4分33秒のソナタ   作:かしうり

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不安、および痕の鎖

目が覚め、付けられた手の甲の痕を触る。

寝る前も、起きた後も、手の甲の痕は残っている。気になってしまう。

 

彼女はなぜこのような痕をつけたのだろう。

彼女はどうしてこのような行動に出たのだろう。

 

触るたびに、見るたびに増々理解が出来なくなっていく。

 

彼女につけられた痕が私の中でずっと彼女のことを考えさせている。

 

玄関ドアを開け、学校へ向かおうとする。

 

痕を付けた張本人は私を待つように玄関先でたっていた。

 

「・・・おはよう。」

「おはよう。まふゆ。」

 

合図もなく歩き出す。

どことなく空気が重い。

昨日のことを聞くべきだろうと思い、口を開く。

 

「まふゆ。」

 

「・・・なに?」

 

「昨日のセカイでの話なんだけど。」

 

「・・・。」

 

「なんで、あんなことを」

「嫌だったから。」

 

彼女は私にかぶせるように発言をした。

はっきりと、自らの意思を発した。

 

彼女は立ち止まった。

それにつられて数歩先に言った私は振り向いて彼女を見やる。

 

その目はいつもと変わらず虚ろで、表情も感じ取れやしないが、確かに彼女の瞳の奥にその意思を見た・・・気がする。

 

「文人に、私を見てほしいから。・・・・この気持ちがなんなのかよくわからない。

でも、私は少なくとも貴方には離れてほしくなかった。

目を離して欲しくなかった。

たとえそれが・・・」

「ミクさんであっても、かな?」

 

彼女はこくりと頷いた。

 

「・・・よくわからないな。」

 

彼女の専売特許なセリフかも知れないが言わざるを得なかった。

なんというか、漠然とした独占欲みたいなものなのだろうか。

 

例えそうであっても私であるという理由がそこにはきっとない。

 

これは宵崎奏や東雲絵名でもよかったはずだ。

面倒はそっちの方がよく見ていると思っている。

 

でも、嬉しいと感じてしまう自分もそこにはいた。

照れ臭いが心に靄が残る。

 

「・・・いいんじゃない?わからなくても。」

 

彼女は微笑みながらそう返した。

 

「・・・そうかな。」

 

そう返すと彼女はこちらへ近寄ってきた。

彼女しか私の目に映らない。

 

「私は文人に今までそうであったように私を見続けていてほしい。ただ・・・それだけ。」

 

彼女の虚ろな目とその微笑みの組み合わせはどこか妖艶で。

声を出すことすら叶わない。

 

「だから、ミクじゃなくて私を見てほしい。」

 

「は、はい・・・。」

 

思わず返事をしてしまった。

 

幼馴染だからそんなに気にならないことっていうのはよくあり、気が付いたときに「あれ、こいつってこんなに可愛かったっけ」となる鈍感主人公系の主人公を読んだ際にアホくさとよくブラウザを閉じることはあるが、どうやらそのような人間たちを私は今馬鹿にできなくなったらしい。

 

彼女は前々から危ういところはあれど魅力的で可愛らしさを備えている美少女と評していたが、それは私の過小評価だったらしい。

 

これはヤバい。

 

語彙力が溶け出す程度にはヤバい。

 

「じゃあ、遅刻しそうだし行こう。」

 

「あぁ・・・うん。」

 

その後の記憶は学校に着くまで覚えていない。

 

 

 

学校から帰ってきて、シャワーを浴び、ベッドに倒れこむ。

 

今日は朝に色々ありすぎて何もできなかったななどと思いつつスマホを弄る。

 

それでもやはり手の甲の痕は今日一日は少なくとも消えないとでも言いたげに残っていて、

スマホを弄っていてもどうにも気になってしまう。

 

手の甲の痕と彼女の発言からしても今回の彼女の行動原因は不安だろう。

 

間違っていたら自分への過大評価が過ぎるが東雲絵名に不変的にいた私がいなくなるかもしれないという可能性を感じさせられ、このような行動に本能的に走った。

 

と考える。

 

そしてニーゴよりも毎日会い、毎日交流をしているミクにその対象が向いているのではと危惧したせいでニーゴの面々や、まふゆ自身もあぁ喋っていたのだろう。

 

しかし、もっと私を見てと言われるほど私は朝比奈まふゆを見ていないだろうか。

 

確かにここ最近セカイを隠れ蓑などにすることは多いけれど数えるほどのはずだ。

 

自分的には見ていると思っても見ていない可能性がある。

 

それを確認するためにナイトコードをオンラインにして、誰かいるか探す。

えななんが一応オンラインだった。

大変申し訳ないがえななんにチャットを送る。

 

『今ちょっといいかな』

 

『どうしたの』

 

『まふゆの事なんだけどさ。』

 

と切り出しつつ現状について話す。

 

誰もからまふゆから目を離すなと言われていること。

自分的には目を離していないつもりだということ。

 

『実際どう思う?』

 

『あー・・・。でも確かにまふゆといるっていうよりはミクといるっていう回数が増えてる感じがするわよねMOBは。』

 

と返された。

 

『そっか。ありがとう。』

 

そう返して枕に顔を埋める。

 

どうやら本当にそうらしい。

 

 

しかし、朝比奈まふゆを見ろ、と言われてもどうすればいいのだろうか。

どんなことをやればいいのかすら皆目見当もつかない。

 

とりあえず朝比奈まふゆを見るという考えを正しくまとめるために、私はPCに向かい始めた。

 

 

作業は難航し夜の1時まで続いた。

 

記念枠もしくはイベント部分について

  • 記念枠(内容は今のところ決めてないです)
  • えなイベ
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