昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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#28 ゲイム記者

 ネプギアとイストワールがプラネテューヌの街へ戻ってくる頃には日は落ちていた。

 

 

「少し遅くなっちゃいましたね」

 

 

 ネプギアが腕時計を確認すると時間は18:00を過ぎていた。

 

 

「そうですね。ギルドに報告をしたら真っ直ぐ帰りましょう」

 

 

 イストワールがそう答えると、二人はギルドを目指して歩き始める。

 

 

「お仕事終わりました」

 

 

 意気揚々とギルドで成功の報告をするネプギア。

 

 

「助かりましたよ。ありがとうございますネプギア様」

 

 

 ギルドの受付の男性はコンソールを操作してネプギアにクエストの報酬を渡す。

 

 

「少し色を付けておきましたから、何か美味しいものを食べて下さい」

 

 

 ネプギアがNギアで金額を確認すると確かに少し多い。

 

ネプギアは慌てて、「そんな、悪いですよ。期限だってギリギリでしたのに……」と言って首を左右に振って遠慮をする。

 

 

「毎日頑張ってるネプギア様への感謝の気持ちですよ」

 

 

 男性はにこやかに言うが、「でも……、私だけ贔屓されるなんて……」とネプギアはまだ遠慮をしているようだ。

 

 

「プリンでも買って帰ればネプテューヌ様も喜ぶんじゃないかな?」

 

 

 しかし、受付の男性の方が一枚上手のようで、上手くネプテューヌの名前を出す。

 

すると、「そういうことでしたら……」とネプギアは遠慮しながらも、姉の為と自分を納得させて素直に受け取ることにした。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 ネプギアは受付の男性に深々とお辞儀をする。

 

イストワールはそんなネプギアを優しい目で見守っていた。

 

自慢の娘が皆に認められているのが嬉しいようだ。

 

しかし、すぐに真面目な顔に戻ると、受付の男性に向かって、「今日のクエストで汚染モンスターが現れました。冒険者の方々にも注意喚起をお願いします」と伝える。

 

 

「汚染モンスターですか……」

 

 

 受付の男性は心底困ったと言った顔と声で言う。

 

ギルドに勤める彼は汚染モンスターにより、クエストを失敗したり最悪命を落とした冒険者を何人も知っているのだ。

 

 

「分かりました。口頭や張り紙で注意するよう伝えます」

 

 

 受付の男性はそう言うと、「未だに犯罪神を信仰して、汚染モンスターを作り出すマジェコン信者なんて消えてなくなればいいんですよね」と愚痴をこぼす。

 

 

「言いたいことは分かりますけど、出来れば改心して欲しいです。私は彼等に罪を償ってもらった後にみんなと同じゲイムギョウ界を愛する仲間として迎え入れたいです」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ぐわっ!? 尊い! 尊すぎて心臓発作がーーー!」と受付の男性が右胸を抑える。

 

イストワールは冷ややかに、「心臓は左胸ですよ」とツッコミを入れるが、「大変です! 救急車を呼びましょう!」とネプギアは真に受けてNギアを操作しようとする。

 

 

「あはは! 冗談ですよ」

 

 

 受付の男性は笑いながらそう言うと、「もぅ、そういう冗談は止めて下さい!」とネプギアはが頬を膨らます。

 

そんなネプギアを愛しそうに見つめる受付の男性を見て、イストワールはまた同じことをするだろうと思って、「やれやれ……」と言いながらお手上げのポーズをする。

 

 

パチパチパチ

 

 

 同時に拍手の音が聞こえてくる。

 

ネプギアが振り向くと、茶色い髪をポニーテールにして王冠のような髪飾りを付けた女性がいた。

 

瞳の色は緑色で、服装は赤と白の半袖シャツを着ておりファッションなのか少し腹部が見える。下は青い吊りスカートと白いニーソックスをはいていた。

 

 

「いやー、素晴らしい。優しく謙虚で礼儀正しくて姉思い。プラネテューヌの女神候補生様は噂通りだね」

 

