昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 作:ゆーじ(女神候補生推し)
「ところで今日は何の話なんですか? 女神候補生のアタシ達まで呼ばれるなんて……」
話が一段落したところで、ノワールの隣に座っていたユニが質問をする。
「ユニちゃんがネプギアの嫁になるって話だよ!」
ネプテューヌがドヤ顔でユニに向けてとんでもないことを言いだす。
「「えええええ!?」」
驚きで目を丸くするネプギアとユニ。
「えー! ユニちゃんだけズルイわよ!」
ネプテューヌに対して、ブランの隣に座ってラムが割って入ると、「わたし達もネプギアちゃんのお嫁さんになりたい(うるうる)」それに合わせるようにロムが訴えかけるように言う。
「勿論、ロムちゃんもラムちゃんもどーんと来いだよ」
ネプテューヌは胸を叩いて、二人の要望を聞き入れると、ラムはバンザイして、「やったー!」と言い、ロムは両手を祈るように組んで、「うれしい……(にこにこ)」と言う。
「お姉ちゃん…私の意思は?」
「そんなものはない!」
当人であるネプギアが至極当然なことを言うが、ネプテューヌは即座に切り返す。
その様子は見事な髭を持つ某武将のようだった。
「妹の結婚相手は姉が決めるって法律で決まってるのー! これはゲイムギョウ界の六法全書にも書かれてる一般知識だよ? よく勉強しとくように」
ネプテューヌは右手の人差し指を上げて、さも当然のように説明すると、「え……そうなの? 知らなかった……私、司法には詳しくないから」とネプギアは素直に納得してしまう。
「なに信じてるのよ! そんなのある訳ないでしょ!」
ユニは信じかけているネプギアに対して、素早くツッコミを入れる。
「……そんな法律いつ決まったのよ……」
ノワールが呆れながらそう言うと、「今さっきわたしが決めた! 女神こそゲイムギョウ界の法律! つまりわたしこそルール!」と言ってネプテューヌは椅子の上でサタデーナイトフィーバーのポーズをする。
「じゃあ、わたしは反対するわ」
「わたくしも反対ですわ」
「当然、私も反対」
しかし、ブラン、ベール、ノワールが次々と反対してくる。
「えー! みんなノリ悪いよー」
ネプテューヌは目をバッテンにさせて腕をバタバタさせて駄々をこねる。
「ノリで法律を決めないで下さい。と、言うか同性婚と重婚は違法です」
しかし、イストワールが冷静に宥めてくる。
「ホーリツとかよく分からないけど、ネプギアと結婚しちゃダメなの?」
ラムは残念そうに首を傾げると、「わたし、ユニちゃんとラムちゃんと一緒にネプギアちゃんと結婚したかったのに(しょんぼり)」とロムも心底残念そうに肩を落とす。
「おままごとと現実は違うのよ」
ブランは、そんなロムとラムを窘めるように言う。
「まったく……子供達をからかって遊んでるんじゃないわよ」
ノワールはネプテューヌを責めるように言うと、ブランが、「イストワール、これ以上脱線しないように話を進めてちょうだい」と言い、ベールも、「ネプテューヌが話し出すと話が先に進みませんわ」とイストワールに言う。
「わかりました。みなさんには女神候補生を中心としたルートビルド及び交易都市の建設計画に協力して貰いたいのです」
イストワールがキーボードを操作すると、画面にゲイムギョウ界の地図のホログラムが現れる。
全員がホログラムに注目し、ブランも本を閉じる。
ルートビルドとはゲイムギョウ界において女神が道を作ることを指す。
守護女神のシェアによる光の道で通常なら何日も掛かる道を早く移動できる道だ、高速道路に近いものだろう。
都市を作るならば同時にルートビルドも必要になってくる。
「アタシ達が中心?」
ユニが首を傾げると、「そうです、今までルートビルドなどは女神様によって行わてきましたが、今回は女神候補生のみなさんで行ってもらうのです」とイストワールが言う。
イストワールが更にコンソールを叩くと、地図に新たな道が出来てプラネテューヌ、ラステイション、ルウィー三国が結ばれるようになり、その中心に都市が出来ている。
「これを、わたし達が作るの?」
