東方澪咲禄   作:見知らぬ誰か

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第06話

「世の真相は誰もし知らざりき……てか?」

 

 桜満開の木の枝の上で俺は紅魔館の執事と言うのもほっぽりだして博霊神社の宴会に来ていた。

 異変を解決したことで幻想郷には春が訪れた。1月ちょっとはずれたが……ま、そんなのも良いと俺は思う。

 

「おい、良いのかよ?紅魔館の執事なんだろ?」

 

 木の下で酒を飲んでいる魔理沙からそんな事を言われるが……別に気にしちゃいない……どうせ来るだろうしな。

 

「良いじゃねぇか……何かに縛られるのは嫌いな性分でね」

「じゃあ、なんで紅魔館の執事なんかになったんだ?」

「レミリアはあいつには短く、俺には長い付き合いでな……」

「へぇー……」

「よっと……」

 

 俺は宴会の席から酒瓶と盃を魔法で木の上まで持ってくる。

 

「便利だなぁ……」

「魔法使いなんてこんなものだろ」

 

 魔理沙が不器用なだけで器用な魔法使いなんていくらでもいるのだ……パチュリー然りアリス・マーガトロイドしかり……

 

「まぁ、魔法使いは性格が魔法の行使に出るからな」

「それは私が適当だと言いたいのか?」

「違うのか?」

「そ、それは……でも、お前はどうなんだよ」

「寧ろ俺はかなり慎重だぜ?そうでなきゃ禁術なんかを主に使うかよ」

 

 行使に使う魔力自体はそこまで多くなくとも威力が高い禁術だが、一部弊害がある。その弊害の1つが『行使における制御の難しさ』だ。それこそ。針の穴に糸を通すような感覚だ。魔法をぶっ放す魔理沙には恐らく出来ない……いや、やってはいけない。

 

「でもなんで禁術なんかに手出したんだ?」

「見るなよ?って言われると見たくなるだろ?そういうこと」

「興味本意かよ」

「まぁ、通常魔法に行き詰ってたってのもあるけどな」

 

 魔法を使ってて違和感があったのだが……その違和感が『通常魔法に対する適合率』の高さだった。

 ……簡単に言えば、通常魔法が簡単すぎて詰まらなかっただけ。大概の研究はすぐに終わってしまった……そこで手を出したのが血を使った禁術……正式名称は『禁忌魔法術式』なんだとか。

 俺は禁術に手を出した時胸が躍った。威力・規模共に大きくて制御が難しく、研究も簡単には進まない……かと言って簡単に行き詰るでもなくどんどん新たな発見がある禁術に俺はのめり込んだ。

 時間はあっという間に通り過ぎて気付けば人間の身体を捨てて魔法使いの種族の身体になっていた。今思うとあれは一種の禁術の副作用だったのだろう。

 

「お、主犯も登場か」

 

 魔理沙の見た方を見れば今回の異変の主犯である白玉楼が主『西行寺 幽々子』とその護衛剣士兼庭師の『魂魄 妖夢』が来ていた。

 

「あら、歓迎してくれても良いじゃない」

「肴も用意しました」

 

 魚の刺身の盛り合わせか……おお、刺身が旨いと評判の楼白魚じゃないか。確かに酒の肴にはもってこいの品だな。

 俺は木から降りて刺身を一切れ口に入れる。

 

「旨いな……切り方も上手だし」

「あ、ありがとうございます」

 

 あ、切ったの魂魄の方かい。にしても……

 

「あの爺さんの面影がまったく無いって……逆に怖いんだが」

「そう言えばおじいさまをご存知でしたっけ」

「まぁね……まぁ、あの爺さんも飯作るの上手かったっけ……」

 

 何回か食わせて貰ったけどかなり旨かったなぁ……

 

「剣の技……習ったんですよね……水無月さん」

「澪羅で良いよ。めんどくさい」

「じゃあ、私も妖夢で」

「剣ね……剣というよりもどっちかと言えば心構え的なものだよ。剣の技なんてひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ……7つぐらいだ」

 

 まぁ、剣を……刀を振るうならまずは心からだから文句は無いけどな。刀を振るうときは心を無心に、昂ぶっていても常に心の底は冷静で有れ、力で振るうのではなく先ずは心で振るえ……などなどなど……座禅とかも良くやったっけ……洞窟の奥底で水滴がピチョーン……ピチョーン……って音を聞きながら座禅してたときはほんとに心が静まったっけな……

 

「それで剣の教えを乞うたと言えるのですか?」

「まぁ、いつの間にか消えてたし、今となってはどうにも……」

 

 あの爺、何の前触れも無く消えやがって……せっかく刀でも打ってみようと思ってたのが一気に冷えちまったよ……良妖夢はい機会だったのにな。惜しい事をしたよ……魔力の打ち方も同じにしてみようかと思った矢先に消えやがって……お礼に刀をやろうとしたのが一瞬でぶち壊しだ。