 

 そう言いながら、女性はネプギアに近づいてくると、「あなたは?」とネプギアは女性に問いかける。

 

 

「私はファミ通、ゲイム記者をしています」

 

 

 ファミ通と名乗った女性は、「突然ですけどネプギア様を取材させていただけませんか」と言ってペンとメモを取り出す。

 

 

「しゅ、取材ですか? そんなこと急に言われても……」

 

 

 取材と言う言葉に気後れしてしまうネプギア。

 

戸惑うネプギアとファミ通の間に、「ファミ通さん、候補生とは言えネプギアさんは女神様です。取材と言うなら、まずは教祖の私に話を通して下さい」とイストワールが割って入る。

 

 

「失礼しました。まずは名刺を……」

 

 

 ファミ通は一歩下がって、ネプギアとイストワールに名刺を差し出す。

 

 

「ふむふむ……」

 

 

 イストワールの目の色が薄い緑色になると同時に瞳の中に波形が現れる。

 

メモリーにアクセスして情報を調べているのだ。

 

 

「ちゃんとした記者さんようですね」

 

 

 イストワールが安心したように言うと、「でも、週刊ファミ通ってゲイムギョウ界一の老舗ゲーム情報誌ですよね。それが私に?」とネプギアが驚きの表情を浮かべる。

 

イストワールはネプギアを安心させるよう微笑むと、「正式な記者であることは間違いありません。まずはお話を伺ってみませんか」と優しく言い聞かせるように言う。

 

ネプギアはその言葉に安心したのか、「はい、わかりました」と頷いた。

 

 

「では、ファミ通さんのご意向をお伺いしましょうか」

 

 

 イストワールがファミ通の取材の目的を問いかける。

 

するとファミ通は拳を握りしめながら、「女神様の陰に隠れてしまっていますが、候補生の皆さんの活躍は素晴らしいと思うんです」と力説する。

 

 

「そんな……他の候補生のみんなはともかく、私は素晴らしいと言う程じゃ……」

 

 

 ファミ通の迫力に若干引き気味のネプギア。

 

しかし、「そんなことはありません! ネプギア様はゲイムギョウ界を犯罪組織マジェコンヌの魔の手から救った英雄ですよ!」とファミ通は更に強く力説する。

 

何度か話には出てきているが、【犯罪組織マジェコンヌ】とは犯罪神マジェコンヌを崇拝しその復活を企む犯罪組織。

 

違法コピーツールの【マジェコン】をゲイムギョウ界中に広め一時は世界の八割以上を支配していた。

 

その力は四人の女神を上回り、討伐に向かった女神を返り討ちにして捕らえる程であった。

 

 

 女神達に同行したネプギアも一緒に囚われてしまう。

 

そんな絶望的な状況の中、友人達の助けにより唯一ネプギアだけが救出される。

 

救出はされたが、四人の女神を圧倒した犯罪組織の力はネプギアのトラウマになってしまう。

 

 

 それでも女神達を救う為に立ち上がるネプギア。

 

ネプギアは長く苦しい旅の中で仲間達と助け合って成長していく。

 

そしてトラウマを乗り越え、ついには女神を救出し犯罪組織を壊滅させることに成功する。

 

最終的に犯罪神は復活してしまうが、ネプギアがゲイムギョウ界への想いの力で撃破する。

 

今は僅かな残党が水面下で活動しているだけである。

 

 

「……確かに犯罪組織は倒しましたけど、私だけの力じゃありません。多くの人達が力を貸してくれたおかげです」

 

 

 犯罪組織の壊滅後、ネプギアはゲイムギョウ界を救った勇者と騒がれた時期があった。

 

しかし彼女は決して驕らず仲間を尊重し、姉であるネプテューヌと他の国の女神を立て続けた。

 

 

 その結果、時間が経つにつれ、元々人気も高く自己主張の強い女神達に話題が移りネプギアの活躍は過去のものとされていった。

 

