昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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#39 ファミ通の記事

 プラエと出会いファミ通の取材を受けてから約一週間。

 

G.C.2019年4月5日金曜日。

 

ネプギア達はプラネタワー内の一室で朝食をとっていた。

 

味噌汁の美味しそうな匂いのする和食で、あんみつが作ってくれたものだ。

 

彼女は名前と見た目通り和食が得意で、和食のメニューの際には厨房の手伝いをさせてほしいと申し出たのだ。

 

ネプギアの右隣にネプテューヌ、左隣にプラエ、そして向かいにはイストワールとあんみつが並んで座っている。

 

 

「ネプギアさん、良い報告があります」

 

 

 イストワールがネプギアに朗報があると切り出すと、「なんですか?」ネプギアは箸を止めイストワールの話を聞く。

 

 

「先日、プラネテューヌのシェアが大きく上がりました」

 

 

 イストワールの報告にネプギアが、「ホントですか!」と素直に喜びの声を上げる。

 

【シェア】とはシェアエネルギーの略称、主にこちらの呼び方で呼ばれることが多い。

 

ちなみによくグラフにされており、紫色がプラネテューヌ、黒がラステイション、白がルウィー、緑がリーンボックスで表される。

 

 

「諜報部の調査によると……」

 

 

 イストワールが詳細の説明をしようとすると、一緒に食事をしていたネプテューヌが頬張っていたご飯を飲み込み、「いやー! わたしの溢れ出す魅力がゲイムギョウ界のみんなに伝わっちゃたかなー!」と口を挟む。

 

 

「私はネプギアさんとお話をしているんです。この件にネプテューヌさんは微塵も関係ありません」

 

 

 この一週間もまったく仕事をしなかったネプテューヌに対してのイストワールの態度は手厳しい。

 

 

「私もネプテューヌ殿は関わっていないと思います」

 

 

 あんみつも冷静にそう言うと、「ネプテューヌさん全然頑張ってない」とプラエもそれに続く。

 

ちなみにこの一週間で、プラエ達は引っ越しを済ませつつネプギアのクエストの手伝いをしていた。

 

先週のパイ投げの日のクエストも、後日にネプギアとプラエ達がこなしていた。

 

 

「えー! わたしも頑張ったよー!」

 

 

 三人の塩対応を受けてもめげずに話を続けようとするネプテューヌだが、「何をです?」と問いかけるイストワールの態度は変わらず冷たい。顔も真顔である。

 

 

「ゲームとかー、おやつとかー、お昼寝とかー」

 

 

 ネプテューヌは指折りしながらここ数日の自分の行動を振り返るが、「……お姉ちゃん、それ頑張りの方向が違うと思うよ……」とネプギアが苦笑いをしながらツッコミをする。

 

 

「……ですから、そんな余計なお肉が付いてしまったんですね」

 

 

 イストワールは冷ややかにネプテューヌのほっぺたを見つける。

 

 

「え……わたし太った?」

 

 

 ネプテューヌと言えど、女の子の端くれである。

 

太ったなどと言われては慌ててしまう。

 

女神は国民に愛される姿を維持できる不老不死の存在とは言え、食べるものを食べて運動しなければ太ってしまう。

 

女神の体もそこまで便利ではないのだ。

 

 

「そんなことないよね?」

 

 

 周りに同意を求めるネプテューヌだが、プラエはご飯を口に入れ、あんみつは味噌汁をすすり、無言の圧力を加えてくる。

 

 

「ね! ね? ネプギア、お姉ちゃん太ってないよね?」

 

 

 ネプテューヌは最後の頼みの綱であるネプギアに助けを求めようとするが、「ええと……」と困った表情のネプギア。

 

イストワールの言う通り、ここ数日でネプテューヌは控えめ見てもふくよかになっていた。

 

 

「私、太ったお姉ちゃんも好きだよ」

 

 

