家の前でまふゆと別れ、自宅へ入る。
諸々の動作を経て自室へと戻り、PCの前へ向かう。
スマホを机の上に置くと、気づかないうちにメッセージアプリに通知が来ていたことをようやく知る。
送り主はまふゆだった。
『今日はありがとう』
という最初のメッセージ以降にも何件か送られている。
用件としては今日が楽しかったこと、今週中に彼女のお母さまが家族会議を行うということ。その為に指定された時間に彼女の家へ向かえという話だった。
わかってはいたがあまりにもスパンが短かった。
彼女は今日の観覧車で自分を取り戻した時、どうなるかわからなくて怖いと言っていた。
これは自我を取り戻した際に自らが消えるのではないかと考えた結論だろう。
観覧車の中では冷静に判断できなかったが、今思い出してみればそういう解釈になる。
今日言っていたことが本当ならば彼女はある程度自我の確立が出来ている。
とりあえず彼女がある程度自我を確立したということは自分で考えるということがそれなりに可能になっているはずだ。とはいえ彼女のご両親に対抗できるか否と考えたらそれはそれで別だが。
彼女が段々としっかりとニーゴとの交流の中自我を取り戻している。
ただそれだけは今彼女がご両親に呑み込まれないための必要策なのだから。
「・・・。それはまた面倒なことになったね。」
今まふゆ以外のニーゴメンバーでセカイにいる。
ニーゴにおける活動が終わり、相談したいことがあると皆をセカイに呼び、ある程度掻い摘んで今日までのいきさつを話した。
「・・・まふゆのお母さんを説得かぁ・・・まふゆ一人じゃあそりゃ無理ね。」
「なにより、私としては彼女と彼女のご両親の関係はなるべく悪くしたくない。・・・あそこから悪くなった際の結果は・・・なんとなく考えたくない。」
まふゆは一人っ子だ。そんな一人っ子が彼女の基準における「正しく育たなかった」に該当した場合の家庭関係へのダメージは計り知れない。
まぁかといって私たちの行う反抗がそれに当たらないとは言えない。
だからこれはできればという願いであり、ただの詭弁になる。
「つまり、センパイはなるべくまふゆのお母さまを折りたくないってこと?考えとしては甘くない?」
そう暁山が聞いてくる。
まさにその通りだった。
「ちょ、瑞希!?言い方きついんじゃない?」
「いいや、東雲さん、暁山。実にその通りだよ。・・・でも、なるべくあの母親が自分の間違いに気付けるようにしたいんだ。
そうなれなかったら最悪の場合どこまでもやる覚悟ではあるよ。」
・・・彼女の間違いは自分の娘に自分なりの理想論を押し付けてはいけないということだ。
まぁそれもこれも、まふゆが自分を示せないことに多少の問題があったのかもしれないがそれはそれとしてまふゆのお母さまも助長され過ぎている。
これを正せるのは、きっとまふゆの力と自我なくてはできない。
「・・・少なくとも、ボクからできることは申し訳ないけれどあんまりないと思う。話を聞いて考えを言うことくらいだけど、ボクじゃあきっとその人たちの門前払いされちゃうと思う。」
「・・・そうだね。少なくとも私も無理かも。」
「私は・・・きっと行っても何も話せない・・・かな。」
暁山、東雲、宵崎の順にそう答える。
3人からの助力は見込めないのはわかっていた。
だけど多分先に言えることは。
「・・・これから私はまふゆとの関係を断たれる可能性があるかもしれない。そんな気がする。」
「・・・。」
「だから、自惚れかもしれないけどもしまふゆがまたどうにかなってしまいそうだったら今まで通り諦めずに支えてあげてほしい。」
「・・・今更何言ってんのよ。アイツが迷惑かけてんのはいつもなんだからそんなのあんたがサークルサボった分の詫びくらいにしときなさいよ。」
「むしろ、えななん的にはまふゆが居なくなっちゃいやなんだもんね?」
そう暁山が茶化す。
「なっ!?そういうんじゃないわよ!!あいつは私のもくひょうだから・・・って瑞希ィ!」
「今のは絵名の自爆でしょ!?なんでボクを責めるのさぁ!?」
そういいながら東雲が暁山を追いかけ始めた。
「・・・いつも通り騒がしいね。」
「・・・うん。でもその方が安心できる。」
「・・・そうだね。」
「だからMOB。頑張って。」
頑張って帰って来いとでもいうのだろうか。
「・・・もちろん。」
そう言いながら言うことをまとめるために部屋に帰った。
どうにかするしかない。
約束の日になった。
時間は夕方ごろである。
菓子折りを持ち、まふゆの家の前に立つ。
深呼吸を二回ほどしてからインターホンを鳴らす。
『はい。』
「こんばんは、隣の家の森文人です。」
『あら、森君ね。ちょっと待ってて頂戴。』
そうインターホンから声が聞こえると数秒してドアが開く。
「いらっしゃい森君。皆揃っているから早くお話ししましょうか。」
「はい。ありがとうございます。お邪魔します。・・・とその前に、こちらつまらないものですが。」
「あら、ご丁寧にどうも。」
玄関先で社交辞令を行い、菓子折りなどを渡す。
玄関を通り、リビングへと歩く。
ダイニングテーブルにはすでにまふゆのお父様とまふゆが座っていた。
「あ、自由に座ってね。」
「はい、失礼します。」
そう言いながらまふゆの隣に座る。
彼女はいつも通り愛想笑いを浮かべていた。
「お父さん。私は森君から貰ったお茶を入れるから少しの間話していて。」
「あぁ。じゃあ森君。単刀直入に聞こう。先ほど聞いたんだが、うちのまふゆと付き合っているというのは本当かい?」
まふゆの方向をちらりと見る。特に反応はない。
「えぇ。違いありません。」
少し父親の顔が曇った。
「・・・どうしてまふゆと付き合ったんだい?彼女が医者を目指していたから学業をおろそかにできないというのは知っていただろう?」
少なくとも彼女の夢を一度も聞いたことはない。
小学生の頃に看護師になりたいと言っていたのは覚えているがそれ以上は聞くことはなかった。
「・・・そうなんですか?まふゆさんとお付き合いした日は浅いので互いの夢の話など小学生以降していないので医者を目指しているなんて言う話は一言も聞きませんでした。」
「じゃあそれを踏まえて今一度関係を考えなおしたりは?」
「・・・なぜそんなことを?」
「君とは違ってうちのまふゆは優秀だ。そんな子の未来を無下にしたくはないのは君だってそうだろう?」
「私と違って・・・ですか?」
「あぁ、君の成績は平凡だと妻から聞いてね。」
「そうですか。まぁ少なくとも互いに幼馴染である以上互いの人生経験を深めるという目的の下互いの好意を確認しあったうえで交際を始めたのですがそれでも許されないのでしょうか。」
それっぽいことを言い返す。
「・・・まふゆは違う人の方がいいよな?そうに決まってる。」
勝手な決めつけが始まる。
対するまふゆは、
「・・・お、お父さん。」
未だ自分の考えを言えずにいる。
この恐怖にまふゆが打ち勝つくらいではないときっとこの場はどうにかできない。
「お茶が入りましたよ皆さん。」
そう言いながらまふゆの母親が皆にお茶を配る。
「じゃあ、お菓子でも食べながら再度ゆっくり話しましょうか。」
・・・戦いはこれからである。
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