カフェ店員による案内も終わり、さぁどうぞと言われる。
幸運にも店内にはニーゴ以外の誰もいなかった。
まだ広報しきってないのだろう。
このふれあい型カフェは飲食を行うブースと触れ合うブースに分かれており、2種の動物の間ではアクリル板によるゾーニングが成されている。いる動物としては、猫と兎だと説明していた。
説明が終わり、飲み物が届くまでとりあえず触れ合おうとなり、各々どちらかへ向かっていく。
兎ブースへ来て椅子に座り、健気に動く兎を眺め、たまに膝にのってきた兎にニンジンを上げたりする。
かりかりとひたすらに噛り付くさまも微笑ましい。
他に兎のブースに来ているのは東雲絵名だけだった。
彼女は兎と共に自撮りを撮っている。
どうやらこういうのは彼女の恒例の事らしい。
それを尻目にひたすらに兎を撫でまわす。
途中、わざわざ店員が飲み物を置いたと報告までしてくれた。
至れり尽くせりである。
とりあえず飲み物を飲むため、飲食ブースに戻ると朝比奈まふゆだけが戻ってきていた。
特に気にすることもないので椅子に座り、飲み物を飲む。
数分して東雲絵名が兎ブースから出て来た。
こっちをみて不思議なものを見る目をする。
「・・・な、なんで二人ともさっきからここ居るの・・・?」
「紅茶を飲みに。」
「呼ばれたから。」
「そ、そう・・・。」
まぁいいかとかなんとか言いながら彼女も席に着き、自分の頼んだ飲み物を飲む。
さて、猫でも見に行くかと飲み物を飲み干して立ち上がる。
すると朝比奈まふゆも同じくして立ち上がった。
「どこに行くの?」
と聞いてくる。
「猫も見たいなって思ってね。」
そう返すと彼女もいっしょの方向へ向かってくる。
結局二人で猫ブースへと入る。
ちょうど暁山瑞希と入れ違いになり、猫のブースには宵崎奏がいた。
灰色のふてぶてしい眠そうな顔をした猫を宵崎奏は椅子に座り膝にのせていた。
彼女はこちらに気が付いてこちらを見る。
「まふゆ、文人。」
・・・彼女が膝にのせている猫はどこか彼女に似ている気がする。絶対本人には言わないが。
「・・・隣。いい?」
「うん。いいよ。」
と自然な流れで朝比奈まふゆは宵崎奏の横に座った。
彼女たちは猫と触れ合いながら雑談を始めた。とはいってもかなり会話が途切れ途切れだ。
流石にそこに入る勇気など私にはないのでそこらで向かってきた三毛猫に猫じゃらしをふらふらと揺らし、三毛猫と触れ合う。大変癒される。
数分それを繰り返していると三毛猫は飽きたとでも言わんばかりにふいっと顔を逸らし、別の方向へと向かった。
猫とは気まぐれな生き物である。
それとも遊んでやっているという心構えで来たのだろうか。そのような感情があるような気がしてならない。
ふと朝比奈まふゆの方を見ると朝比奈まふゆが膝にのっている猫を無表情でなでていた。彼女は無表情だが猫の方は機嫌がよさそうにしている。
ついには彼女の膝の上を完全に気に入ったのか、寝始めた。
彼女は無表情なりにそれに仕方ないとでも言うように少しため息をついた。
実に微笑ましいなと思いながらその様を眺める。
「MOB、どうしたの?」
宵崎奏に見ていることをバレたらしい。
「いや・・・まふゆが楽しそうでよかったなって。」
「楽しい・・・?」
と朝比奈まふゆは首を傾げる。
どうやら未だ楽しいについては理解できないらしい。
だが、これもまた何かの感情の切り口になるかもしれない。
「・・・確かに。まふゆ、いつもより表情が和らかいかもしれない。どうかな。」
宵崎奏は朝比奈まふゆに微笑みながらそう問いかける。
「・・・よくわからない。」
「何か感じないかな。こう、落ち着くとか、安らぐとか。」
今までしたことがないことにより人は新しく知見を得る。
ならばこうした新しいふれあいの中で彼女の感情は新しく生まれるのではないだろうか。
歌でも、動物でも、展示でもなんでもいい。ただ彼女が興味を示すきっかけが欲しいのだ。
「・・・わからない。」
「あぁ・・・まぁそんなにうまくはいかないよね。」
「・・・うん。まふゆの表情の変化が見れただけでも価値があると思う。」
宵崎奏の言う通りかもしれない。
そんなに急ぐ必要はない。少しずつでもいいから一歩ずつ―
「でも、」
朝比奈まふゆが口を再度開く。
「温かい・・・。感じがするかもしれない。」
そう彼女が感情を言葉にする。
宵崎奏と自然と目が合う。
二人でふっと少し笑うと猫を撫で続ける朝比奈まふゆと共に猫と遊び、猫が起きるのを数分待った。
時間が過ぎ、皆で動物系カフェを出る。
「なんだかんだ楽しかったね!!今度また来ようかな?」
と暁山瑞希が楽しそうに笑う。
「んーそうね。自撮り関係なしに癒されたかも。絵とかでやってられなくなったら来てもいいなって思った。」
と東雲絵名から中々の好評を得れもした。
集合場所まで皆で雑談をしながら帰り、皆自分の家の方向へと解散になる。
「帰ろう。」
「うん。」
電車に乗り、最寄駅まで戻り、家路に向かって歩く。
「まふゆはまた来たいとか思った?」
と数少ない話題を投げかける。
「・・・よくわからない。でも、またあぁやって皆で過ごすのは落ち着く気がする。」
と彼女は答えた。
「・・・そっか。じゃあまた皆であぁ言うまったりしたところに行こう。」
「・・・みんなが行きたいなら。」
その後の会話は別れの挨拶までなかった。
記念枠もしくはイベント部分について
-
記念枠(内容は今のところ決めてないです)
-
えなイベ