 ウソのつけないネプギアの精一杯のフォロー。

 

 

「うわああああん!!」

 

 

 不幸にもそれが痛烈な皮肉になってしまったようで、ネプテューヌは泣きながら洗面所に向かう。

 

 

「……ちょっと失敗しちゃったかな……」

 

 

 困り顔で冷や汗を流すネプギアに対して、「ネプテューヌさんには、いい薬です」とイストワールは冷静だった。

 

更に、「右に同じく」とあんみつが続き、「プラエも右に同じなの」とプラエまでもが後に続く。

 

 

「きゃーーーー! わたしの魅惑のパーフェクトボディが~~!」

 

 

 そして、洗面所で体重計に乗って現実を確認したネプテューヌの絶叫が響き渡る。

 

 

「……話の続きになりますが、調査によると昨日発売された雑誌の効果のようです」

 

 

 何事もなかったように話を戻すイストワール。

 

 

「雑誌? どんな雑誌ですか」

 

 

 ネプギアはイストワールの言う雑誌に興味を示すと、「これです。付箋の貼ってあるページを読んでみて下さい」とイストワールはそれを予測していたようなタイミングで雑誌を取り出す。

 

表紙にキツネのマスコットキャラクターが描かれている週刊誌のようだ。

 

 

「ええと……【頑張る女神候補生特集】……あ! これ、週刊ファミ通ですか!」

 

 

 記事の内容からファミ通の書いた自分の記事だと察したネプギアは少し恥ずかしい気持ちになりながら文章に目を通す。

 

 

「え! 見せて見せて、プラエも見たい」

 

 

 プラエが興味津々に席を立ってネプギアの見ている雑誌を覗き込む。

 

 

「ぷ、プラエ様、食事中ですよ。お行儀が悪いです」

 

 

 あんみつは慌てて止めようとするが、「良いではないですか。あんみつさんもご一緒に見られては」とイストワールに仲介されると、「……イストワール殿がそう言うのでしたら」とあんみつもネプギアの隣に行き雑誌を覗き込む。

 

 

「ネプギアさんの真面目さ、誠実さ、それに先日のクエストの活躍も好意的に紹介された良い内容だと思いますよ」

 

 

 イストワールは率直に好意的な感想を述べる。

 

そこには先日のイストワールと一緒に行ったクエストの活躍の他にも、どこで聞きつけたのか午前中にした老婆の古時計を直した事やひよこ虫と戦った事まで書かれており、老婆やギルドの受付の男性達の好意的なインタビューも書かれていた。

 

 

「そ、そんなこと言われると、ちょっと恥ずかしいです」

 

 

 恥ずかしさで顔を赤くするネプギアは、「でも、嬉しいな。こんなに良い記事書いて貰っていいのかな……」と続ける。

 

 

「現にネプギアさんはそれだけのお仕事をしているんです。正当な評価です。自信を持って下さい」

 

 

 イストワールは微笑みながらネプギアを称賛する。

 

この記事の内容でシェアが大きく上がったのは間違いなく事実であった。

 

 

「……そんなに褒めないでください」

 

 

 イストワールの褒め言葉で更に顔を赤くするネプギア。

 

 

「今日の午後からもファミ通さんの取材がありますから、一緒に頑張りましょう」

 

 

 先日の取材の後、今度は実際にクエスト同行して取材したいと言うファミ通の要望を受け、今日の午後で約束をしているのである。

 

 

「はい! 頑張ります!」

 

 

 元気よく返事をするネプギア。やる気満々である。

 

 

「プラエ様のことも書かれておりますね。【姉を探し求める謎の美少女】と」

 

 

 あんみつがプラエの事が書いてある記事に目を通すと、「……プラエも少し恥ずかしいな……」とプラエも顔を赤くする。

 

 

「プラエちゃんの超能力のことどうしましょう? 私はファミ通さんなら話してもいいと思うんですけど」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「そうですね。隠し通せるものでもありませんし、機を見てお話ししましょうか」とイストワールが答える。

