ドラッツェ、逝っきまーす!!(半ギレ) 作:COTOKITI JP
《UC.0096 March 30th》
『…………
深夜寝ていた俺を叩き起したのは何発かのサプレッサーによる物と思われるくぐもった銃声と一階にズカズカと入り込んで来る複数の足音だった。
何事か、と思うも泥棒にしてはド派手過ぎるし、強盗にしてもわざわざ住民が寝ている深夜帯を狙うとも思えない。
それとも、俺達の命が狙いなのか。
頭の中で色んな可能性を浮上させつつ、この診療所唯一のナースであり、色々と俺を助けてくれた『アンゲラ』と途中で合流し、二階から一階への階段を駆け下りた。
「一階じゃまだ先生が仕事してた筈だ……!」
アンゲラがそう震えながら言うと俺も顔が青くなった。
もしかすれば先程の銃声は……。
頼むから思い過ごしであってくれ、と願いながら俺達は一階に駆け込む。
そこで見た光景は、俺達を絶望するには充分過ぎた。
「せ、先生!!」
床に倒れ伏すミゲルの姿。
そしてその先には小銃を構えた複数の黒ずくめの兵士達がいた。
「動くな!両手を上げて頭の後ろで組め!!」
向けられた銃口に思わず動きが止まる。
兵士達のレーザーサイトはしっかりと俺達の胸を指向している。
あれは確か、連邦軍が12年前に制式採用していたモデルの短機関銃によく似ている。
しかし形状が所々違うので恐らく最新のモデルだろう。
弾種は45口径、銃声で分かった。
だとすれば俺がジオン残党兵だと言うことが連邦軍にバレたのか。
俺は大人しく兵士の命令に従って両手を上げて頭の後ろで組んだ。
アンゲラも恐怖に震えながらも同じようにする。
銃口を決して俺たちから逸らす事無く、兵士達は何やら話し始めた。
「……女はターゲットにありません。 どうしますか?」
「目撃者は生きて帰してはならない」
「……了解……」
一人の兵士が、引き金を指をかけた。
その兵士の銃口は、アンゲラの胸に向けられていた。
引き金が絞られる。
「やめろ!!撃つな────」
45口径弾が銃口より放たれる直前、病院の前の道路に一台の装甲車が突っ込んで来た。
装甲車は道路で見張りについていた兵士二人を轢き殺し、病院の出入口目前で停止する。
その装甲車の上に取り付けられた物に気付いた俺は、兵士が気を取られている隙にアンゲラを抱え、階段の影に隠れた。
直後、兵士達が発砲を始めたがその銃声はあっという間にもっと凄まじい音によって掻き消された。
短機関銃なんか比じゃない腹に響く程の轟音。
単発火力も45口径弾が相手では話にならない程に大きい。
「クッソォ!!重機関銃かよ!!」
短機関銃の銃声と重機関銃の銃声。
それと共に被弾した兵士の叫び声も微かに聞こえてくる。
大口径の銃弾が壁や床に当たり、コンクリート片が砂嵐のように舞い上がる。
階段の影に隠れていた俺は恐怖に震えるアンゲラを両耳と目を覆い隠すように抱き抱え、射撃が止むまでじっと動かずにいた。
コンクリートや木材、ガラスの破片が飛び散り、俺達の頭上に降り注ぐ。
それが余計にアンゲラの恐怖心を煽り、彼女は「ひぃ!」と声を漏らす。
あの装甲車は一体何が目的なのだろうか。
兵士達と敵対しているようだが、どちら側の人間かは分からない。
連邦軍に狙われていた所を助けに来たジオン軍残党なのか、はたまた逆か。
どちらにせよ今はまだ彼らが俺達への敵対心を持っていないのか疑わざるを得ない。
数秒後、銃声がぱったりと止んだ。
後に残ったのは静寂のみ。
耳をすませば外からあの装甲車のエンジン音が聞こえる。
たった一連射。
それだけで一階のあちこちが抉れ、穴だらけとなり、万全な装備に身を包んでいた兵士達は最早人とも言い難い肉塊と化して床に転がっていた。
「ここで待っててくれ」
未だに怯えているアンゲラを階段の影に残し、顔を半分だけ出す。
瞬間、装甲車の上部の銃座がライトで俺を照らした。
一瞬身構えたが、機関銃主はこちらをライトで指向してくるだけで発砲する気配は無い。
装甲車が俺の存在を確認すると、装甲車後部の兵員格納スペースから武装した一個班の兵士がゾロゾロと出て来た。
「出て来い、我々はネオ・ジオン軍だ。 貴様らを助けに来た」
班長と思われる兵士が先頭に出て、堂々と告げる。
彼らがネオ・ジオン、即ち俺の味方であると知り、すぐにアンゲラを連れて階段の影から出る。
「怪我は無いか、リュウト・ナンバ准尉。 私はテオドール・ホフマン大尉だ」
「それよりも、先生が!」
ホフマン大尉の横を通り過ぎ、床に倒れ伏しているミゲルの元へと駆け寄る。
傍らで膝をつき、その様子を改めて確認した俺は、絶望した。
まだ……。
まだ。
まだ床に脳漿をぶちまけていなければ多少は希望も持てていたかもしれない。
「……そういう事だ、残念だが諦めろ」
「大尉」
突然話すトーンの変わった俺の様子に、大尉は驚愕していた。
「俺は12年前、アリソン少尉と多くの戦友達を失いました……そして、今も!! また一人大切な恩人を失ってしまった!!!」
俯きながら、俺はただ心の内をぶちまける。
「……自分が嫌いだ。 何も救えない!!何も守れない!!自分が死ぬ程憎い!!!」
ミゲルの胸元に両手を置き、そこに顔を埋める。
「ジオンの志だって忘れて!!ずっとただの雑兵としてしか生きる事が出来なかった!!」
怒り、憎しみ、悲しみが綯い交ぜになって、表情は滅茶苦茶になっていた。
「恩人一人も守れないで、何がジオンの兵士だ!!何がスペースノイドの解放だ!!」
俺のその様子を黙って見ていた大尉は蹲る俺に声を掛ける。
「お前は
彼の言う事は尤もだ。
俺は物語の主人公でもなければ、エースパイロットでもない。
救った命なんて、片手で数えられる程度だ。
寧ろ救われた回数の方が多いだろう。
デラーズ紛争時代は急造兵器のドラッツェにしか乗れなかったせいで『ドラグーン』なんて大層な名前で呼ばれて揶揄われていた。
そこでふと、ある疑問が浮かんだ。
じゃあ、何故彼らは戦術的価値の欠けらも無いような俺を助けに来たのだろうか。
まさかジオン軍残党兵を片っ端からこのように回収している訳でもあるまい。
「英雄ではない……が、少なくとも貴様は我々にとって重要な存在だ」
「それは……どういう……」
「まだ話す事は出来ない。 しかし、我々と共にパラオに来てくれれば全てを話そう」
さあ行くぞ、と俺は右手を引かれて立ち上がりアンゲラと共に装甲車の兵員格納スペースに乗り込んだ。
装甲車が走り出す。
弔う事すら出来なかったミゲルの亡骸から目を離せないまま、装甲車はジオンの同志達の待つコロニーの出口へ向かって進み出した。
ビルギットもっと感想を書け!!もっと書くんだ!!