4分33秒のソナタ   作:かしうり

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対峙、および承認される才能

「やっぱりえななんがいないと静かだね。」

 

未だナイトコードにえななんの姿はなかった。

Amiaは気を遣っているのか寂しいのかわからない沈黙に耐えられなかったような発言をする。

 

「・・・そうだね。」

 

「・・・ほんとに大丈夫かな・・・えななん。」

 

KもAmiaもえななんを心配しているような声を出す。

 

あれ以降、セカイには行っていない。

1日ほどたったがそれっぽい結果も見えていない。

しかしこれ以上するべきことは多分ない。

 

「こっちでやれることは限られてるから待つしかない・・・のが歯がゆいね。」

 

と、そんな会話を繰り広げていると唐突にパソコンの画面にミクが映し出される。

 

「うわっ!びっくりした~。ミク、どうしたの?」

 

そうAmiaがややオーバーにリアクションする。

それに返答はせずミクは口を開く。

 

「・・・皆、セカイに来て。」

 

今までこういう風にミクが干渉してくることはなかったがために少し驚いた。

余程状況が動いたのだろうか。

 

「・・・え?」

 

「もしかして・・・えななん。」

 

「・・・行こう。」

 

というKの合図とともに皆でセカイに潜る。

 

 

全員同じような位置に出てきてまず目にしたのは東雲だった。

 

「・・・絵名。」

 

「絵名、大丈夫?」

 

そう宵崎と暁山が心配そうに尋ねる。

 

「・・・うん。皆心配かけてごめん。奏もあのうた、ありがとう。」

 

あの歌とはきっと宵崎がリンに渡した曲だろう。

とてつもない速さで彼女がメロディを作り、リンに渡していた。

 

「うん。絵名に聞いてもらえてよかった。」

 

「あの歌、絵名の為に奏が作ったんだよ。すっごい勢いでガガってメロ作ってびっくりしちゃった。」

 

そう暁山がややオーバーに表現する。

 

「早く聞いてもらいたかったから。」

 

宵崎はここにいるだれよりもきっと東雲のことを心配していた。

それがその言葉が偽りでないことの証明だった。

 

「そっかぁ。奏の作る歌は優しいね。・・・すごく優しくて、胸が痛くなって。この気持ちをどうにかして表現したいって、そう思えたよ。」

 

「よかった。・・・だから絵名にあの歌に絵を付けて欲しい。・・・絵名があの歌にどんな歌に絵を付けるのか・・・見たい。」

 

宵崎はまっすぐに絵名の目を見据えてそう話す。

彼女はなによりも他人への自分の想いをまっすぐに伝える。

それが彼女が人を巻き込む力なのだろうなとぼんやりと考える。

 

東雲はしばらくうつむいたまま黙り込む。

 

数分してようやく口を開く。

 

「私も・・・描きたいよ。でも怖いの。」

 

「怖い・・?」

 

「いくら描いても誰にも認められなくて。・・・ずっと絵を描けてる気がしなかった。」

 

彼女はぽつぽつと自分の想いを語りだす。

「ニーゴで描いた絵にはそこそこコメントもついてたから少しは認められてると思った。でも結局その絵もニーゴのイラストっていう肩書がないと誰も興味を持ってくれなかった!私を認めてるわけじゃなかった!」

 

彼女が欲しかったものは自分への承認だった。

自分のやる活動には意味があると、認められていると考えないとやっていけなかったのだ。

 

「そんなこと・・・。」

 

宵崎がそう言葉を溢す。

 

「昔、親にも言われたの。才能がないって。すごく悔しかった。でもそんなことないって思いでずっと描いてた。」

 

「・・・。」

 

「でも、アイツの言う通り 悔しいけど・・・私には才能がなかった。だから誰にも認めてもらえない。・・・だから私が絵を描く意味は・・・。」

 

ない、とそう言いたいのだろうか。

 

・・・そもそも疑問として、本当に東雲に才能はないのだろうか。

あれだけ様々なところで絵に関する絶賛を受けて、人に感銘を与える絵を作るような彼女に才能はないのだろうか。

 

私にはそうは思えなかった。

 

「いや、違う。そんな風に思っちゃう自分が嫌。誰かに認めてもらわないと描けない自分が、大嫌い・・・!」

 

