アニが前世の記憶を取り戻した週の休息日。アニはすることが思いつかず、本でも読もうかと訓練兵団の学舎の図書室を訪れていた。
「さて、何を読もうか……」
アニが適当に本を取ってパラパラとページをめくっていると、そんな彼女に話しかけて来る者があった。
「あれ、アニ?」
「……アルミン」
その人物の名前は―アルミン・アルレルト。アニの同期でエレン・イェ―ガーの親友であり、尚且つ原作ではアニとある種の特別な関係にある少年である。
「珍しいね、アニが図書室に居るなんて」
「……ちょっと本でも読んで気分転換しようかと思ってね。したいことが他に無くて」
「へえ、いいじゃないか」
「エレンとミカサは?一緒じゃないのかい?」
「あ~……あの二人は自主練するって。僕は遠慮させてもらったんだ」
「……賢明な判断だね。死に急ぎ野郎にいつも付き合う必要はないよ」
「ハハハ……」
アニとアルミンはお互いに本棚から本を取ってパラパラめくり、目当ての本を探しながら会話を交わす二人。言葉を交わしながらアニは理由は分からないが心地よさを感じ、アルミンは意外さを感じていた。
「……あ、あった」
「何を捜してたの?」
アニは取った本の表紙をさっとアルミンに見せた。本のタイトルは―『壁内文化』。アニは前世の記憶を得た影響から壁内の軍事・技術力が壁外よりも一世紀ほど遅れていることは把握していたが、文化については知らなかったため探してみようと思ったのだ。
「面白そうだね、それ」
「アルミンは?」
「僕?僕はね、これ!」
アルミンはそう言って満面の笑みをを浮かべながら両手で本をずずいっと突き出した。表紙から察するに、海に関する本だろう。
「……アンタも飽きないね」
「それはそうだよ!実際に見ることは出来ないけど、本を読むだけでも想像出来るからね」
「まあ……確かに」
二人は各々の読みたい本を持って読書スペースに行き、隣に座って夢中になって読みふける。アルミンが隣で「ふわあ……」とか「おお……」とかいう声を上げているのを感じながら、アニは本を読み、顔を顰めた。
(やはり……文化面も遅れている)
ここ数日で食事や衣類など身近なものから壁内が困窮しているのは肌で感じていたが、文化に関する本を読んでその内容から資源・技術面で大幅に遅れていることを察したアニ。
(これも五年前が尾を引いている……)
改めてマーレでエルディア人が虐げられているとはいえここよりもましな生活を送れていたことを感じ、アニの心で育ち始めていた罪悪感がさらに大きくなるのを感じた。
(私たちが、マーレが、壁内の人々をこんなに追い詰めているなんて……)
アニはふと本に向けていた目を上に上げ、備え付けの時計の時刻を目にした。
「あ、もうお昼か」
流石に一旦ここで切ろうと立ち上がったアニは、隣の席に座るアルミンが微動だにせず本を読み続けるのを確認し、そっとしておこうと声を掛けずその場を離れた。読んでいた本を本棚に戻し、図書室を出たアニは食堂に向かった。一応食堂には休息日とはいえ料理長はおり、彼からパンと干し肉を貰うことは出来た。自分の分を貰った後、ふとエレンとミカサのことを思い出すアニ。
(あの二人、昼食のこと忘れてないよな?)
「すみません、後二人分貰えます?友人たちにあげたくて」
「おう、構わないぜ」
「……ありがとうございます」
(……仕方ない。持ってってやるか)
アニは自分の分と二人の分の昼食が入った袋を受け取ると、訓練兵団の訓練場に向かう。アニが到着すると、エレンとミカサが夢中になって訓練をしているのが見えた。
(……朝からぶっ続けでやってたのかい、あの二人は)
アニは一つ溜息を吐くと、袋を持って訓練場に足を踏み入れた。
「お二人さん、少し休憩したらどうだい?」
「アニ!」
「……何の用」
「……冷たいね、昼食を持ってきてやったのに」
エレンとミカサは訓練場に足を踏み入れたアニに気付いて組み手を中断し、アニの下に駆け寄ってくる。アニはミカサに若干にらまれながら二人に昼食を手渡した。
「お、貰ってきてくれたのか。アニ、ありがとな」
「……一応、礼は言っておく」
「どーも」
(訓練の時エレンをあたしが構ってばっかだから取られると思ってるのかね?案外かわいいとこがあるじゃないか、ミカサ)
「あたしも一緒していいかい?」
「あ、ああ」
「…………いいけど」
(……分かりやすいな)
アニは内心苦笑しながらエレンの右隣りに腰を下ろし、パンを取り出した。ミカサも対抗するようにエレンの左隣に座り、アニを鋭い目つきで睨みながらパンをかじり始めた。エレンはすまし顔をするアニと彼女を睨みつけるミカサに困惑しながらも、自分の分の昼食を食べ始めた。
お待たせしました。今回と次回は、アニと同期が絡むお話となります。……四期三話で久しぶりにアニメでアニを見たけど、やっぱいいわ……。