ラムがイストワールに質問すると、「その通りです。この都市で三国の交易が盛んになります。更にこの辺りは三国の首都から離れているので治安があまり良くなく、ここに都市を作ることでそれを改善するのです」イストワールが答える。
「……何でわたし達なの? いつもはお姉ちゃんなのに……」
ロムがおずおずと質問すると、「今回の件は、女神候補生の皆さんの訓練も兼ねています。皆さんで力を合わせて立派な女神様に一歩でも近づいて欲しいのです」とイストワールが言う。
そしてホログラムが切り替わるとディフォルメされた女神候補生の姿が映り、横にレベルアップと書かれていた。
「ほら! 大体合ってた」
「結婚と協力じゃ、だいぶレベルが違うと思うんだけど……」
女神候補生が協力し合うことを結婚と同レベルで結び付けたネプテューヌはドヤ顔でふんぞり返るがネプギアが素早くツッコミを入れる。
「話は分かったわ。でも、これは国境を跨ぐ計画……とても大掛かりかつデリケートな問題でもあるわ」
ブランは難しそうな顔をすると、「まさかとは思うけど、プラネテューヌが主導なんて言わないわよね」ノワールは釘を刺すようにイストワールに質問する。
「お察しの通り、プラネテューヌが主導をさせていただきます」
しかし、イストワールは平然と言い放つ。
「なら反対ね」
「わたしも反対よ」
ノワールに続きブランもすかさず反対してくる。
「お姉ちゃん、どうして?」
意味が分からないと言った感じのユニに、「ラステイションの国益に叶わないからよ」と彼女の質問をあっさりと切り捨てるノワール。
「右に同じ」
それに便乗するブランだが、ラムは、「コクエキってなによー! 道が繋がって街が出来た方がみんなといっぱい遊べるじゃない!」不満そうに手足をバタバタ動かし、ロムは、「…お姉ちゃん、いじわる(しくしく)」と悲しそうな顔をする。
現在、ルウィーからプラネテューヌへのルートビルドの道は無く、ラステイションを経由することになる。
なので、このルートビルドで道が出来れば移動時間が短縮出来るのだ。
更に街が出来れば、そこに集まってみんなで遊べるのだ。
「でも、イストワールさんの言うようにこの辺は国から離れてるからモンスターが多いし、中継する場所があった方がいいと思います」
ユニが意見をすると、「それに、ここに交易都市が出来てしまったら、ラステイション本国の貿易が少なからず打撃を受けるわ」とノワールが答える。
ユニは、「それはそうかもしれないけど……」不満そうに呟く。
「ぼーえきだか、せーえき知らないけど、何でそんなに反対するのよー!」
「ぶっ!?」
ラムが不満そうに言うと、ブランが思わず吹き出してしまう。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
ロムが不思議そうに首を傾げると、ブランは、「交易と貿易よ。せいえきは違うわ」とやや恥ずかしそうに言うと、「せいえきとは気軽に言っていい言葉ではないわ。以後言わないように」と念を押す。
ラムが、「じゃあ、言わなかったら賛成してくれる!」と目を輝かせるが、ブランは冷静に、「それとこれとは話が別よ」とバッサリと切り捨てる。
「もー! お姉ちゃんの意地悪! きらーい!」
ラムが反対の態度を崩さないブランにそう言うと、「嫌い……(つーん)」とロムがそれに続く、「ぐっ……」ブランは少し堪えたようだが、それで意見を変えるようなことは無いようだ。
「ロムちゃんもラムちゃんもブランを責めてはいけませんわ。それにイストワールにはもう一つ思惑がありますのよ」
ベールはロムとラムを宥めながら、腕を組んでイストワールに厳しい視線を送る。
そこには先程の柔和で優しそうなお姉さんという雰囲気は無く、一国の国主としての威厳があった。
「流石は女神様、私の考えなどお見通しなのですね。確かに、この計画がプラネテューヌ主導となれば一番利益を得るのはプラネテューヌです」
イストワールは隠す様子も慌てる様子もなく冷静に答える。
「つまり、あなた達の成長を餌に私達を出し抜こうとしているのよ」
ノワールもイストワールに厳しい視線を送りながら言うと、「こんな見え透いた手に出なければならない程プラネテューヌは苦しいのかしら?」とブランは、聞くに値しない話だと言わんがばかりに文庫本を開く。
