ドラッツェ、逝っきまーす!!(半ギレ) 作:COTOKITI JP
声が聴こえる。
近くで誰かが会話をしている訳ではない。
テレビの音声のようだ。
内容はよく聴き取れないが、声のトーンからして何かのニュース番組である事が予想できる。
瞼は辛うじて開いたが、手足がまるで言う事を聞かない。
縛られているのではなく力が入らないのだ。
仕方なくそのまま周囲を見渡すが、どうやらここは病室のようだ。
窓が無いという事は病院船か何処かの軍艦の医務室、もしくはコロニーの病院の中なのだろう。
暫くこの体勢のまま暇な時間を過ごしていると、病室の扉が開いた。
入って来たのはナースだ。
黒髪が肩の少し手前まで伸び、左目は意図的なのかは分からないが隠れている。
ただこちらが目を覚ましている事には気付いておらず、右手に大量のスナック菓子とジュースのボトルを抱えていることから明らかに看護をする為に来たのではないということは分かる。
「ホント、ここはサボるのにはちょうどいい場所だな」
ベッド脇にあった丸椅子を引っ張り、そこに座ると性悪そうなナースはテレビのリモコンを弄ってニュース番組から動画配信サイトに切り替え、そのまま動画鑑賞をポテトチップスの袋片手に始めた。
どうにか彼女に自分の存在を知らせたいが、身体が鉛どころかまるでコンバインドローラーに押し潰されているかのように動かない。
彼女が動画鑑賞を初めてから数十分くらい経って漸く声を出せばいい事に気付く。
たったこれだけに数十分も時間を要したあたり、自分はこの状況に混乱を覚えているのだと思う。
声を出すべく息を吸い込み、それを声として吐き出そうとする。
「……あ……の……」
ところがどっこい、彼女はわざわざ自前で持って来たイヤホンを付けて鑑賞していたので俺の虫の鳴き声のような声は気付かれなかった。
次はちゃんと聴こえるようにもっと力を入れて出来る限り声を張り上げた。
「あ……あの!」
「ケハハハハハッ!!……ん?」
これには流石の彼女も気付いたようで何処から聞こえてきたのかと周りを見渡し、最終的に俺の方に視線を移した。
目が合う二人。
俺は安堵の視線を。
ナースは驚愕の視線を。
二人が視線を交えて数秒、先に声を上げたのはナースの方だった。
「ま……マジかよ……!」
彼女はただそれだけ呟くように言うと大急ぎで病室から走り去っていった。
この病室に一人取り残されてから数分経ち、自分の置かれている状況について考えていると再び扉が開いた。
今度はナースだけでなく禿頭の医師らしき男も一緒に入って来た。
多分あの時にナースが医師に俺が目覚めた事を伝えに行ったのだろう。
「私の、声が聞こえますか?」
医師がベッドの右脇にまで歩み寄るとこちらに目を合わせて聞いてきた。
現在の状況を知る為にも答える必要がある。
「はい……」
そう言いながら頷くと医師は何か考え込む素振りを見せ、数秒後にはまた目を合わせていた。
「私は今から貴方に起きた事、そして今までに起きた事について話さねばなりません」
医師はそう言って「よろしいですか?」と反応を再び求めて来た。
自分に起きた事は勿論、意識を失っている間に何が起きたかも知りたい。
デラーズ・フリートは、『星の屑作戦』はどうなったのか。
それにあの時連邦軍艦隊の突破を試みた仲間達の事も気になる。
医師は、一呼吸置くと話し始めた。
「まず、連邦軍艦隊を突破した時の事は覚えていますか?」
「はい、サラミス級の群れを掻い潜って、そしてアクシズ先遣艦隊の姿が見えて…………あれ……その後何があったんだったか……」
自分の記憶の違和感に気付き、首を傾げる。
それに加えて頭も痛み出す。
フラッシュバックが脳内に瞬き、何時のか分からない情景を映し出す。
ザクの残骸、燃え盛るムサイ。
そして青い、青い宇宙。
医師はそれに戸惑うことも無く再び口を開く。
「貴方は確かにアクシズ先遣艦隊に辿り着くことは出来ました。 しかしその際に瀕死の重傷を負っていました。 それは頭部も例外ではありません。 レントゲンは、貴方の体力の事もあるので後日見せましょう」
「……一体あの後何があったんです? デラーズ・フリートは?星の屑作戦は?あの時共に突破を試みた仲間達、それとアリソン少尉はどうなったんです!?」
アリソン少尉。
あの時共に突破を試みた唯一の僚機であり、嘗ての第13MS小隊の小隊長を務めていた。
一年戦争末期のア・バオア・クー防衛戦に学徒兵として駆り出された俺をよく世話を焼いてくれた思い出がある。
因みにサイド3に引っ越す前は
地元じゃ有名な不良だったとか。
少し声を荒らげながら状況説明を求めると医師は苦虫を噛み潰したような顔になり先程よりも長く考え込み、俯き、決意を固めたのか向き直った。
「今から言うことは全て真実です。 どうか落ち着いて聞いて下さい」
更に間が空く。
一体どんな事を告げられるのか、その不安が冷や汗となって俺の首筋を撫でる。
今の俺に、全ての真実を受け入れる覚悟はあるのか。
その真実に耐えられるだけの心はあるのか。
医師は遂に、それを告げた。
「貴方は今まで……
今回も文字数少ないけどどさくさに紛れて後の伏線が入ってたりするよん。