という訳でそろそろ前書きとか邪魔なんじゃないかとか思うので前書きは偶に書くことにします。
では本編どうぞ
今日は日曜日。
湊さんとの約束の日だ。
そう思いながら家を出て湊さんの家のインターホンを鳴らす。
直ぐに湊さんは白いワンピースに身を包み、鞄を持って出てきた。
ふと、湊さんの髪を見てみると、いつもより輝いているようだった。
すると、行き成り湊さんが口を開く。
「…待ったかしら」
「いいえ」
「そう」
そんなたわい無い会話をすると湊さんは歩き出した。
何をするか、何処に向かうかを聞かされていなかった俺はただその後ろをついて行く。
暫くすると、ショッピングモールに着いた。
中に入ると、湊さんは真っ先に雑貨屋さんに入っていった。
それに釣られるように入ると、猫のポーチに釘付けになっている湊さんが居た。
俺はその傍に近寄りそのポーチを背後から覗き込む。
「…猫、お好きなんですか?」
俺がそう問うと、湊さんは顔を赤らめながら頷いた。
「俺も、好きですよ。可愛いので」
「そ、そう」
そう言って顔を引っ込め、その場に立ち止まっていると、何の前触れもなく湊さんが振り向いた。
「何か欲しいものがあったら遠慮なく私に言って頂戴。今日は私が何でも奢ってあげるわ」
「分かりました」
俺はその場から離れ、偶然目に着いた紫のリボンが巻かれた麦わら帽子を手に取り、これを被った湊さんの姿を想像する。
「…うん。似合いそうだ」
そう言って湊さんの所に戻る。
「もう決まったのかしら」
「はい」
「それじゃあ、渡して頂戴。直ぐにお会計を済ましてくるからそこで待っていて」
「分かりました」
湊さんに言われた通りにベンチに座り、数分間待ち続けていると、買い物袋を片手にした湊さんが店から出て来た。
直ぐに傍に近寄り、湊さんから買い物袋を受け取る。
中から麦わら帽子を取り出し、湊さんに被せる。
湊さんは少し驚きながら俺の事を見上げた。
案の定似合っていたその姿に俺は、似合ってますよ、と言って微笑んだ。
すると、湊さんは顔を赤らめて俯いた。
「あ、貴方の欲しいものって言ったのよ?」
「ええ。俺が欲しかったのは貴方への贈り物です。だからその麦わら帽子を買ったのです」
「そんなのずるいわよ…」
小声で何かを呟く湊さんが何故だか何時もとは違うように見えた為、俺は違和感を覚えながらポケットに手を入れた。
具体的には言えないのだが、喩えるならば、恋する少女、の様だった。
ふと、腕時計を見てみるとそろそろ正午になるところだった。
「湊さん、そろそろお昼ですけど、フードコートで昼食を取りませんか?」
「…そうね。私も丁度お腹が空いてきたわ」
俺はそれを聞くと、フードコートに入り、席を取った。
昼食は湊さんが買ってきてくれるらしく、俺はただ茫然としながら湊さんが来るのを待つ。
暫くすると、湊さんはトレイを机の上に置いて向かい側の席に着いた。
俺はその中からポテトだけを取り、残りを湊さんに譲った。
「…貴方って人は本当に不思議ね」
「急にどうしたんですか?」
この場を支配していた静寂を切り裂くように湊さんがいきなり口に出した。
俺は驚いたが、ポテトをついばむ手を止めなかった。
「普通、何でも買ってあげるとなったら自分の為になる物を買うと思ったのだけど、貴方は私の為に物を買ったから」
「貴方は俺の家族にとって大切な人です。…そんな人を失う事がどれだけ辛い事か、俺には分かるんです。だから、失わせないように出来るだけ大切にしたい」
「そう。…貴方はきっと大変な思いをしたのでしょうね」
表情を一切崩さずにそう言う湊さんに俺は何も言わずに頷き、最後のポテトを一つ口に運んだ。
それから数時間経ち、俺たちはお互いの家の前で解散となった。
別れ間際、湊さんが俺にピンク色の平四つ編みのミサンガを渡してきた。
湊さん曰く、手作りの様で、必死に作った形跡が所々に見える。
俺はそれを利き手とは反対の手首に付けた。
「…今日の湊さん、変だったな。何だか、何時もの様に冷静な感じは見受けられなかった」
そう呟いてミサンガを巻き付けた方の手を上にかざした。
「でも、その方が可愛かったな」
湊さんが自室の枕に顔をうずめながら悶えているのを知らずに俺はそう言った。
いやはや、ミサンガにもいろいろな意味があるのですねぇ。
付ける場所や、糸の色、それが異なってくると意味が変わるようです。
例えば、利き手の手首は『恋愛』その反対の手首は『勉強』とかですね。
では、また次回。