しかし、Zシリーズのスパロボの設定って、神座万象シリーズと絡められそうな気がしてならない。太極とか次元力とか、まんまじゃんとか思う人は私ひとりじゃない筈。
――――最近、ジークの様子が変だ。
それがここ最近、私を悩ます要因だ。
あの、無愛想で、鉄面皮で、寡黙な、鋼の様な彼女の様子が、おかしいのだ。
切欠は、わかる。
ここ数日、彼女と、そして私を含めて何かがあったとするならば、それはあのガジェットドローンとかいう自動機械の襲撃、それに間違いない。
何せ私と彼女は、一つ屋根の下に住んでいると言っても過言ではない。
そう書くと、何やら私と彼女がいかがわしい関係になっているかのようだが、それは違う。
――エレミア。
古代ベルカ、それを今に受け継ぐ血の一つ。
血と、力と、技と、戦いの記録を連綿と受け継ぐ一族の名。
ジークに、初めて出会ったその時から備わっていた超絶の武威は、恐らくそれが根幹にあるのだろう、そう、思っていたけれど、どうやら違うみたい。
出会いからしばらく、曲がりなりにも私は育って、背も高くなってきて、だからだろう、聞こえたくもない騒音も耳に入るようになってきた。
曰く、異端。言い方は様々だったけど、一言でまとめるならそういう感じ。それがエレミアの家からジークに下されている評価。
勿論、そんなものは気に喰わない。当然だ、友達をけなされていても平然としていられるほど、私の神経は図太くない。けれど――
――近い分、よく見えるのだろう。
――故にわかるのだろう、
彼女は、そう言ったきり。
それでいいのか、と問いかけて、返ってきたのはその言葉だけ。そして、さしたる問題でもない様に振舞っていた。
虚勢を張っているのか、とも思いはしたけれども、そんな薄っぺらな行為は似つかわしくない。なら、本当に彼女は気にしていないのだ、身内から突きつけられる一切を。
そんな些少な悪意の悉くは、彼女の鋼の心を傷つけるには至らない。なら、私が右往左往していても仕方がない。
仕方がない、とは思いつつも、だからと言って何もしないのは、違うと思うのだ。
ここ最近私が特に多く、彼女に模擬戦の相手を頼みこみ、お礼と言ってエドガーの作る夕食を振舞わせるのは、そういう理由もあったりする。それでこう告げるのだ、――――今日はもう遅いから、泊っていかない? と。
うん、我ながら至極単純すぎると思う。冷遇されているから、自分の家に誘うだなんて。
そして決まって、私がそうした時のジークは、仕方がないな、とか思っていたりするのだ。表情は変わらないけれど、そんな気がする。
――話がそれた。
そんなわけで彼女は基本、自ら動きを見せるということは、まずない。話しかければ言葉少なに応えてくれるし、相手もしてくれる。
けれど、そう、自己で完結しているから、外に漏らす余分がないのだろう。印象としてはそんな感じで、だからこそ、些細なことであっても私には、結構心揺らがせる大事件だったりするのだ。
現在、私の対面に座り、黙々と朝食をとる彼女から目を離せないくらいには。
傍目には変わっていない様に見える。
――まるで、鋼のよう。
今までの彼女が、鋼の、金属の冷たさを纏っていたとするならば。
今の彼女は、エンジンに火が入り、熱を持った鋼のよう。
表情とか、仕草とか、そういう物は変わらないけど、その内側ががらりと変わっているように感じるのだ。
果たして、この前の襲撃に何を感じ、何故切り替わったのかを聞き出したいのだけれど、どうせきっと、「何でもない」の一言で済ませるんだろうなぁ……。
そう告げる想像の中の彼女が、やけに鮮明に脳裏に映しだされる。
「ねぇジーク、最近様子がおかしいのだけれど、どうかしたのかしら?」
「……何でもない」
ほら、やっぱり。
想像は想像だと言い聞かせて、口を開いて聞いては見たものの、結果はこの通り散々だ。
「嘘よね、それ」
「……」
「思うのだけど、ジークって嘘が下手よね」
「……生憎と、嘘を付けるような境遇には縁がなかったのでな」
だって嘘というのは、他人に何がしかの干渉をしたいからこそ行う行為。だったら、この、愚直な前進こそが似合いそうな彼女が、そういうことをするとは思えない。おまけに、そう言ったやり慣れていない行為を、いきなり平然と行える様な器用さが、彼女にあるとも思えない。
「じゃあ、認めるのね。――何かがあった、って」
「だからと言って、お前に話すつもりはない」
「ジークの頑固者」
「どうとでも言え」
「無愛想、鉄面皮、根暗、口下手、え~と、あと、その、馬鹿っ」
「気は済んだか。ならばこの話はこれで終わりだ」
