『繋がり』
「さて、エレン・イェーガー。それに、アルミン・アルレルト、ミカサ・アッカーマン。君たちにも調査兵団に入ってもらい、存分に働いてもらう。異存はないな?」
「「「はッ!」」」
エルヴィンの問いかけに、心臓を捧げるポーズをする三人。彼らの目は泣いた影響で若干赤くなっており、その隣で他三人が見守っていた。泣き止んだエレン達は体を離し、エルヴィンたち調査兵団の重役の前で一列に並んでいた。
「……よし。君たちも特例で入団を許可する。訓練兵団卒業まではそちらが優先だが。……アニ、すまないがこの三人とリヴァイ班に説明をもう一度頼む」
「はッ、了解しました。……では、説明させていただきます」
アニはまだこの世界の秘密を知らない面々向けにもう一度、巨人などに関する説明を(簡略化して)説明した。『九つの巨人』や『無垢の巨人』、壁の秘密や、エルディア人を取り巻く世界の状況。説明を聞き終わった彼ら(特にリヴァイ班)は驚きと戸惑いが半分半分の複雑な表情をしている。
「俺に、腹違いの兄が……」
「私に、将軍家の血が……」
特に家族関係の情報を明かされたエレンとミカサは、少々戸惑っているようだ。リヴァイ班は顔を見合わせて考え込んでいる様子。
「さて、アニ。次はどうする?」
エルヴィンに促され、アニは己の計画を語り始めた。
「まずやらなければならないのは、エレンからヒストリアへの始祖の力の譲渡。エレンの血を飲んでもらいますが……ヒストリアには少々問題が」
ヒストリアは王家の血を継ぐ者が始祖の力を継承した時に、その継承者に起きることを思い出して表情を引き締めた。―『不戦の契り』。初代レイス王の、自滅願望のような思想に縛られる恐れがあり、ヒストリアはそれを打ち破らなければならないのだ。
「『不戦の契り』が発動し、ヒストリアがヒストリアでなくなるけど……本当に大丈夫?」
アニはヒストリアの方を向くと、心配そうに眉を寄せた。ヒストリアははっきりと頷き返す。
「うん。……私は負けない。私は私のまま、世界を守るために戦う」
アニは深く息を吐いた後、ヒストリアにはっきり告げた。
「わかった。……けど危うくなったら私たちが全力で止めるから」
「ありがとう、皆」
ヒストリアは自分に向かって頷いたユミル、アニ、エレンに向かって頭を下げた。
「で、成功したら巨人化実験ですね。ハンジさん、その時は協力お願いします」
「任せてよ!いや~心が躍る!人間が巨人になるところをこの目で見れるとは……」
熱く語りだしたハンジを止められないと判断したアニは彼女を放置し、計画の説明を続けた。
「その後は……他の戦士隊の説得をします。ライナーとベルトルト……それから後から来るジーク戦士長とピークをこちらに引き入れないと」
ライナーとベルトルトの名を聞いた調査兵団の面々は顔をしかめた。……四年前に壁を壊した怨敵なので当然だが。
「……皆さんのお気持ちは分かります。殺したい、と思うのは当然でしょう。ですが、我々にも選択肢はなかったのです。任務を遂行しなければ、家族の安全の保障はありませんから。……あいつらには後できちんと詫びを入れさせます。私がしばいた後で」
アニの瞳がきらりと輝き、エレン達はアニが本気だと悟ってぎょっとした。
「……俺のしごきも入れさせてもらうが、構わねえな」
「はい、どうぞどうぞ」
続いてリヴァイの発言と、同期を平然と売ったアニにぎょっとするエレンたち。
「ジーク戦士長は……私の考えと近いものを持っていますが危険です。始祖の力で……エルディア人に子供が出来ないようにするつもりです。……さすがにそれは私も嫌です。私も子供は欲しいので。……彼を引き入れられれば反マーレ義勇兵がこっちに付くのでお得です。人手は多い方がいいので」
「そっか、まだ話し合える相手が居たんだ……」
何処かほっとした表情を浮かべるアルミン。エレンとヒストリアがその顔を見つめていると、何か声が聞こえた気がした。
(戦え……戦え……)
「「!」」
(何、今の声……)
(今のは……俺?)
「そして最後に仕上げとしてクーデターを起こして偽王政とレイス家を排除した後、ウォールマリアを奪還します」
「本当に、今日は色々あったな……」
「うん……」
エレン達六人は訓練兵団に向けて帰宅の途についていた。御者台にはアニとアルミンが座り、交代で手綱を握りながらアルミンが興奮した様子でアニに外の世界について聞いていた。アニは若干引きながらも楽しそうにアルミンの質問に答えていた。
「次の次の休息日に私に始祖の力が渡される……」
「ク……ヒストリア、本当に大丈夫か?」
「うん……ちょっと怖いけどね。でも、大丈夫。皆も居るから」
そう言って微笑んだヒストリアを見て、エレンも笑った。
「いい顔で笑うようになったな……ヒストリア」
「え、そう?」
「ああ。前まではなんか取り繕った感じで、本心から笑ってない気がしてたんだ。今のヒストリアは、本当に心から笑ってる気がする」
「……そうだね。やっと、本当の私に成れたと思う。アニのおかげかな」
「そう言ってもらえると嬉しいけどね。私は背中を押しただけだよ。ヒストリアが自分で歩き出したんだ。……ユミルも、一緒に」
アニは夕暮れに染まる空を見上げながら、微笑んだ。そんなアニの手綱を握る手を、アルミンがそっと握る。アニはぼっと赤面し、アルミンから顔を逸らした。アルミンも照れ臭そうに笑った。そして、ヒストリアとユミルも、エレンとミカサもお互いの手を握り合った。
To be continued......
今回から第二章が始まります。前回までの第一章は、アニが前世の記憶を得てから、エレンを止めるまでを描いた『変革の始まり』編。そして今回からの第二章は、『継承者との対決』編。マーレ戦士隊と対峙し、仲間になるまでを描いてゆく予定です。
ここからは登場人物紹介。
アニ・レオンハート
本作の主人公(マーレ側)。前世の記憶を得たことで未来を知り、悩んだ末地鳴らしを止めるべく立ち上がった。調査兵団に協力を求め、壁内で巻き起こる陰謀に巻き込まれてゆく……。
前世の記憶を得たことで人格などに変化は無かったものの価値観に変化が起き、戦争や人種差別を嫌い、平和を願うようになる。原作同様アルミンに特別な感情を抱いている。
クリスタ・レンズ/ヒストリア・レイス
本作のもう一人の主人公(エルディア側)。アニから協力を求められ、未来を垣間見たことでクリスタではなくヒストリアとして歩むことを決めた。ビジョンに導かれ、始祖の力をエレンから受け継ぐことになる。
ユミル
アニに協力を求められ、未来を垣間見た時に己の運命を悟るが、アニとヒストリアの言葉に促されその運命に抗う決意を固めた。
アルミン・アルレルト
アニから最初に打ち明けられた人間。アニの苦悩を受け止め、背中を押した。これまでの出来事を受けてアニとの距離が縮まりつつある。
エレン・イェーガー
原作の主人公。本作では一メインキャラである。己の未来を知って絶望しかけるが、大切な仲間たちに叱咤され、諭されたことで落ち着いた。原作よりも表情は少し柔らかく、憎しみも薄まっている。
ミカサ・アッカーマン
アニと交流し、打ち合ったことでアニの心の一端に触れる。そのため珍しくエレンを制止し、アニを庇った。