獅子の娘は心臓を捧げる   作:ASNE

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本編開始です。


Season1 変革の始まり
獅子の娘は己の未来を悟る


とある会社に勤める一平社員、『来栖亜里沙』は今日も一日自宅でリモートワークを終え、自分の部屋の机で大きく伸びをした。

「うーん、今日も疲れたあ……そうだ、更新されるの今日だっけ」

そう言ってスマホを取り出し、あるアプリを起動してとある漫画を読み始めた。その漫画の題名は―『進撃の巨人』。現在クライマックスを迎え、物語もいよいよ大詰めである。

「はー、これは面白い展開……予想の範囲外だった」

他のことを忘れて読みふけり、最後のページまで一気に読み終えると亜里沙はアプリを閉じた。

「でもやっぱり、皆死んで欲しくなかったな……」

『進撃の巨人』では、その展開上主要人物たちが命を落としてしまっている。特に亜里沙は主人公の同期たち「104期生」たちがお気に入りであり、最近命を落としてしまったサシャ・ブラウスの死に際しては一晩中涙が止まらなかった。勿論他のキャラたちも好きであり、彼らが命を落とす度に心を痛めていた。その反動からか二次創作の小説やイラスト、漫画を読み漁り、癒しを求めていた。

(マルコ、ユミル、ハンネスさん、ベルトルト、エルヴィン団長、サシャ、キース教官、ハンジさん……みんな死んじゃった。あの世界では避けられないかもしれないけど、それでも……)

「他に方法はなかったのかな……」

死してしまった人たちに思いを馳せる亜里沙。そうして考えにふけっていると、日頃から気を張りつめていた疲れから段々と眠気が亜里沙を夢の世界に誘い、遂に眠りに落ちて机に突っ伏してしまう。そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

と、いう記憶を()()()()()()()()()は見た。

(……え?)

そこは、訓練兵団の演習場。その時間は、対人格闘の練習の時間であった。アニはエレン・イェーガーといつも通り組んで格闘訓練を行っていたのだが……何度目かのぶつかり合いでエレンを転ばそうと蹴り技を叩きこんだ瞬間、己の知らない記憶が見えた。

(何……今の?)

アニは蹴り技を当たった瞬間に止め、右手で頭を押さえて後ろに若干よろめきながら下がる。

(今のは、私じゃない。でも、何故か私は知ってる気がする……)

「どうした?顔色悪いぞ?」

アニは心配そうに己を見つめるエレンに平静を装って返事を返そうとした。―次の瞬間、膨大な見知らぬ記憶がアニの頭に流れ込み、その激痛で両手で頭を押さえて地面に倒れこむ。

「ああああああああッ!」

「アニ!?おい、どうした!?」

地面に倒れこみ、激痛で転げまわるアニにエレンは駆け寄り、少しでも痛みを和らげてやろうと背中をさする。尋常ではないアニの様子に周囲にいた同期の訓令兵たちも動きを止め、キース・シャーディス教官も異変に気付いてアニとエレンの下に歩み寄った。

「どうした?」

「キース教官!分かりません、いつも通り格闘訓練をやってたらアニが急に頭を押さえて苦しみだして……」

キースは悲鳴を上げて地面を転げまわるアニの様子を見て只事ではないと察し、医務室に運ぶのが賢明だと判断した。

「仕方ない。イェーガー、レオンハートを医務室に運んでやれ」

「俺も手伝います!」

「ぼ、僕も……!」

尋常ではないアニの様子にライナーやベルトルトも駆け寄ってきた。

「……よかろう。フーバー、貴様は先に医務室に走ってレオンハートの様子を伝えて来い。ブラウン、イェーガーを手伝ってやれ」

「「あ、ありがとうごさいます!」」

キースの許可を得たベルトルトは医務室に一目散に駆け出し、エレンとライナーは未だ苦しむアニを刺激しないよう右と左から腕を自分たちの肩の上に担ぎ上げてゆっくりと医務室に歩き始めた。キースはそれを確認すると動きを止めていた訓練兵たちに向き直る。

「……他の者はさっさと訓練に戻れ。いつまで動きを止めている気だ?」

『も、申し訳ありません!』

懲罰を受けては叶わんと震え上がった訓令兵たちはさっさと訓練に戻る。……その中の幾人かは、先程のアニの苦しむ姿を見て若干動きを鈍らせていた。

 

 

 

 

エレンとライナーは、運んでいる途中で意識を失ってしまったアニを心配そうに横目で見ながら医務室へと運んでいた。

「どうしちまったんだろうな、アニ……?」

「さっぱり分からんな……だが、さっきの苦しみ様は尋常じゃなかったぞ……」

「二人共!」

「おお、ベルトルト!どうだった?」

通路の向こう側からベルトルトが息を切らして大慌てで駆け戻り、彼らに合流した。

「ベッドをすぐに確保してくれたよ。でも、聞いた限りだとアニに何が起こったのかはまだ分からないって」

「そうか……」

三人はその後終始心配そうな表情を浮かべながらアニを医務室に運び、先生に後を託すのであった。

 

 

 

 

「ん……」

アニがゆっくりと目を開けると、そこは訓練兵団の校舎の医務室のベッドの上であった。

「私は……」

未だ覚醒しておらずぼーっとする中、アニは自分の中に見知らぬ人物の記憶があるのを確認した。……いや、あれは……。

「前の私の記憶、か……」

そしてアニはその前世の自分「来栖亜里沙」の記憶を探り、あることを悟った。

「……私は、どうしようもない過ちを犯すのか」

 

 

 

 

この日を境に、この世界の運命は大きく変わっていく。その変化の中心に居るのは勿論、「アニ・レオンハート」であった。




時間軸的には、訓練兵団の入団三年目を想定しております。
ここから『アニ・レオンハート』の物語が始まります。
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