人々の中には犯罪神を倒したのは四女神だと思っている者も少なくはない。

 

しかし、ネプギアはそのことを不満に思ったことは一度もない。

 

平和な元の世界が戻ったことが喜ばしいと思っているほどであった。

 

 

「その多くの人達はなぜ力を貸してくれたのでしょうか?」

 

 

 今度はイストワールがネプギアの答えに質問を出す。

 

 

「それは……みんなも女神様を助けてゲイムギョウ界を救いたかったから?」

 

 

 ネプギアは少し考えてから自信なさそうに答える。

 

本当に多くの人達が力を貸してくれた。

 

友達の為、正義の為、ただのお節介だと言うものや商売の為と言う人も居た。

 

その中で理由を一つ選ぶとしたら、これしか思いつかなかった。

 

 

「それもありますが、私はネプギアさんの真摯な思いと行動に心打たれたからではないかと思っています」

 

 

 イストワールがそう言うと、「私もそう思います」とファミ通も即座に同意する。

 

 

「年よりくさい言い方かもしれませんけど、若い子がひたむきに頑張ってる姿って心打たれるものがあります。私は女神候補生の皆さんにそれを求めているんです!」

 

 

 ファミ通はずずいとネプギアに詰め寄る。

 

 

「私にファミ通さんの期待に応えることが出来るでしょうか……?」

 

 

 未だに自信が無さそうに答えるネプギアに、「ネプギア様でないとできません!」とファミ通は即答する。

 

 

(うぅ……そこまで持ち上げられると、その気になっちゃいそう……)

 

 

 少し流されやすいところのあるネプギア。

 

ファミ通の押しに、まんざらでもない気持ちになってきていた。

 

そこに、「私は良いと思いますよ」とイストワールまで加わってくる。

 

 

「いーすんさんまで……」

 

 

 少し困り気味のネプギアだが、最初の頃より表情が柔らかい。

 

 

「自己主張が弱いところはネプギアさんの女神としての弱点でもあります。ここはファミ通さんの力を借りてみては?」

 

 

 イストワールは落ち着いた声でネプギアに提案をする。

 

ネプギアの謙虚さは美徳ではあるが、それにより時には活躍をアピールすることも必要な女神としては自己主張が物足りないところがある。

 

 

「任せて下さい。私の記事でネプギア様の魅力を全世界中に伝えてみせます」

 

 

 イストワールの援護を得たファミ通はここぞとばかりに押し込んで来た。

 

その上に、「弱点を補う為に人の力を借りるのは恥ずかしいことではありませんし、女神様としても必要な資質でもあります」と更にイストワールの説得も続く。

 

ネプギアの心は完全に傾いていた。

 

 

「わかりました。自信はありませんが、全力で頑張ります」

 

 

 ハの字眉毛で困り顔だったネプギアの表情が引き締まり、小さくガッツポーズをしながら力強く答える。

 

 

「ありがとうございます! では簡単な自己紹介と、先ほどクエストに行かれたそうですが、その時のお話をお願いします」

 

 

 すかさずペンとメモを取り出し取材を始めるファミ通。

 

 

「ええっ! いきなりですか?」

 

 

 流石に今すぐだと思わなかったネプギアは心の準備が出来ていなかったようで大慌てをしてしまう。

 

そんなネプギアにお構いなしに、「ネタは新鮮さが命ですから!」と詰め寄るファミ通。

 

 

「ファミ通さん。プラネタワーに一室設けますので、そこでお話しましょう。ネプギアさん、私もお付き合いしますから一緒に頑張りましょう」

 

 

 イストワールがすかさず二人に対して妥協案を出すと、「そうですね。落ち着ける場所の方が良い話が聴けますよね」とファミ通が、「はい、頑張ります」とネプギアが言ってイストワールの妥協案に乗る。

 

その後、ネプギアはネプテューヌへのお土産のプリンを忘れずに買い、イストワールと共にファミ通の取材を受ける為にプラネタワーに向かうのだった。


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