御礼、およびセカイの狭さ
あの一件があって2週間くらいたった放課後のことである。
そういえばと思い出して天馬君に「お礼」としてお菓子とお茶をプレゼントしたところ、悶えるほど喜んでくれた。喜んでくれたのなら何よりである。
その後、校内をふらついていると暁山瑞希に出会った。
「あ、センパイ!」
そう呼び止められる。
「あぁ。暁山さん。どうしたんだい?」
「いや見かけたから声かけようと思ってね~。
そういえば幼馴染の子とはどうなったの?」
まぁそっちが本題だろう。成功報酬があるのだから。
「あぁ・・・まぁ成功したよ。私が成功させたわけじゃないけど。」
暁山瑞希がにんまりとする。
「まぁまぁ。成功させたのならなんだっていいじゃん。で、約束は守ってくれるのかな?」
「あぁ、もちろんだとも。それで何がいいんだい?」
「ふふ・・・それはね・・・。」
時は過ぎて暁山瑞希の指定した日曜日である。
暁山瑞希からの礼として提示された条件は
正直何とも言えない嫌な予感がしたが、礼儀を尽くすのはこちらなので致し方ない。
時刻としては集合時間の10分前くらい。
そこら辺のコンビニで買ってきた缶コーヒーを飲みながら待ち合わせ場所として多用される場所を俯瞰する。
カップル、老年夫婦や男性3人の友達グループ。中には男性女性2:2のグループもある。みなこれからのことに対しキャッキャうふふと話している。恨めしい。
『ついたけどもう居る?』
とチャットが暁山から飛んでくる。
周囲を見渡し、薄ピンク色の髪の毛を見つけ、そこに近寄ってみると案の定暁山だった。
「やぁ暁山さん。」
「おはよう先輩。」
すごい健気に手を振ってくる。目立つなぁなんて思いながら喋っていると、そばに見たことがあるような顔がいた。
足までつくほど長いストレートロングの銀髪の少女。
ついこの前怪我を手当てした人物だ。前と同じ服装をしているからすぐに思い至った。
あちらもこちらに気が付いたようだった。
「あぁ・・・えっと。この前はどうも。」
「あぁ、うん。こんにちは。Kさん・・・・でいいのかな。特にあの後問題なさそうでよかったよ。」
そんな社交辞令を交わしつつ暁山に話しかける。
「なぁ、暁山さん。合わせたい人って。」
「まぁもう少しいるから待っててよ。」
何たることだろう。うれしいには嬉しい。この銀髪少女のその後も気になりはしたからだ。
だが普通に気まずい。
うら若き乙女の中に男子高校生1人だけっていうのがつらい。
そんな重い空気に耐えているるとどこからか「おまたせ~!瑞希~奏~!」という声が聞こえる。
その声の主を見ると目についたのはショートカットで首にチョーカー。まぁなんとも最近の女子高生という出で立ちである。それがさらに気まずいという空気に拍車をかけていた。
普通に帰りたい。
「で、瑞希。そこの人が?」
「そうだよ。ボクの学校の先輩。」
「ふーん。
「・・・どうも。」
めちゃくちゃじろじろ見られている。気まずい。
じろじろ見られているうちに思い出したのだが、私はこの人に一回学校であっているかもしれない。
以前下駄箱で定時制の生徒とぶつかった記憶があるが、なんとなくこんな感じの声と顔だったことは覚えている。まぁ本人は何も覚えていないであろうが。
むしろ覚えていた方が難癖付けられるので知らないふりをしよう。
「・・・まぁいいわ。それで?
・・・え?