「えー! 何でこんな険悪になるかなー? いいじゃん、わたし主人公なんだし」
ネプテューヌは明るい声を出して、三人の女神に協力を要請するが、「まぁ、こんな調子で誰かさんが失策したからでしょうけど」とベールはそれを皮肉交じりに返す。
先程はネプテューヌをフォローしてくれたベールだが、国全体が関わることとなると私情を挟まない。
「皆さんのご意見はごもっともです。しかし、この計画は女神候補生を中心と言うからには最初から最後までネプギアさんが主導になります」
イストワールは険悪な空気をものともせず、ネプギアを指差す。
「は、はい! がんばりまひゅ!」
ネプギアはこの険悪な空気の中で精一杯頑張って返事をするが緊張のあまり噛んでしまう。
「なに噛んでるのよ。しっかりしなさい」
ユニはそんなネプギアを励ますそうに言うと、「ネプギアちゃん、頑張って(ふれーふれー)」とロムが続き、「ネプギア頑張れー!」とラムもネプギアを応援してくれる。
「……そう……そういう手を打ってくるのね」
そう言いながら文庫本を静かに閉じるブランに、「やるわね、イストワール」とノワールも態度を軟化させる。
「あの……私で、いいんですか?」
二人の態度の変化に驚くネプギアに、「わたくし達は犯罪組織との戦いでネプギアちゃんに大きな借りがありますわ。そのネプギアちゃんに手を貸さないと恩知らずと罵られてしまいますの」ベールが少し自虐気味に答えてくれた。
「暗黒星くろめに捕まったときもそうだけど、あなたがユニ達女神候補生を率いて戦ってくれなかったら、今の私達はないのよ」
ノワールがそう言うと、「しかも、ついこの間シェアエネルギーの効率化を無償提供してくれたばかり……」とブランが付け足してくる。
現にネプギア達女神候補生は囚われた四女神を二度も救っている。
そしてネプギアはその女神候補生のリーダーであり彼女達にとってなくてはならない存在なのだ。
実際に神次元から始まる事件で、キセイジョウ・レイが襲撃して来た際に、ネプギアを欠く女神候補生達はネプギアが合流するまで後方待機を命じられてしまう。
「更に、今のわたくし達の友好関係があるのはネプギアちゃん達女神候補生達のお陰。あなた達の戦う姿を見て、わたくし達は本当の意味で力を合わせると言うことを知りましたわ」
ベールがそう言うと「私達がマジック・ザ・ハードに負けたのは実力不足以上に、ライバル同士である私達四女神が力を合わせると言うことに心のどこかでわだかまり感じていたからよ」とノワールが言う。
「それを取り去ってくれたのが、女神候補生をまとめてくれたあなたよ。ロムとラムにも良くしてくれるし、あなたは私達女神にとって中和剤なのよ」
ブランがそう言うと、「……ふっ……こうやって挙げてみれば、あなたへの借りは枚挙にいとまがないわ。私達の方が先輩なのにね」とノワール少し自嘲気味に笑う。
「そんな……借りなんて……」
ネプギアは遠慮気味にそう言う。
ネプギアにとって、犯罪組織や暗黒星くろめのとの戦いで四女神を助けたのは当然であって貸し借りなんて想像だにしていなかった。シェアエネルギーの効率化も先に彼女が述べた通りである。
ユニやロムとラムと仲良くしてるのだって、友達になったのだから当然のことであった。
しかし、犯罪組織との戦いの中で生まれた女神同士の絆の中心はネプギアであり、それは彼女が思っている以上に重要な立場であった。
「あなたがそう思っていても、私達や世間がそう思わないのよ」
ノワールはネプギアの台詞を予想していたかのように素早く返すと、「目上の者が目下の者に恩を受けておきながら返さないというのは、世間的に印象が悪いの」とブランもそれに続く。
「逆を言えば、ちゃんと恩を返せば義理堅いと言うことで、わたし達の評判も上がるわ」
更にブランがそう続けると、「いつかは切られる外交カードだとは思っていましたが、こんなところで使ってくるとは思いませんでしたわ」とベールが言ってイストワールの手腕に感嘆した様子だった。
三人共いつかはネプギアに借りを返さねばとは心の中で思っていたが、ネプギア自身の謙虚な姿勢とプラネテューヌから何もアクションが無かったので、今の今まで特になにもしてこなかったのだ。
