれば目の前にあった料理は平らげられ、後片付けが終えられた。

そうして、何事も無く、皆は眠りにつき、そんな中、俺は庭の縁側に腰を掛けながら本を読んでいた。

雨によるべっとりとした湿気が身体にまとわりつき、多少嫌悪感を覚える。

 

「…そう言えば、幽霊。居なかったな」

 

俺が空を仰ぎながらそう呟くと、背後から俺を呼ぶ御霊の声が聞こえて来た。

 

「…ったく、何で居るんだよ」

「何でもいいだろ。夜は俺たちの活動時間だ」

 

そう言って御霊は俺の隣に座った。

折角の時間だ。話す事にしよう。

そう思い、俺は本を閉じ、傍において御霊に話題を振った。

 

「…なぁ、天国って、どんな感じだ?地獄ってどんな感じだ?幽霊ってどんな気持ちなんだ?」

「楓、いったん落ち着け。俺はここに居る。まだまだ夜は長いんだぜ?ゆっくりしゃべろうや」

 

御霊は俺に笑みを浮かべながらそう言った。

 

「…ああ。そうだな」

 

そう呟いた瞬間、閃光が暗闇の中を照らし、直後に雷鳴が鳴り響いた。

それに驚きを覚えたが、その雷鳴の後に家の中に鳴る足音に俺と御霊は耳を傾けた。

どうやらそれは二階でなっているらしく、恐らくあの雷鳴の間に窓ガラスから侵入してきたのだろう。

御霊に視線を送り、俺は足音を潜ませながら家の中に戻った。

 

「…包丁を持って行け。相手が凶器を持っていないはずが無い」

 

俺はそれに頷き、音を出さないように包丁を引き抜いた。

そして、それを構えながら壁に背中を預けながら、それに沿って階段を、一段、また一段と上っていった。

すると、御霊が急に俺を遮るように腕を伸ばし、歩を止めるサインを送った。

俺は目で相手がどこにいるか尋ねると、御霊はもう直ぐで階段を下りるところだと言った。

そして、一瞬の静寂の後、御霊が声を上げ、「今だ!!」と言った。

俺はそれと同時に階段を駆け上がり、相手の前に立ち塞がった。

相手は俺を一目見ると、サバイバルナイフを取り出し、刃先を俺に向けながら駆け出してきた。

俺はその牙突を右に避け、足払いをして転ばせた。そして、馬乗りになり、首元にナイフを突きつけた。

 

「動くな。今から警察を呼ぶ。それまで寝とけ」

 

俺はそう言って男の(うなじ)に手刀を当て、気絶させた。

そして、一階に降り、家の電話から警察を呼び、包丁を元の場所に戻した。

警察が来る頃にはリサ達は起きていたが、何があったのか全く分からず、混乱していた。

俺は「知る必要は無い」と言って、皆を後に来た湊さんの父親に預けた。

翌日、俺はテーブルを挟んだお義父さんの前で悠長に珈琲を飲みなが最後のページを眺めていた。

そこの一文には、こう書かれていた。

『他人を護れるものは、そう中々に居るものではない。だから、胸を張れ。本当に憶病な者は他者を護ろうともしないのだから』

 

「…この本は良いね。読んでいて楽しいよ。お義父さん」

「そうか。それは良かった。…そう言えば、昨日は災難だったな」

「ホントだよ。…まぁ、結果的には窓ガラスの損傷だけで済んだけどね」

 

俺はそう言いながら本を閉じて珈琲を飲み干し、二階のリサの部屋のベッドに入り、眠りについた。

昨日は警察の事情聴取が長引いたため、余り睡眠時間が取れていない為か、若しくは、慣れない事情聴取の所為で疲れがたまっていたのかは分からないが、直ぐに眠りにつくことができた。




はい、これを完成させるのに四轍もしてしまったまっちゃんです。
意外とこれを書いている間に楽しくなってきてしまったので語彙力の欠如が発生していたかもしれません。
…そう言えば、今日(昨日)は節分でしたね。
皆さんは恵方巻や、豆まきをしましたか?
まっちゃんは恵方巻を食べて終わりました。
では、また次回。
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