涙を流しながら彼女はそう叫ぶ。

承認されないと続けられないもののそれを永遠と嫌悪する。

あまりにも悪循環だ。

 

「・・・絵名は才能を持ってないっていうけどボクはそう思わないよ。」

 

数分経ってそう暁山が東雲に語り掛ける。

 

「・・・慰めならいらない。」

 

「そんなんじゃないよ!絵名の言う「誰か」はみとめてくれないかもしれない。でも少なくともボクは絵名の絵が好きだよ。」

 

「・・・。」

 

東雲は顔を上げる。

 

「・・・そうだね。それに私は絵名が誰かに認めてもらわないと描き続けられない人間だとは思わないよ。」

 

「え・・・」

 

東雲が少し呆けた顔でそう発言した宵崎の方を見る。

 

「だから私は絵名の絵に惹かれたし、ニーゴに誘った。・・・絵名。絵名の絵がニーゴには必要だよ。私が認める。」

 

そう力強く宵崎は東雲を肯定する。

 

「そうそう!絵名の事は誰よりもボクたちが認めてるよ!」

 

「ね!まふゆ!文人!」

 

そう暁山がまふゆと私に賛同を求める。

 

「・・・そもそも題名やテーマのない絵の方が魅力がないと思うんだ。絵は何かしらを表現するために描かれるんでしょう?」

 

「・・・。」

 

東雲は黙り込む。続けろということだろうか。

 

「リンゴの絵は林檎をモチーフにして描かれるように。絵はなにかをイメージして描く。そして見た者はその絵にそって解釈を行う。・・・だから東雲のその考え方は何を描いているのかわからないと言われてから考えるべきことだと思う。

・・・なにより、私も暁山と同じように東雲に才能がないとは思えないよ。まぁ、もし無いにしても、『ニーゴのイラスト担当』としてやってきた東雲の努力の結晶は誰も否定できない。」

 

それは努力したという才能へと昇華される。

 

「・・・だから?」

 

「前にも言ったけど才能を持って認められた人間にも責務がある。・・・少なくとも私は東雲の『ニーゴのイラスト担当』として才能があるのを認める。・・・宵崎も暁山もまふゆもそうだと思う。だから、君はその才能を使う責務があるんだと思うよ。・・・認められない奴じゃなく、認められた人の為にね。・・・才能がない凡庸の私よりよっぽどそうすべきだよ。」

 

思わず自虐が出てしまう。

 

・・・正直に言えば私は東雲に嫉妬していた。

才能を持つゆえの悩み。認められないなら作る意味なんてあるのかなんて言う言葉は作れない人にとって一生たどり着くことのできない悩みだ。

故に彼女が少し許せなかった。

 

そんな贅沢な悩みをする彼女がうらやましかった。

 

「・・・MOB・・・?」

 

「あぁ喋り過ぎちゃったね。ごめん。」

 

訝しげな眼を東雲から向けられるが強引に流し、まふゆの方を見る。

 

「・・・ねぇ絵名。」

 

まふゆはいつもと同じように、だが少し不思議そうな表情を浮かべる。

 

「・・・な、なによ」

 

「認めてもらいたいことの何が悪いの?」

 

「は?」

 

「まふゆ・・?」

 

東雲と暁山が焦ったように反応する。

 

「その誰か認められるまで続ければいいじゃない。認めてもらえるまで足掻き続ける。・・・私たちはこれからも作り続けるんだから。」

 

そうまふゆは何とも言えない表情で言い放つ。

そしてちらりとこちらを見た。何の意味があるのだろうか。

 

「・・・はぁ。そんなこと簡単に言わないでよね。」

 

と東雲はため息をつく。

 

「でも・・・そうだね。ぐちゃぐちゃ考えすぎなのかも。描くよ。・・・うまく描けるかわかんないけど。」

 

「・・・絵名。」

 

張りつめていたその場の空気が和む。

 

一件落着、と言ったところだろうか。

 

ひとまず東雲は部屋を片付けると言いセカイから去っていった。

 

それにつられるかのようにそれぞれがセカイから去る。

 

 

それからナイトコードにえななんが現れるのは夜明け前の事だった。

 

記念枠もしくはイベント部分について

  • 記念枠(内容は今のところ決めてないです)
  • えなイベ
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