獅子の娘は心臓を捧げる   作:ASNE

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獅子の娘は進み始める(後編)

突如頭を下げたアニに、二人は拍子抜けしたように呆気にとられた。

「世界を、救う?」

「ああ。荒唐無稽な話かもしれないが、私の話を聞いて欲しい」

そう言ってアルミンにも言った内容を話し始めようとし、そこでふとあることを思いついた。

(この二人なら、体に触れさせれば未来について見せられるか?)

「話そうかと思ったんだけど……それよりも効率的な方法がある。二人共、私の体を触って」

「「え?」」

「ほら、こうして」

アニは困惑する二人の腕を取り、半ば強引にアニの背中に触れさせた。すると二人の脳裏に、見知らぬ未来のビジョンがいくつも浮かび上がった。ヒストリアの脳内には仲間と共に調査兵団として巨人に立ち向かう記憶やユミルが巨人に変身してピンチになった自分たちを救う記憶、長らく会っていなかった父と決別し、女王になる記憶。ユミルの脳内には、巨人に変身してヒストリアや仲間たちを捨て身で守る記憶や、己が喰らったマルセルという少年の国に行き、マルセルの弟ポルコに喰われていく己の最期の記憶が映っていた。

「「!」」

「……見えたかい?」

二人はコクリと頷いた。

「今二人に見えたであろう記憶は、このまま行くと起こり得る未来だ。全部は見えてはいないだろうから、私から補足する。本来なら一年後にライナーとベルトルト―九人いる巨人化能力者の内二人がまた壁を壊し、私たちの同期から大勢の死者が出る。その戦いでエレンが巨人化能力を発現させ、そこから壁内人類とマーレの長い戦いが始まる。大勢の死者が出て、最終的にエレンが壁内人類を守るために壁の中に潜む無数の超大型巨人を世界中に解き放つ『地鳴らし』が起きる。……大雑把だけど、これが私が知ってしまった未来だ。ヒストリアを王に祭り上げられ、多分本気で好きじゃない相手と結婚する。ユミルは……言うまでもないよね。ごめん、二人共」

アニは悔恨から顔を歪ませながら、再び頭を下げた。この二人は望まぬ内に特異な力を持っていたが故に過酷な運命に巻き込まれ、ユミルに至っては命を落とした。しかもユミルを喰らったのは己もよく知るポルコだ。そんな彼らを巻き込むことになってしまうことに、アニは心を痛めた。

「アニ……アンタ本当に優しいんだな」

「は?」

ユミルはアニの反応に構わずにかっと笑った。

「だって、そうだろ?普通だったら人に打ち明けられるようなことじゃない。自分は敵のスパイで、私の仲間のせいであなたは死にますって言うには、そーとー勇気が要ると思うぜ?」

「ユミルが、死ぬ!?」

「ありゃ、クリスタはそこは見えてなかったのか。……まあ兎も角、アンタが優しい奴だってことは分かったよ。……あたしで良ければ、いくらでも力を貸すよ。必要なら喰われても……「それはダメだよ」」

冗談交じりで言おうとしたユミルの言葉を、アニが強い語気で遮る。その目を鋭くさせながら、アニは二人に告げた。

「はっきり言っておくけど、私は誰も犠牲にするつもりはない。巨人化能力の継承も、今の代で終わりにする」

「ヒストリアも、王様にするつもりはない。貴方には、自分の道を歩んでほしいと思う。ある程度協力はしてもらうけど、全てが終わったら好きに生きて欲しい。その分は、私が命を燃やして頑張るから」

それを聞いたヒストリア―クリスタは表情を元の明るいものに戻し、笑顔でアニの手を取った。

「それ聞いたら、私が放り出す訳にはいかないよ。他の皆にも手伝ってもらうんでしょ?だったら私も頑張らなきゃ。王様にはならないし怖いけど、私も自分に出来ることをするよ」

それに続くように、ユミルもアニの反対の手を取った。

「ならクリスタ……ヒストリアが無茶しないようにあたしも付き合わなきゃな?」

「もう、ユミルったら……!」

ユミルはクリスタを揶揄うようにケタケタ笑い、クリスタは頬を膨らませてアニの手を握っていない方の手でポカポカ叩く。アニはその光景にほっこりしつつ、決意をより一層固いものにした。

(地鳴らしや戦争は絶対に阻止しなければね。こういった何気ない幸せを奪っちゃいけないんだから……)

アニは改めて協力をお願いしようと口を開いた。すると同時に、今度は三人の意識が真っ暗な空間に繋げられる。

「「「!」」」

その空間では一人の人間から九本の道に分かたれ、何人もの見知らぬ人間を通っていた。……おそらく歴代の継承者だろう。そしてアニとユミルに一本ずつ繋がっている。そして周りを見ると、不透明な姿ながらもライナー、ベルトルト、ジーク、ピーク、ラーラ・タイバーの姿があった。そして、一際大きな道ともう一本の道が繋がっているのはエレンだろう。……すると、異変が起きた。その大きな道が分かたれて、クリスタ/ヒストリアに繋がったのである。

そこで意識が引き戻され、三人は息を吐き出した。

「「「はあ……」」」

(今のは、まさか……)

まだ巨人についてよく知らないユミルとクリスタは不思議そうな表情をしていたが、アニは今の事象に心当たりがあり戦慄してしまう。だが、それに関しては口を出すことなくアニは二人に来週少し遠出することを伝えるのだった。

 

 

 

そして、翌週の休息日。アニ、ユミル、クリスタの三人は私服ではなく訓練兵団の制服を纏い、前日の晩に抜け出し、少し遠出して調査兵団の本部がある内地の城壁都市にやってきていた(移動手段は、アニが借りてきた馬車。アニたちが自ら操った)。馬車の係留場所に繋いで料金を払い、アニは二人を連れて目的の人物を捜す。

「アニ、これからどうするの?」

「……取り敢えず調査兵団の、エルヴィン団長を捜す。それがだめならリヴァイ兵長かハンジさん。力を貸してくれるのはあの人たちだけだ。憲兵団は王政府の言いなりだし、駐屯兵団もうかつには動けない。となると、一番動きやすく上向きな調査兵団しかない」

アニは得た知識からエルヴィン団長やリヴァイ兵長、ハンジのことを尊敬しており彼らの人柄も知っている。アニは彼らこそが世界を救う鍵だと信じ、未来を預けることを決めた。

周りを見渡しながら歩いていると、ユミルがある一団を指さした。

「あれか?」

「……!そうだ、あの人たちだ……!」

ユミルが指さす先に居たのは、アニが名前を挙げた三人。……ここから、アニ・レオンハートの一世一代の賭けが始まる。

 

 

 




本文でも触れた通り、クリスタ/ヒストリアはこの世界で女王にはならず、ユミルも死にません。ごめんよポルコ、人間のままピークと頑張ってほしい。
ていうか書くためにアニメ見返したり漫画読み返したけど、進撃女子ってホントに逞しいですね。本作でも存分に輝いてほしい。



そして、次回からしばらく調査兵団本部が物語の舞台となります(原作で本部が何処か触れられていなかったので内地の何処か、と曖昧な表現にしました)。
エルヴィンやリヴァイ、ハンジにどう話し協力を取り付けるのかお楽しみに!(リヴァイ班も顔出します)
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