数日たっても、えななんはナイトコードに出てこない。
「・・・えななん。こないね。」
とAmiaが落ち込んだ声で話す。
「・・・どうしておまけだなんて言ったんだろう。」
「・・・。」
「えななんの絵とAmiaのMvがあるからたくさんの人に歌が届くのに。」
そうKは疑問符を出す。
・・・想像の一つでしかないがえななんの気持ちがわからないでもなかった。
創作活動という活動には少なからずモチベーションというものが必要である。
具体的には人からの称賛、または何かしらの功績として上から認められる。はたまたその創作活動がお金になるからなんて理由や、ただ単純に自分の目的や目標としてや、溢れんばかりの熱意の昇華として作品は作られる。
Kの場合には自分の歌で人を救うという決心よりそのモチベーションは保たれている。
しかし、えななんの場合には彼女は救いたいなどとは考えられないと言っていた。なにより、Amiaのはつげんなどから察するに彼女のモチベーションは誰かからの称賛だろう。
見てもらえる、認められるというのはたとえ軽い気持ちで始めても大きなモチベ―ションになりうるからだ。
そこがKとえななんの認識の違いであり、誇りの違いである。
自分の絵を認められたいという理由のえななんと誰かを救うという理由のKではその意志の強さが全然違う。
失礼な言い方をすればえななんの方がその意志は弱いと言えるだろう。
動画のコメントを改めて見返すと意外と絵を描いてる人自体はどうでもいいかなというコメントがあったのをちらりと見た。
きっと彼女は絵のコンクールでいい成績を残せなかった挙句、そのコメントを見てあぁなったのだろう。
人に褒められないことは彼女にとってのモチベーションの低下に直結する。
それがきっと今回の彼女の暴走の原因ではないだろうか。
「え?そう?」
とAmiaが照れ臭そうに返事をする。
「うん。えななんとAmiaが入ってくれてからの視聴回数は目を疑うほど伸びたよ。」
「絵があるのとないのとじゃ、理解できる範囲がきっとある方がひろがるからだろうね。」
「そうだよ。歌の世界観を一目でわかるようになることで歌はよりたくさんの人に伝わるようになる。・・・だからおまけだなんて思って欲しくない。」
そうKは力強く語る。
その声にはえななんの力は絶対に必要だと雄弁に語っていた。
「うん。やっぱりえななんともう一度話そう。なんであんなことを言ったのかはわかんないけど。わかんないなら話した方がいいって思うんだ。」
そうAmiaが提案する。
「うん、そうだね。」
「MOB。えななんはこの前セカイにいたの?」
とKから賛同を得たAmiaがえななんの居場所を私に聞いてきた。
「・・・確かにいたよ。一人になりたいとは言ってたけどね。」
「そっか・・・まぁとりあえず皆で会いに行ってみよう!」
「・・・私も行っていいのかな。」
「・・・雪?」
「私にはえななんがなんであんなことをしたのか、私にはわからない。何より、行っても事態を悪化させるかもしれない。」
雪は自分なりにえななんの気を遣っているのだろうか。
雪は遠慮がちにそう言った。
「・・・多分大丈夫だと思う。えななんの虫の居所が悪かっただけだよ。」
とKが雪に呼びかける。
「うん。きっとそうだよ!一緒に行こう!雪!」
「・・・わかった。」
「・・・うん。」
そう会話を済ませると皆で数分後に入ってくるようにと約束を取り付けて皆でセカイへと向かった。
セカイに来ると既にまふゆも暁山も宵崎もミクと会話していた。
「お、文人も来たね。それでミク。絵名は来てる?」
そう暁山はミクに対して問いかける。
ミクは少し戸惑った顔をした後に口を開く。
「うん。いるよ、でも・・・」
いるということは確定していたが彼女はそれ以上を言うのは躊躇しているようだった。
やはりこの前からずっと彼女は誰にも会おうとしていないのだろうか。
「やっぱりきてたんだ!良かった。じゃあ皆で会いに行こう!さっき話した気持ちを絵名に伝えよう!」
「うん。そうだね。ミク、どこにいるのか教えてくれる?」
