4分33秒のソナタ   作:かしうり

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前回の話のまふゆ視点です。

まぁなんでつくったかっていうと一応次の話で一端のチェックポイントなのですが字数がめちゃくちゃに短いからです。


安定しない心、または納得

どうしようもなく、私は不安定だった。

 

森文人の一挙手一投足を追ってしまう。

 

現状において彼が居なくなってしまうことはとてつもなくまずい事であると感じていた。

 

絵名の言葉がリフレインする。

 

「MOBが彼女を作ったらどう思うのよ」

 

思い返すだけで嫌な気分になる。

嫌悪というのだっただろうか。

 

そうなれば彼が私のことを見ることがなくなる。

それが一番の懸念であった。

 

「ごめん、明日はちょっと早いからもう寝るね。」

 

この状態ではミックスなんて不可能だ。

この作業ペースなら明日少し多くやってしまう方がいい。

 

彼に本をミクに届けるなら早くしてと言い残し、ナイトコードを離脱する。

 

自室を出て、台所へ向かいコップ一杯の水で嫌悪感を流すことをしようにもできない。

わだかまりは抜けないままだ。

お父さんとお母さんはとっくに寝ていた。

 

自室に戻りナイトコードを確認すると許可取れたから今から行く、と彼からメッセージが来ていた。

急いでセカイへ入る。

 

入って目の前でミクと文人は話して居た。

 

文人が笑っていた。

 

あんな顔私には中学生以降見せたことないのに。

 

気が付けば文人の背後まで歩いていた。

 

特に意味はない。

 

ミクと目が合う。

 

「・・・まふゆ。」

 

文人がバッとこちらを振り向く。

 

予想以上に驚いていた。

 

「まふゆ・・・さん。無言で背後に立つのはやめよう?」

 

「楽しそうだなと思って声をかけづらかった」

 

楽しそうだと思ったのはきっと本当だ。

それ以外にさっきからあった黒い靄が少しずつ大きくなっている。

 

ミクに文人をもらい受ける旨の会話を行い、彼に行こうと声をかける。

 

ここにミクがいてもきっと彼の目がそっちに向く度に黒い靄は大きくなるだろう。

現状ですらこの靄は胸の中心部分を完全に覆うような広がり方をしている。

 

彼がこのままミクしか見ないんじゃないかと不安になる。

 

以前瑞希に文人がミクのことをどう思っているか問い詰められていたのを聞いたがあれすら信用ならない程今の私は不安定だと自覚していた。

 

だから、彼が私を忘れないために痕を付けた。

 

手の甲を確認しようと止まり、振り返る。

 

「・・・腕貸して。」

 

意を決して昨日痕を付けた手の甲を見ると痕は消えていた。

 

彼からほんのりミクのにおいがする。

 

それを感じた瞬間、黒い靄がはじける感覚がした。

 

私は私を抑えられなかった。

 

瞬く間に彼の腕にかみついていた。

どうしてそうしているかもわからない。

ただ私を見てくれない彼が私を見てくれるにはこうするしかないと思った。

 

血すら出ているというのに彼はもう片方の腕で私を抱きしめる。

 

「大丈夫」

 

という彼の言葉と共に自分の体の自由が戻ってきた気がする。

 

どうして彼は大丈夫なんて言っているのだろう。

どうして抱きしめたのだろう。

嫌われてもおかしくないはずだ。

 

腕から口を話し、彼の目を見る。

 

「・・・どうして?」

 

出てきたのはか細い声だった。

 

彼は細部まで説明をしてくれた。

 

彼は疑いもなく私を見るために受け入れたのだ。

 

どうしてそうするのかはわからない。

私のしたいことをしてくれといった。

どうしてそこまで私にしてくれるのかわからない。

 

自分から呪いを掛けているみたいじゃないか。

 

「まるで呪いね。」

 

以前にもこういうことを奏に言った。

彼女はそれでいいと受け入れたが彼は呪いという言葉を否定した。

誓いと言い直すらしい。

 

わからない。

だけど、黒い靄は収まった。

 

心がとても落ち着いていた。

 

彼が去る前に礼を言ったらひどく驚いた顔をしていた。

 

 

次の日には少しだけ黒い靄が浮かんできた。

彼が昨日のことを怒っていないかなどを不安に―

 

あぁ、そうか。

 

この感情を不安っていうのか。

 

私の中で足りていない多くのピースのうちの一つが納まった気がした。

 

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