 

「ううん……おじいさま一体何処へ……」

「さぁね」

 

 俺は更に刺身を一切れ口に放り込む。

 さて……そこそこ宴会も楽しんだしもうそろそろ帰るかなぁ……紅銀と紅月も魔力から魔石に完全物質化したいところだし。

 

「よっこいせ……」

 

 俺が立ち上がって神社から居なくなろうとすると不意に袖を誰かに掴まれた。袖を掴んだ手は白く細い……腕をたどればそこには妖夢……

 

「何か用か?」

「あの…………」

 

 何か思い悩んでいるようにモジモジと何かを言おうとしては止め言おうとしては止めていた……頬も心なしか紅くなっている様な……そんな感じがする。

 

「一体何の用だ?」

「あの……もしよけれ「あ、澪羅!こんなところに居たのね!」……」

 

 いきなり俺の名前を呼ばれたので声の聞こえたほうを見れば紅魔館御一行様が宴会会場に来ていた。声からしてレミリアが俺を呼んだのだろう……妖夢黙っちゃったよ……

 

「なんだよ、来てちゃ駄目なのか?」

「私と一緒に行動しなさい。日傘なんて持つのが面倒よ」

 

 ああ、俺の能力を必要としてたのね……でもレミリア、お前日光浴びようが少し体が気だるくなるだけだろ。

 

「前に俺がちょいと出て行くときにお前こう言ったじゃん『別に貴方が居なくても日光浴びても大して問題無いし言ってくれば』ってさ」

「それはそうだけど……」

「まぁ、それは聞かなかった事にしておくよ……」

 

 紅魔館御一行のため美鈴やフラン、咲夜にパチュリーまで来ている。パチュリーまで来るとは珍しいな。つか、フランに関しては日傘を差してないな……やっぱりスカーレット吸血鬼は日光に対して強いのか……十字架も効かない、ニンニクも効かない、日光も効かない……どこに吸血鬼の弱点があるのかね……

 

「澪羅、別に行くのは構わないのだけど一言言ってからにしてからにしてくれないかしら?」

「これからは気を付けるよ……」

 

 咲夜はそう言っているがあくまで注意だけだろうな。

 てか、咲夜の視線は俺の顔じゃないな……左手の包帯か……

 

「咲夜、気になるか?」

「…………別に」

「ならそんなに注視するな。俺でも気になるぞ」

「そうね、気を付けるわ」

 

 うーん……なんか咲夜の数少ない言葉の内に棘があるような感じがするなぁ……まぁ、良いか。とにかく妖夢の用事だ。

 

「で、妖夢。何を言おうとしてたんだ?」

「え、えー……と……出来ればなんですが剣の稽古をして貰えればと思いまして……」

 

 剣の稽古か……俺、そこまで剣は上手くないんだがなぁ。むしろ教えるのが下手だ。魔法使いゆえに教えるの下手で実践が得意なんだよね……ああ、そうか。

 

「稽古は無理だが手合わせぐらいなら良いぞ」

「ホントですか!?ありがとうございます!!」

 

 不安そうな顔をしていた妖夢の顔が安堵したような嬉しいような顔に変わる。剣士なんだなぁ……剣の相手して貰えるってので嬉しいと思うは……魔法使いは基本孤独ゆえに分からないや。

 

「………………」

 

 な、なんか冷たいものが突き刺さって居るような……そう、この感覚は咲夜が投げナイフを構えているときの目に射抜かれたようか感覚……

 

「な、何かな咲夜」

「いえ、随分仲がよろしい様で何よりよ」

 

 にっこり笑ってるけどなんか……あれだ、雰囲気的に笑ってない。目が笑ってない……トテモコワイデスサクヤサン。

 

「……………………」

「……………………」

 

 え、なんで咲夜と妖夢は睨み合ってるの?なんか火花が散ってるような感覚がするんだけど……誰か知らないですか?なんでこうなっているのか……

 

「えーと……水無月さん?」

「澪羅?」

「あ、レミリアと西行寺……何の用で?」

「「あの2人、何かしたの?」」

「むしろそれは俺が聞きたい」

 

 その言葉を聞いた今睨み合っている2人の主人は向かい合ってニヤリと笑った。

 え、ちょっと待って?その笑い方何!?怖いんだけど!?すごく怖いんだけど!?

 その後、あのニヤリとした笑いはなんだったのかと2人に聞いてもはぐらかされるだけで一切答えて貰えなかった……一体なんだったのだろうか……。咲夜と妖夢は弾幕勝負をしたが……結局引き分けで終了、熱い戦いだったため良い酒の肴になったとさ。




……この作品を楽しみにして居る方々へ……申し訳ございません。現実の事情と最近興味を持ったものによって忙殺されてしまいまともに執筆できず……誠に申し訳ありません。
今月はこれにて終了となってしまいますがこれからもよろしくおねがいします。

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