4分33秒のソナタ   作:かしうり

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(12月16日)細かな設定違いがあったので直しました


問答、および自己実現のプロセス

暁山瑞希は天馬君を知っていた。

しかし名前を出した途端ドン引きされた。私が何をしたというのか。

そして彼はかの暁山瑞希にドン引かれるような脚色で私の事を言ったというのか。

場合によっては彼を誅する必要があるかもしれない。

 

「ちなみにどんな人物像として神代君から言われてたか教えてもらっても・・・?」

 

「本当に嫌いなことはしてこないけど分水嶺ギリギリを時に攻めてくる悪魔・・・って言ってたって言ってた。」

 

よし、後で天馬君にはあの実験で余ったお菓子を3個ほどプレゼントしてすぐに食べてもらおう。そうしよう。

 

「・・・なるほど。ちなみに具体的には。」

 

「日本一まずいお茶を朝一番に飲まされたって言ってたかな・・・。」

 

甘いお菓子の後のお茶もセットだ。喜ばしいな天馬君。

 

「あぁもう・・・。あれは試験的であって別に嫌がらせではないと言ったのに・・・。」

 

「試験的っていったい何しようとしたのか教えてもらってもいい・・?」

 

まぁ終わったことだ。いってもいいか。

 

「あぁ。幼馴染が好きなもの、嫌いなものがわからないっていう回答を至極真面目にしたから味覚があるのか試したかったんだ。それでとにかく苦いお茶を頼んだけれどとりあえず本当にそのお茶が苦いのか試したいだろう?自分で飲んで確認した後天馬君辺りなら疑いなく飲んでくれそうだから飲ませたという訳さ。」

 

暁山は天馬君とかかわりがあるが私とは関わりがない。なら多少愚痴にでも付き合ってもらっても問題はないだろう。どうせ明日からは会わない。

 

「・・・嫌いなものがわからない・・・。」

 

「らしいよ。実際に彼女は苦みを理解することはなかった。好きも嫌いも、何しろ自分がわからない、とまで言っていたね。」

「彼女の環境がそうさせた、としか言えなかった。まぁ私もその環境の中の一人だ。半分くらいは私も彼女を追い詰めていたと言っても過言ではないのだけれど。」

 

「・・・。」

 

「今やもう彼女にとってはどうでもいい、と言っていたよ。彼女の改善を図ろうと1度は試みたが駄目だった。・・・どうにもならないのかな。」

 

空を仰ぐ。彼女をどうにか出来る術があるなら彼女がやるまで何度だって試そう。

 

だが彼女に拒絶されるのは嫌だ。彼女がそう願ったならそうさせてあげるべきだ。

という言い訳はいくらでも出てくる。

どこまでも私は愚かな人間らしい。

 

そんなことを考えたって()()()()()()はどうにもならないのだ。

 

「なんだかギャグから恐ろしくシリアスな話になってしまったね。もう少し面白い話のほうがよかったかもしれない。」

 

暁山瑞希は閉じていた口を開いた。

 

「その子、()()()()って言ってなかった?」

 

「消えたいとは言ってなかった気がするよ。ただ、もういいと言っていた。

どうでもいい、例え誰かといて自分を見つけられなくて失望するのに疲れてしまった・・・と言っていた。そういう意味では彼女は消えたいと言っているかもしれない。」

 

今その帰結にたどり着いても彼女のことをどうすることもできないのではないだろうか。

彼女が諦めてしまった今、もう何もしてやれない気がした。

 

「先輩は。」

 

「なんだい。」

 

「その子をどうしたいんですか?」

 

どうしたい、という疑問に私はすぐに答えを出せない。

私は彼女とかかわっていく中で彼女の原因を取り除くために彼女が積極的に行うことを促してきたが駄目だった。彼女が動かないことには何もできないと思っていた。

私の中で私の意思は無きものとしていた。

ただどうあっても彼女が自分を確立できないと自暴自棄になって死ぬのだけは防ぎたかった。

 

ただ、私は彼女を―

 

「人間は一人じゃ生きられない。自分を自分だけで見つけるなんて不可能だ。

だから彼女には諦めさせたくない。人といることを。人と自分を見つけることを。

 

その隣にいるのが私じゃなくてもいい。例え誰であってもいい。

ただ彼女は今絶対に誰かに寄り添わないと生きていけない。

 

かくいう私もそうだ。きっと私も誰かがいないと生きていけない。

だが私の誰かはきっと朝比奈さんただ一人しかいない。

私は自分の平穏のために。彼女のために。

 

 

いつの日か心から笑って生きてほしいんだ。」

 

何ともクサい発言だろう。だがこうとしか言えない。

この心()()は偽れない。

私にとって彼女は必要である。長年生きてきた中で彼女との交流はそれこそ少なかったかもしれないが損得勘定抜きであっても平々凡々な私が例えなんであっても才色兼備な彼女を指針としているのは間違いなかった。

 

「ならその言葉、その子に伝えなよ。ボクに言ってる場合じゃないと思うよ。」

 

「あぁ、まったくもってその通りだ。今すぐにでも彼女のところに行って伝えるよ。」

 

「うん。そうしたほうがいいよ。」

 

「ありがとう暁山さん。うまくいったら・・・お礼は後日させてくれ。」

 

「うん。うまくいったら教えてよ。忘れないでよ?」

 

来た道を戻る。朝比奈まふゆの連絡先を探し出し、もう一度話したいから会わせてくれないかと連絡をする。

かえってこなくても構わない。無理にでも会うだけだ。

 

何を伝えるべきかもわからない。あっても何も話さず追い出されるかもしれない。

なら紙に書き起こそう。媒体にも残そう。やりようはいくらでもある。

 

 

―彼女が生きてくれるのだったらこの命すら投げ出して見せよう―

 

 

そう思いながら、来た道を全速力で戻り、紙に文をしたためた。

 

待つ場所は朝比奈まふゆの家。

 

 

 

どうあっても、後悔しないために。

 




次回からまふゆさんが出ます。ご勘弁を。

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