4分33秒のソナタ   作:かしうり

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逢瀬、および感情の濃淡

翌日である。

昨日の質問攻めから個人的に朝比奈まふゆを遊びに誘おうと決めたのだが。

朝起きてから妙に緊張する。失敗するかもしれないという不安からだろう。

 

少し妙な緊張をしながらドアを開く。

 

「・・・おはよう。まふゆさん。」

「・・・おはよう。」

 

そんないつも通りの挨拶と共に登校は始まる。

 

「ねぇ。まふゆさん。」

 

「・・・なに?」

 

感情のない目がこちらを向く。

 

「今週末暇だったりしない?」

 

「今週末・・・?どうして?」

 

「一緒に遊ばない?」

 

時が止まったかのように二人の歩みが止まる。

 

彼女の顔から大まかな感情は読み取れても何を考えているかは読めない。

 

「・・・どうかな。予定が合わないって話なら別にいいんだけど。」

 

少しだけ彼女と見つけあう。

 

「・・・いいよ。」

 

どうやらいいらしい。

 

「よかった。ありがとう。・・・行きたいところとかあるかな?できれば希望通りにしたいんだけど。」

 

「・・・なんでもいい。」

 

なんでもいいならこちらで設計させてもらおう。

ただ朝比奈まふゆと遊べるというだけで週末が楽しみだった。

 

 

 

時変わって日曜日である。

 

そう、週末である。 このくだりを以前やった気がするけど気のせいだ。

 

集合は家前である。

少しおしゃれをして、外に出て待つ。

昨日のうちにナイトコードの個人チャットでいつ集まるかを決めていた。

 

時間少し前から適当にケータイを弄っていた。

 

「・・・おはよう。文人くん。」

 

いつの間にか目の前に朝比奈まふゆがいた。

いつもの制服姿とは違い、私服である。

落ち着いた色でまとまっている。

とてもエレガントだ。

 

「おはよう、まふゆさん。」

 

「・・・行こう?」

 

「うん。行こうか。」

 

二人で横に並び、話しながら歩く。

今日は駅までじゃなく一日中というところが何よりもうれしかった。

 

 

着いたのはカラオケである。

 

「ここ・・・?」

 

「うん。ここだよ。」

 

嫌だったかな。と彼女の顔をうかがう。

 

「・・・別に。」

 

そう言いながら自分から入りに行く彼女を私は見逃さなかった。

 

 

 

所定の手続きを済ませ、指定された部屋に入り、電気をつける。

 

「・・・まふゆさんってカラオケしたことある?」

 

「・・・ない。」

 

「じゃあ使い方教えるからそこらへん座って。」

 

そういいながら画面を見せこれでこれこれこうなると説明をする。

彼女は頭がいいのでそう時間もかからずに理解してくれた。

 

「じゃあ、とりあえず適当に一曲歌うから自分が歌う曲を選んでみて。」

 

そう言いながら適度に朝比奈まふゆを気にしながら歌う。

 

どうやら予約できたらしい。よかった。

 

とりあえず一曲歌い終わる。

 

横を見ると彼女が歌うために立ち上がっていた。

 

イントロが始まる前に次の曲を予約し、彼女の歌を待つ。

 

 

歌い出しと共に私の視線は彼女に釘付けになる。

 

 

歌声も歌う姿も。儚く、美しかった。

そこに少し妖艶さがある。

あぁ、これは少し病みつきになりそうだ、なんて感じたのは彼女が好きだからだろうか。

 

彼女を見ていると彼女がこちらを見る。

 

「・・・どうしたの?」

 

歌う姿に見惚れていた。なんて言えそうにない。

そんなことを言えるのは私よりキザな人間だけだろう。

 

「いいや。歌うまいなって思っただけだよ。」

 

「・・・よくわからない。」

 

「普通にうまいよ。うん。誇っていい。」

 

適当にごまかす。

彼女は感情への理解が疎いかもしれないが決してないわけじゃない。

故に純粋に火の玉ストレートに心を粉砕されかねないのだ。

 

「・・・なんで?」

 

「・・・いやほんとにそれだけだって。」

 

「嘘。」

 

そう言いながら次の曲を歌い始めようと立ち上がる。

立ち上がろうとした際に朝比奈まふゆに腕を引っ張られる。

片腕しか引っ張られないので体勢が斜めになるわけで。

 

 

自然と朝比奈まふゆに膝枕される形になっていた。

 

もはやラブコメだろとどこからか突っ込みが入る。

 

「ねぇ、文人くん」

 

朝比奈まふゆの太ももの感触。彼女の顔が見上げたらある。

 

それを認識するのに数秒かかる。

 

もはや歌が自分の番だったとかそういうのは気にできる事じゃなかった。

 

「えっと・・・まふゆさん?」

 

「なんでこっちを見てたの?」

 

背筋が凍るほどのトーンが低い声で答えを促してくる。シャレにならない。

若干命の危険を感じた。

 

「えっと・・・すみません。見惚れてました。」

 

選んだのは服従である。

思わず謝る。ついでに正直に言う。

簡単に拘束は解かれた。

 

しかし、こんな状態じゃ歌えるはずもなく。

 

「・・・お手洗い行ってくるね。」

 

そう言い残し彼女は部屋から出ていく。

 

・・・ドン引きされたな。

そう思いながら選曲を変え、別の曲を歌い始める。

 

その後数分で朝比奈まふゆは戻ってきて、何事もなかったかのようにカラオケは2時間を終え、払って外に出た。

 

その後ファミリーレストランに入り、昼食をとる。

 

「・・・まふゆさんはどこか行きたいところとかある?」

 

あんなことがあったせいか、微妙な空気感がある。

個人的に気まずい。すごい気まずい。

 

「・・・別に。」

 

「じゃあ、ウィンドウショッピングでもしようか。」

 

「・・・わかった。」

 

ファミレスの会計をして、外に出る。

二人で気になる店などを適当に物色し、歩き回る。

本屋、CDショップ、アクセサリー様々な各所を回る。

 

まぁ、これといったものは買わなかったが。

ウィンドウショッピングなんてそんなものだろう。

 

気が付けば日が傾こうとしていた。

同じ駅に帰ってきて、帰り道をふたりで歩く。

 

「・・・今日はどうだった?」

 

と朝比奈まふゆに聞く。

 

「・・・多分、楽しかったんだと思う。」

 

とどこかを見ながら彼女はいう。

多少のアクシデントはあれど、楽しめてもらえたらしい。

 

「よかった。楽しんでもらえて。」

 

「・・・文人くん。」

 

「なにかな、まふゆさん。」

 

「・・・遊びに誘ってくれてありがとう。」

 

「ううん。こっちも楽しかったから。お誘いに乗ってくれて、ありがとう。」

 

二人で雑談をする。

このタイミングで今日一番気になっていたことを、聞くべきだろうか。

 

「ねぇ、まふゆさん。」

 

問いかけが始まった以上逃げ道はなくなった。

いや、自分で失くした。

 

「・・・どうしたの?」

 

「なんでカラオケの時・・・あんなことを聞いたの?」

 

「あんなこと・・・?」

 

「ほら、なんでこっちをみたのかって聞いてきた時。」

 

あぁ答えたくなければ答えなくてもいいと付け加える。

 

「・・・わからない。・・・でも、恥ずかしかったからだと思う。」

 

そう彼女は言った。

 

 

 

気が付いたら家の前だった。

 

「・・・文人くん。また、ナイトコードで。」

 

「あぁうん。じゃあまたね。まふゆさん。」

 

 

 

そうは返したものの、彼女の発言が衝撃的ですぐに家に入れそうになかった。

 

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