「ゲイムギョウ界の未来の為です、惜しくはありません。さあ、ネプギアさん皆さんにお願いをして下さい」
イストワールはネプギアに話を振ると、ネプギアは椅子から立ち上がり一礼をする。
「……私、まだ未熟者で国益とか正直わかりません」
ネプギアは両手を胸の前に当てる。
会議室にいる八人が静かに聞き入る、
「でも、この計画でゲイムギョウ界がより良くなって、私達女神候補生が女神様に一歩でも近づけるなら、全力で取り組みたいと思います」
ネプギアは胸の前に当てた手を強く握り強い意志を示す。
「ですから、皆さんの力を貸してください!」
そして三人の女神に訴えるように声を大きくする。
「お姉ちゃん、アタシもネプギアと一緒に頑張りたい」
ネプギアの言葉に続けて、ユニも立ち上がりノワールに訴えかけると、「わたしもやりたい!」とラムが、「お姉ちゃんお願い(うるうる)」とロムも立ち上がりブランに訴える。
パチパチ……
「今回だけよ」
ノワールが拍手を鳴らす。
パチパチ……
「……仕方ないわね」
続けてブランも拍手を鳴らす。
パチパチ……
「流石はネプギアちゃん、素晴らしいスピーチですわ」
そしてベールも拍手を鳴らす。
パチパチ……
「ネプギア、頑張ってね」
そしてネプテューヌも当然のように拍手を鳴らす。
これで四女神全員の同意を得られたことになる。
「ありがとうございます!」
勢い良く頭を下げるネプギア。
ごんっ!
「痛っ!」
しかし勢いが良すぎて机に頭をぶつけてしまう。
「もう何やってるのよ……締まらないわね」
ユニは呆れ顔だが、椅子から立ち上がると心配そうにネプギアに駆け寄る。
続けてロムとラムもそれに続く。
「痛いの痛いのとんでけー」
ロムはそう言ってネプギアの額をさすると、ラムも「タッチしてあげる」と言って同じくネプギアの額をさする。
特に魔法は使っていないが小さなロムとラムの手にネプギアは癒される気分だった。
「ごめんね、変なところでドジして……」
ネプギアは駆け寄ってくれた女神候補生の仲間に謝る。
「仕方ないわね。アタシ達がしっかりフォローしてあげるわ」
ユニはそう言いながらも、どこか嬉しそうである。
「うん! みんながフォローしてくれるなら安心だよ。みんなよろしくね」
ネプギアはそう言って右手を出す。
「任せなさい」
ユニがネプギアの上に右手を重ねると、「わたし、ネプギアちゃんの為に頑張る(ぐっ)」とロムがその上に右手を重ね、「ラムちゃんにお任せよ!」と最後にラムが右手を重ねる。
「「「「えいえいおー!」」」」
女神候補生四人の声が綺麗に重なる。
「いやー、相変わらずネプギア達は仲が良いねー」
そう言いながらネプテューヌは右手を出す。
「……」
文庫本を読むブラン。
「はぁ~、わたくしも妹が欲しいですわ~」
鼻血を出しながら妹達を眺めるベール。
「……なにやってるのよあなたは?」
冷めた視線のノワール。
「えー! みんな冷たいよー! わたし達も、えいえいおーしようよ」
ネプテューヌが誰も手を出してくれないことを嘆くと、「そんな簡単に手を出すほど、私は安くないのよ」ノワールはそんなネプテューヌを更に突き放す。
「そんなこと言ってー、本当はノワールもああいうの憧れてるんでしょ~?」
しかし、ネプテューヌは気にした様子もなく逆にノワールをからかうように言う。
「そ、そそんな訳ないでしょ!」
「はい、テンプレテンプレー」
「だーかーら! 私はネプテューヌのことなんて好きじゃないんだからね!」
「またしてもテンプレいただきましたー」
反論するノワールに対して、ことごとくツンデレのテンプレ台詞と言って、ニヤニヤと笑うネプテューヌ。
「……」
黙々と本を読み続けるブラン。
「はぁはぁ……ネプギアちゃん」
妹達の写真を撮り始めるベール。
姉たち守護女神も、それぞれのスタンスで長年付き合っており仲は悪くはない。
しかし、全員自己主張が強く目立ちたがり屋なので、リーダーなど決めようと言おうものならば大荒れになる。
以前も誰が一番人気かと話が出ただけで、ゲイムギョウ界全体を巻き込んだ総選挙を始めてしまうぐらいだ。
ちなみに総選挙の結果は奇跡的に四人共同じ票数だった。