「もう着いたからすぐ来るらしいよ。」
まず、暁山瑞希に問い詰めよう。人違いかもしれない。
「待て暁山さん・・・まふゆって」
「皆、おまたせ。・・・え?」
あまりにも聞きなじみのある声だった。
もう逃げられないからせめて答えを確認する。
やがて乾いた声が出た。
セカイって意外と狭いんだな、となんとなく思ってしまう。
「まふゆ・・・さん?」
ショートカットの子がさした女性は紛れもなく朝比奈まふゆなのだった。
だが相手も今日私が来るのだと知らなかったらしく驚いている。
「・・・なんでここに文人くんがいるの?。」
彼女の無表情がいつもより心なしか冷たく見える。正直に言うべきだろうか。
「あー、暁山さんに呼ばれたんだ。前いろいろと相談に乗ってもらってな。そのお礼にって。」
「そ、そうなんだよまふゆ。いやぁやっぱりまふゆだったんだ。先輩の幼馴染。」
まるで前前から感づいていたような言い方をするなとは思うがこんな人間確かにそんなにはいないだろう。
そして何より目の前にいる彼女たちが何より朝比奈まふゆを支え、救ったのだろう。
「ということは君たちがまふゆさんを救い出してくれたんだな・・・。
本当にありがとう。彼女を救ってくれて。彼女を見捨てないでいてくれてありがとう。」
深く頭を下げる。その一点で私はきっと彼女たちに頭が上がらないだろう。
「・・・ふん。そんなに感謝するならこうなる前にどうにかしなさいよね。」
「あぁ。ごもっともだ。返す言葉もない。」
言い方はキツいがド正論である。彼女がこうなる前に私が彼女の拠り所となれていればこうはならなかったかもしれないと考えなかった日は無かった。
「さて、と!積もる話もあるだろうし、まずは場所を移そうよ。いつものファミレスに。」
「・・・まぁそうしようか。」
暁山瑞希のおかげでとりあえずのこの窮地からは脱したようだった。
所変わってファミレスである。
各々好きなものを注文し、1段落ついたところで改めて自己紹介をする。
「じゃあ新顔からいこう!先輩の次に絵名と奏の順ね。」
「えーっと・・・神山高校二年生、森文人です。趣味は読書。好きなものは・・・カレーでいいかな。呼び方はご自由に呼んでくれて構わないよ。」
拍手される。なるべく気に障らない自己紹介をしてきたからこういう期待されると困る。
「東雲絵名。神山高校二部の二年生。よろしく。」
東雲という名前には憶えがある。確か天馬君の知り合いにそんな名字の男性がいた気があする。
「宵崎奏。通信制の高校に通ってる。通ってると言っても授業は家の中だけど。よろしく。」
一方のこちらはまぁ確かにその感じでは外には出ないよな。と思ってしまう。
とひとしきり自己紹介を終える。その後多少の質疑応答を交える。
話題としてはどんな本を読むか。またジャンルは。などだった。
それから料理が運ばれてきて皆料理を食べながらワイワイと話し出す。
それを傍らにぼーっとご飯を食べる。うん。普通だ。
話題は様々のようだ。基本的に暁山瑞希が学校の話題を出し、東雲絵名がそれに対し突っ込みを加え、宵崎奏が疑問を提し、時に朝比奈まふゆが少し辛辣な茶々を加える。それを東雲絵名が怒って・・・と延々と続く。
実に微笑ましい。
やはりこの場では私は不純物だ。彼女たちのコミュニティはあれで完結している。そう思える。
まぁわかりきっていることである。彼女たちのように何か共通の目的における親交を深めるためではなく、あくまで暁山瑞希のお呼ばれできているのだから当たり前である。
そんなことをぼんやり考えながら頼んだ紅茶を飲む。うん。こっちはおいしくない。
こんなことを考えて時間が過ぎるのを待っていればすぐに終わるだろう。
生憎彼女たちのコミュニティに水を差したり間に入れるほど私は蛮勇じゃない。
「ね!先輩もそう思わない?」
話を振られるとは思ってなかった。基本は空気で売っている私が誰かの会話の中に入れられることはあんまりない。だから意外性が高かった。
いやまったく話を聞いてなかった。もちろんキラーパスされる可能性を考えなかった私が悪いだろう。
「ごめん。何の話だったかな。」
「さてはまふゆに見とれて話聞いてなかったな?このこの~。」
「いや、普通に話聞いてなかっただけだ。すまない。」
「今はそれで許してあげよう。それで、さ。先輩をニーゴのマネージャーとして置いておきたいんだけどどうかな?いいと思わない?」
「・・・はい?」
とんでもない爆弾発言というものは割と気軽に起きるものだな、と感じた。
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記念枠(内容は今のところ決めてないです)
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