「・・・今は話せないと思う。ひとりになりたい、誰も会いたくないって言ってたから。」
そうミクは意を決したように話す。
やはり彼女は今は一人になりたいというスタンスを続けていた。
「会いたくない・・・。絵名、そんなに・・・。」
宵崎は少し落ち込んだようにそう呟く。
「・・・でも、まだわかんないよ。もう一回ちゃんと会って話さないと・・・!」
「・・・やめておいた方がいいと思う。絵名は前の私みたいにひとりになりたいからここにいる・・・と思う。」
まふゆが口を開く。彼女だけが語れる経験則のようだ。
そういえばそんなこともあったなと思いながら腕を組む。
「あ・・・」
「そっか。まふゆもそうだったもんね。」
そう二人はハッとしたような発言をする。
「・・・でも私は奏に見つけてもらった。文人に引っ張られた。だから、こうしていられる。」
まふゆがまふゆなりに仲間のことをしっかりと考えている証拠だった。
昔よりかなり変わったなと思いながら宵崎の方を見るとやはり考え込んでいた。
暁山はそうしようかとうんうんと唸っていた。
「・・・でも、きっとここにずっといるんじゃ何も変わらない。」
そう思った言葉が私の口からこぼれる。
「うん。私もそう思う。・・・ミク、やっぱり絵名に会いたい。絵名の力になりたい。」
そう宵崎はまっすぐミクを見据えて意思を伝える。
彼女らしいまっすぐな思いだ。
「へぇ・・・そんなに助けたいんだ?」
と急に背後から声がした。
バッと振り向く。
他の皆も同様に振り向く。
「じゃあ、私も手伝ってあげるよ。」
振り向いた先にいたのは少し薄汚れたリボンをした、金髪の少女だった。
宵崎や暁山は目の前に起きている出来事が現実か疑っているかのような眼をする。
「あなたは・・・リン!?」
「セカイにいるのってミクだけじゃないんだ・・・。」
「ううん。今までは私だけだった。でも・・・」
と言いながらミクはまふゆの方を見る。
「・・・少しずつこのセカイが変わり始めてる。かもしれない。」
「・・・少なくとも悪い事じゃないんだよね・・・?」
と暁山はうーんと少し考え込む
「そうかもね。」
とリンはそっけなく返事をする。
「そっか、よろしくね。リン。」
「うん、よろしく。・・・でもどうやって助けるの?会いに行っても、その子が一人になりたいなら逃げられちゃうかもしれないでしょう?」
正論だった。
だが、方法がないわけじゃない。
「逃げるなら、あっちから来てもらえればいい。」
「え?」
そう暁山が少し不思議そうな顔をする。
「・・・逃げられちゃうならあっちから来るように何かで引き寄せればいいんじゃないかな。」
と答えてみる。問題はその為のものだが。
宵崎はすでに覚悟を決めているようだ。
「・・・うん、できるよ。それに・・・私にできることは一つしかないから。」
そういうなりセカイから戻り作業をすると言い、宵崎は姿を消した。
「行っちゃったね。」
とリンは呟く。
「・・・うん。こうしちゃいられない。ボクも作業に戻るよ。」
「ごめん。私はもう寝るね。」
とそれぞれやることを口に出すとセカイから部屋へと帰っていった。
ここに残されたのはミクとリンと私だけだ。
「・・・帰らないの?」
そうリンに聞かれる。
「・・・そうだね。もう少しここにいようかな。」
「・・・文人?」
悔しかった。
生憎と自分には何の芸術的才能がない。
故にこの件では絵名の力になれるようなことはきっとできない。
ただ手をこまねいてこの話の行方を見守ることしか自分の立場上でも、自分の能力でもできそうにない自分がただひたすらに悔しかった。
なによりも絵名の境遇を少し理解できてしまうからこそ、悔しかった。
無才と自分を呪った者としての境遇を。
「・・・。悔しいなぁ。」
誰に言うでもなく、つぶやいた言葉は灰色のセカイへと消えていった。
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記念枠(内容は今のところ決めてないです)
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えなイベ