なんという難攻不落。鋼鉄でできた城塞のよう、取り付く島がないとはこのことか。果たして私のこの難関を突破できるのか、……うん、全く自信がない。
恐らく、ジークの中に何かの変化をもたらした何かは、あくまで自身の問題だと認識していて、だからこそ話す必要など無い、とか思っていそう。
「――って、何処に行くの?」
「野暮用だ、今日は帰らん」
そう言って朝食を食べ終わったジークは、コートを羽織りながら外出を告げて来た。
いきなりの言葉に私が二の句を告げずにいると、そのまますたすたと歩き去っていく。
「じゃあ、何処に行くのかだけでも教えなさいよ」
「――教会騎士団だ」
「何でまたそんなところに……、知り合いでもいるの?」
「少し前に
その時ジークの表情に浮かんだのは、嫌悪というには薄過ぎて、面倒くさい厄介な手合い、といった感じだった。
■■
「――――ん? ジークリンデ、ようやくその気になってくれたのか?」
その面倒くささ、或いは厄介さという物を、私は教会騎士団の隊舎に着て早々、ジークが目当ての人物を見つけたことによって理解した。
桃色の長髪にモデルと見紛うばかりに凛々しさと色気を同居させた体の持ち主、そして教会騎士団ではなく管理局の制服を隙無く着こなすその女性の名を、私は知っていた。
最古にして最新の夜天の王、その下に集うたった四人で構成された騎士団<
直接の面識はなかったが、教会や管理局の広報活動や、人伝に流れる噂でその存在は知っていた。成程、確かに、噂に違わぬ古強者のよう。例えるなら正しく一本の名刀の様な強さを感じさせる人だった。
「来て早々、それか。その気にはならんと前にも言った筈だ」
「そうはいってもだな、お前のような奴はなかなかいないぞ」
「騎士団の連中にも相応の手練はいるだろう。それで我慢をしておけ」
「確かにいるが、謂わばあれは平時の強者、お前の様な戦場の強者はなかなかな……」
だけど、そんな刃金の様な彼女はジークにご執心のよう、しかも会話から察するにかなり剣呑な方面での執心を抱いているみたいだ。
けれどシグナムさんのジークに対する評価には、私も納得する部分がある。戦場の強者、確かにぴったりな表現だ。
「模擬戦程度の相手ならば、務めるのは吝かではないがな」
「ほぅ、二言は無いな」
「お前がその程度で本当に収まるのならばな」
「うっ……」
「興が乗り過ぎて刃が滑る、などということは御免だぞ。俺と貴様の戦いだ、そうなってしまえば目も当てられん。後始末が面倒だ。――――平穏で刃が鈍る感覚を忌避する心情は理解できるが、それを制御してこその戦士だろう。化け物に成り果てては意味がない」
「くっ……」
いつもと比して饒舌なジークの言葉が、的確にシグナムさんを追い詰めていく。
どう見たところで形勢は明白、しかし、いつまでも私を置き去りにされて会話を進められるのは癪だった。二人の会話から察するに、二人がどういう間柄なのかは察することができるけど、詳しいところも知りたいし。
「ねぇ、ジーク」
なので私は口を開き、二人の会話に楔を打った。
「む、すまない、初対面だというのに碌に自己紹介もせずに話しこんでしまったな。時空管理局のシグナム二等空尉だ」
そこでようやくシグナムさんは私の存在を認識したらしい、それほどまでにジークに対してご執心なのだろう。少しだけ頬を赤らめながら遅きに失した自己紹介を始めてくれた。
「初めまして、ヴィクトーリア・ダールグリュンと申します。……ところで、シグナムさんはジークとはどういった知り合いで?」
「私は聖王教会とはいろいろ縁があってな、定期的に教導を行っているのだ。教会騎士団といえども正当な古代ベルカの戦技を受け継いでいる者は少ないのでな、管理局としてもそうして教会に恩を売れるのならば是非も無し、そうして幾度か教導を行った際に、同じく教導役として呼ばれたジークリンデと出会ってな、一度古代ベルカ同士での戦闘がどういうものかを見せる、という名目で戦ったのだが……」
「あぁ、それで決着がつかなかったんですか」
「うむ、剣と拳、使う得物の差など意に介さない戦いを繰り広げたのだが、……そこでジークリンデがいきなり負けを認めたのだ」
「負け、ですか」
「あぁ、曰く、これ以上は試し合いでは済まなくなる、殺し合いだとな」
「もしかして、――俺の拳はそこまで軽い物ではない、とかも言っちゃったりしたんじゃないんですか?」
「フフッ、よくわかるな、その通りだ」
「えぇ、伊達にジークの幼馴染はやっていませんもの」
そんなやり取りを繰り広げる私の横で、ジーク少しだけ、その無表情を硬くしたような気がした。
「――――本題に入らせろ。そのような戯言を交わすためにここに来たのではない」
