4分33秒のソナタ   作:かしうり

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一応1ストック貯まりましたがもしかしたらこれからちまちま休む時があるかもしれないです。申し訳ない。


推論、およびお面の意義

朝の光で目が覚める。時間を見て、いつも通り登校の準備をして、外に出る。

いつも通り彼女がそこにはいた。

「おはよう、まふゆさん。」

「・・・おはよ。」

 

朝比奈まふゆは今日はどことなくよそよしかった。

やはり昨日の仮面と言い、やはり彼女には羞恥の感情が発露したと考えられるのではないだろうか。

 

・・・考えすぎか。

 

「じゃあ、行こうか。」

 

「・・・うん。」

 

他愛のない会話をし続ける。どうにも彼女の歯切れは悪かった。

 

「まふゆさん、今日なんだかいつもと違うけど何かあったの?」

 

「・・・よくわからない。」

 

そう言っている彼女の顔を覗き込むと彼女の顔はいつも通り無表情ではあったが、瞳の奥が揺れているように見えた。

 

「・・・そっか。何か変なことがあったら遠慮なくいってね。すぐに対処に当たるから。」

 

追求することはし過ぎないほうがいいが、朝比奈まふゆの助けにはなりたい。しかし、彼女が消えてしまうような下手は二度は打てない。

むしろウザいくらいサポートに回るのも手だろう。

 

そんなことを考えつつ、駅に着くので朝比奈まふゆと別れ、一人になる。

 

そこから考えるのは、やはり昨日セカイで唐突に発現した()()()()の事である。

重要視すべきはお面であるということであろう。

 

お面というものは主に顔を隠すときや、何かに模す時に使われるツールである。

演じる、ということにおいてもこのお面は強く効能を発揮するが、なによりも悟られない、中身を隠しておきたい時に用いられる。

 

おそらく、私の勘が正しいのならばセカイにいた時に思考したように朝比奈まふゆが恥ずかしい、という感情を他人に露にするというのがこのお面の条件であると考えられる。

 

彼女は通常の朝比奈まふゆを外し、恥ずかしいという素の感情を自ら曝け出したことがセカイでのお面の発現に繋がったのではないだろうか。

 

とここまではお面だけでの考察である。

 

なぜこれは狐のお面でなくてはならないのだろうか。

他のお面でもよかったはずだ。ひょっとこにおかめ、天狗や翁。能面に存在するお面は数多くある。まぁ多分想像がいかないだけかもしれないが獅子頭もお面の一つに入る。

 

これら多くのお面がある中、なぜ狐のお面なのか。

 

スマホで能面やお面の画像と昨日のセカイで見た狐のお面を思い出す。

 

ここからもここまでもあくまで推察でしかない。

 

一つ目の推論として能面や他のお面には顔を見せない代わりに感情を演じるためにそれぞれ一つ一つに明確に感情が付けられている。しかし、このセカイの狐のお面は真顔である。感情といった感情が明確にないのだ。つまり、このお面は朝比奈まふゆの無感情の仮面それ自体を表しているのではないだろうか。

 

他者への対応の顔(ヴェール)、仲間内への対応の顔(狐のお面)、そしてそのうち深くに眠り続ける素の顔。

 

この3つで形成されているのではないだろうか。

 

しかし、これには自己批判がある。そもそもそれが本当に2つ目の顔だとして、朝比奈まふゆは私にそこまで気を許しているのか?という批判である。中学生以降碌に関わってこなかった私が気を許されているのだろうか。

 

これに関しては再反論が不可能である。朝比奈まふゆが認容すればいいがそれを聞くほど私に勇気はない。

 

二つめの推論として(これはあまりにも雑な推論だが)狐のお面というのはお祭りの中でうられる時、大抵人目のつくようなところにある。上に置けば華やかで目につきやすく、本来狐のお面とはそうあるべきだと聞いたことがある。

これがあそこにおいてあるということが何かしらのメッセージ性を孕んでいるのだとしたらと考察すると、彼女は自らを見て欲しがっていると考えることができるのではないだろうか。承認欲求という言葉がそれに近い。

 

などという二つほどの推論を立てた。

この推論はあくまで推察でしかない。実験するにも実験をする方法がない。

 

などと考えていたら気が付いたら足は学校に着くまで動いていた。

これ以上の考えと実験が見当たらずに今日いつに入り、鬱屈なまま授業を受けた。

 

 

時は過ぎ、夜である。

 

私は昨日発言した狐のお面を見て考えるためにセカイに来ていた。

ミクに断りを入れ、お面を見まわし、写真を撮る。

 

ちゃんと確認して確定したことはこのお面には感情はない。真顔である。

そして被る以外の機能はない。普通のお面である。

後、少なくとも被るには私の顔では合わなかった。

 

「・・・文人くん?」

 

横から声を掛けられ、横を向く。

そこにいたのは朝比奈まふゆだった。

 

「どうしたのまふゆさん。こんなところで。」

 

「・・・ここのほうが落ち着くから。」

 

「なるほど。」

 

そう言葉を交わすと朝比奈まふゆは何をするでもなく私を見ている。

 

というより手元にあるお面に視線を注いでいる。

 

「・・・被ってみる?」

 

気になるのか気にならないのかわからないが、このセカイが朝比奈まふゆを表しているのなら彼女がこの狐のお面をかぶったときどうなるのかが問題となるだろう。

 

「・・・どっちでもいい。」

 

なら付けさせてみよう。

朝比奈まふゆに渡し、彼女がかぶる。サイズはぴったりだった。

 

「・・・どう?」

 

と聞いてみる。反応にそこまでの期待はしてない。

 

「・・・落ち着く感じがする。」

 

狐のお面を付けて心を落ち着かせる朝比奈まふゆというのはなんというかシュールギャグのようだった。とてもじゃないが何とも言えない気持ちになる。

一応私が持ってきたわけじゃないことを説明する。

 

「セカイにおいてあったお面らしいよ。」

 

「・・・セカイに?」

 

「なんかそこの人形よろしく元からあったってミクさんが言っていたよ。」

 

「・・・元から・・・。」

 

そこから彼女が考え込み始めた。何か思うところがあったのだろう。

 

 

 

 

その後Kに呼ばれるまで私はミクとあやとりをして、まふゆはずっと考え込んでいた。

 

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