4分33秒のソナタ   作:かしうり

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鈍感、および落ち着く場所

動物系カフェでのオフ会を経て夜である。

今日の出来事を思い返す。

朝比奈まふゆが「落ち着く」という単語を始めて使った。

これは彼女がまた新しく感情を発露させたと考えるべきだろう。

しかし先ほどいつも通りセカイへと行ったが、新しいものは確認できなかった。

今までの二回では感情を発露させた際にそれに関連した物がセカイに映されていた。

しかし、今回の物が現れなかったことでこの規則性は崩れる。

仮定すれば以前から朝比奈まふゆが感情として前から持っていた怒りなどは発露しても変化が起きないということか、無生物でないと映さないと言ったところだろうか。

 

・・・ではミクはいったい何者なのだろうか。

 

彼女は感情を表現する言葉を知らない。しかし、喜びや悲しみ、という言葉を知らないだけでその言葉を理解するときちんと感情を表現する。

 

逆に朝比奈まふゆは感情を表す言葉や理論は理解していてもその感情自体が一度失っている。その為に、あらためてその感情を持った時に初めて言語化に成功し使えるようになる。

 

これは結論から見れば同じかもしれないが大きな違いである。

 

そうなると状態としては朝比奈まふゆもミクも同じかもしれないが習得方法が別な時点で全く別存在である。

 

朝比奈まふゆの内部に存在する別人格・・・と捉えるのが正解なのだろうか。

 

難しいことを考えていくうちに思考がまどろみに落ちていく。

今日これ以上考えるのは無理だと考え、ベッドへもぐりこんだ。

 

 

目覚めていつも通りの準備と朝ご飯を食べ、家を出る。

今日も朝比奈まふゆは玄関前にいた。

 

「おはよう、まふゆ。」

「おはよう。」

 

最近では朝の挨拶以降話題がなければ何もなしに歩き何もなしに分かれる。

 

少なくとも何か話したいとは思うが彼女が何にも興味をさほど持たない以上会話は弾まない。

 

そう言えば一つ聞きたいことがあったなと思い朝比奈まふゆの方を見る。

 

「ねぇ、まふゆ。」

 

彼女の目が私を見る。相変わらず感情のない目だった。

 

「・・・なに?」

 

「昨日、まふゆが落ち着くと言っていたと思うんだけど。あれって前からどこかでおもうことってあった・・・?」

 

元から感情が発露していればきっと何もないと判別できる。

 

「・・・。多分ある。」

 

「・・・差し支えなければどんなときか聞いてもいいかな。」

 

「・・・セカイにいる時とか。あとは・・・。」

 

彼女は言葉に詰まったように黙る。

何を思ったのだろう。

 

「・・・あとは?」

 

「・・・なんでもなかった。」

 

彼女は誤魔化すようにそう言い放った。

 

これ以降、駅に着くまでその事について尋ねると無視された。

・・・恥ずかしかったのだろうか。

 

 

「ってことがあったんだけどどう思う?」

 

「MOBが悪いね。」

「MOBが悪い。」

「ごめん・・・私にはわからないかな。」

 

ニーゴの活動ちょっと前に入ると3人が揃っていたので今日の事情を話してみた所そのような反応をされた。解せない。

 

「でも、そこで言い淀んでるってことはきっとまふゆにも落ち着けるような場所があるんじゃないかな。」

 

とえななんとAmiaからダブル悪判定を受けた私をKはなんとなくのフォローに回ってくれる。優しい。

 

「しかし、MOBもここまで鈍感だったとは・・・。」

 

とAmiaが感心したような言い方をする。

 

「そう?あのかまってちゃんにしてコイツありって感じもしなくもないわよ。」

 

「えななん。それは確実に貶してるね?」

 

「そうよ。何かあんの?」

 

「・・・いや、事実なのだろうからいいよ。」

 

「・・・張り合いないわねアンタも。」

 

余計貶された。乗ったほうがよかったのだろうか。

 

「・・・まぁとにかく。雪も問題だけどMOBのそれも雪の問題の一因になってるとは思うよ。」

 

とAmiaから忠告される。まさか自分にも人の気持ちを察せないという問題があるとは思いもしなかった。

 

「・・・うん。どうにかはしてみるよ。」

 

とは言ったものの。どう直すべきだろうか。

 

その数分後に雪と合流し活動は始まった。

 

 

いつも通り活動が終わり、通話を終了させ、まふゆにセカイに行く旨のメッセージを送り、世界へと赴く。

この流れも完全に日常と化しつつあるなと思いながらセカイへ入る。

 

セカイに入ると今日は珍しく歩かずともミクの目の前に出た。

 

「こんばんは、ミクさん。」

 

「文人。」

 

今日の本の説明と明日の要望を聞く。

するとミクがその説明が終わった後に口を開く。

 

「・・・文人は恋をしたことがある?」

 

突然な爆弾だった。

 

まだ朝比奈まふゆがいないだけマシかと思い多少話す気にはなったので少し話すことにした。

 

「・・・恋かぁ・・・。したことないと言えば嘘になるね。」

 

「へぇ・・・。どんな人?」

 

朝比奈まふゆがいると思ったらいつのまにかミクの隣に朝比奈まふゆがいた。

あまりにもタイムリーすぎた。

 

こうなると話は別である。

早くこの話を切り上げなければならない。

 

「・・・まふゆ?」

 

「気にせず続けて?」

 

流石にまさに目の前にいるなんて言いたくても言えない。

 

「・・・ごめん。文人。」

 

ミクが申し訳なさそうに謝罪を述べる。

 

「あぁうん。こっちも言い淀んでごめんね。この話はまた別のときにしよう。うん。」

 

そう言って話を強引に切り上げた。

 

「・・・で?」

 

「・・・まふゆ。用事は終わったし、帰ろう?夜も深いしね。」

 

「・・・わかった。」

 

と、無表情ながらにどこか不服そうな朝比奈まふゆを宥めることに成功し、どうにか部屋へ逃げかえる。

 

 

 

夜も深いのに目が覚めて、なかなか寝れそうになかったのはきっと別件であったと願いたかった。

 

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