「だろうな、わざわざ私の予定に合わせてここに来て、私に会いに来たのだからな。それほどまでに内密に進めたい話があるのだろう?」
「待て、ならばさっきのやり取りはなんだ」
「さぁ、なんだろうな」
あ、この人凛々しいみた目をしているけど、結構悪戯好きというか、冗談も口にする人らしい。
そんな彼女に、ジークは溜息を一つ。そして、
「ガジェットドローン、貴様も知っているだろう」
「む? 確かに知ってはいるが……」
そうしてジークが語り始めたのは、やはりというかこの前のガジェットドローンの一件、管理局には当然通達した情報だけど、流石に広範囲にわたって発生している案件だから、ジークが関わっていることをシグナムさんは知らなかったようだ、驚愕の表情を浮かべつつ、ジークが語る事件のあらましを聞いていた。
とはいえ、襲撃された、それを大過なく撃滅した、その程度で済んでしまう様な一件だ。語ることは少なく、口下手なジークであっても早々に語り終えるほどに。
「この一件、犯人の目星は付いているのか?」
「無関係の民間人に、捜査情報を漏らすと思うか? 無作為の襲撃に巻き込まれた、それだけの関わりしかないお前に」
一転して、二人の間に横たわるのは沈黙だった。シグナムさんの視線が射抜く様にして、ジークの真意を見定めようとし、その視線をジークは鋼の様な頑健さで弾き返していた。
互いに一歩も譲らぬ空気を作り出し、私はまるで重力が増したかのような錯覚に囚われていた。
果たして、どちらが先に根をあげるのか。そう、思っていた矢先のことだった。
――――いきなり頭上に陽の光が差し込んだ。とてつもない轟音を伴いながら。
沈黙を破ったのはジークでもシグナムさんでもなく、教会騎士団という、半ば治安維持組織に近い性格の組織の拠点に、災禍を伴いながら乱入してきた第三者だった。
■■
同日同時刻、ではなく、その直前。
「……わざわざ呼びだして、何の用だ」
「少しばかり、頼みごとがしたくてね」
地の底、暗い穴倉の奥底で、二人の男が向かい合っていた。
一人は薄汚れたコートを羽織った偉丈夫。片手にアームドデバイスと思しき槍を握りしめ、ただの立ち姿にも隙一つ見せぬその振る舞いは、武人という印象と、対面に立つ人物を警戒しているという印象を与えている。
対して、その警戒を向けられているもう一人の人物は、白衣を纏った学者風の優男。無雑作に整えられた紫の髪の奥に、狂気を滲ませた金色の瞳が見える、そういう男だった。
「レリックが絡まぬ限り、互いに不可侵を守る、そういう約定の筈だ」
「そう、そうとも、そういう約定だとも。君は君の正義にかけて私という存在を看過できない。こうして曲がりなりにも会話ができているのは、彼女という枷を君に掛けているからだ」
瞬間、コートの男が握る槍が、闇を、空気を、音を切り裂いて振るわれ、されど薄皮一枚切り裂くことなく白衣の男の首筋に突きつけられた。
「――――こうして、無傷で済んでいられるのがその証拠だ」
「戯言はそれだけか、道化」
「いやいや、これは確認作業だよ。君の本質はそういうものだという、ね」
白衣の男の弁舌を止めない。滔々と、首筋に突きつけられた刃金の鈍い輝きなど意に介さず。
「私には管理局よりも最高評議会よりも、ましてや聖王教会よりも目障りな奴がいてね、そいつは私にとっては到底受け入れられぬ存在で、そいつが私の放った玩具を無断に使い、何やら蠢き始めている。それが気に喰わない。故に探り出して消してほしい。相反する存在だが、君の様な人物から見れば外道に変わりないだろうからね」
「その言葉を素直に受け入れるとでも思うのか、お前は」
「勿論報酬はある。例えば、――――君の知らないレリックの所在、とかどうだろう」
白衣の男が口にしたのは、コートの男にとっては致命的とも言える弱所だった。
死に損ない、外道に手を貸し、それでもなお成し遂げなければならない目的の一つ。それを突きつけられたのだ、コートの男にできるのは、苦渋の表情で切っ先を下げ白衣の男の依頼を受け入れることだけだった。
「……それで、貴様が排除したい人物とやらは、一体誰だ」
「■■■■・■■■■■■■さ」
「何!?」
突きつけられた名前は、あり得ざる名前だった。白衣の男の口からは、絶対に出ない名前であった。
え~、実を言うとStrikerSの時代では、あまりTV本編のキャラは出さず、その裏側で進行させようかな、とか思っていました。
それは今でも変わっていませんが、しかし、ジークリンデinマキナ卿が主人公なのに、ぜストを絡めないのってもったいなくね? とか思っちゃったわけですよ。なんせ生ける屍そのままの御方ですから。