 

 

「大丈夫でしょうか?」

 

 

 あんみつが不安そうに質問すると、「女神様の協力者なら、超能力が使えても不思議ではありませんよ。プラエさんが奇異の目で見られることはありません」とイストワールが答える。

 

 

「……でも、ちょっと怖い」

 

 

 プラエがうつむいて両指をいじると、「大丈夫だよ。何があっても私が守るから」とネプギアが優しく右手でプラエの肩を叩く。

 

 

「うんっ!」

 

 

 ネプギアの気持ちが嬉しかったのか、プラエは元気よく頷いて返事をする。

 

すると、「ネプギア~、お姉ちゃんの体重も守って~」とガックリとうなだれたネプテューヌが戻ってくる。

 

 

「えっと……、それならこれから一緒にクエスト行く?」

 

 

 ネプギアはやや控えめに尋ねるが、ネプテューヌは即座に両手でバッテンを作ると、「それはパス!」と断固拒否の構えを取る。

 

太るのは嫌だが、仕事をするのはもっと嫌なようだ。

 

 

「もっと、楽に痩せられる方法プリーズ。ほら、お腹とかに張り付けて電気送るエイトパットだっけ? それ系のヤツ」

 

 

 ネプテューヌは右手の人差し指を上げながらネプギアに提案するが、「あれは運動の補助で、楽に痩せられるとはちょっと違うと思うんだけど……」とネプギアが困り顔で答える。

 

 

「えー? ポテトチップス食べながら痩せられるとか広告であったよ」

 

 

 ネプテューヌが口を尖らせて抗議するが、「……それは模造品の過大広告だと思うよ」とネプギアが答える。

 

 

「電気を送るのでしたら、いっそのこと、数百億ボルト程流してみてはどうでしょうか?」

 

 

 イストワールがにこやかな顔で提案をする。

 

さすがにこの期に及んで仕事を拒否するネプテューヌに怒りが沸いたようだ。

 

ちなみに雷ですら十億ボルトなので、イストワール怒りがいかに激しいものだとわかるだろう。

 

 

「そんな電流流されたら死んじゃうってば! いーすん怖いよ!」

 

 

 ネプテューヌは顔を真っ青にして抗議するが、「お姉ちゃん、ボルトは電圧だよ。電流はアンペア」とネプギアのツッコミを受けてしまう。

 

 

「もうー、ネプギアは細かいなー。そういう科学の専門的な話はオタクに任せておけばいいの」

 

 

 ネプテューヌがお手上げのポーズで【やれやれ】と言った感じで言うが、「お姉ちゃん、ボルトとアンペアは科学以前に理科の話だよ」とツッコミをされてしまう。

 

 

「そ、そーだっけ! とりあえず、お姉ちゃんはゲームしながら痩せられる方法を考えるから、ネプギアは頑張ってクエストして来てー」

 

 

 ネプテューヌはそう言うと、そそくさと部屋を出て行ってしまう。

 

 

「うーん……もう少しでお姉ちゃんをクエストに連れて行けそうだったのにな」

 

 

 ネプギアがあごに右手を当てながら残念そうに言うが、「気を落とさないで下さい。ネプテューヌさんのことですから、何かと理由を付けて行かなかったと思いますよ」とイストワールが言う。

 

更に、「右に同じく」とあんみつが続き、「プラエも右に同じなの」とプラエも後に続く。

 

この一週間で、プラエもあんみつもネプテューヌの行動パターンが大体分かってきたようだった。

 

ちなみに、ネプギアはクエストに向かう前にネプテューヌの様子を見に行ったが、そこには逆立ちして足でコントローラーを操作するネプテューヌの姿があった。

 

その方法で痩せられるかは疑問だが、その努力を少しでも仕事に回して欲しいと思うネプギアであった。


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