ハリーポッターと代行者   作:岸辺吉影

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クヂィッチとクリスマス

事件後はハーマイオニー含めた4人で行動する機会も増えた。ハーマイオニーも3人に勉強を教えるときはあたりがきつくならないようにしてくれたし、3人も彼女と会話するのを楽しむようになった。

 

喧騒の日々の中、ハリーのクディッチデビュー戦が始まろうとしていた。士堂とロンがパンにベーコンと卵を載せたのやらポテトフライやらスープにがっつくのに、試合に出るハリーは緊張からか食欲が出ずにいた。

 

「ハリー、今日は貴方のデビュー戦よ、二人ほどじゃなくても食べなきゃだめだわ。」

 

心配するハーマイオニーの顔を一瞥してハリーはつぶやく。

 

「おなかがすいていないんだ、食べれる気がしないよ。」

 

すると後ろを魔法薬学のスネイプ先生が通りかかり、ハリーの後ろでささやく。

 

「健闘を祈ろう、トロールを倒した英雄殿。君には今日の勝利は簡単だろう、たとえ相手がスリザリンでも。」

 

そういうとスネイプ先生は去っていくがハリーの顔が厳しくなる。それにきづいたハーマイオニーがハリーに向くと、ハリーはひとりでに話始める。

 

「見たかい、スネイプは足を怪我していた。」

「それが何だっていうんだよ。」

 

今度はスクランブルエッグに手を伸ばしながら士堂が聞く。

 

「グリンゴッツで強盗があっただろう、あの金庫からハグリッドが何かを持ち出したのを見た。そしてこの前のトロール。きっとあの三頭犬が守っているものを盗み出そうとしたスネイプがあの日三頭犬に足をかまれたんだ。」

「何言ってんだハリー? 緊張で頭がおかしくなったのか?」

 

さすがの士堂もハリーの突飛な考えに付いていけない。

 

「なんだってスネイプ先生が物を盗もうとする? そんなことをする意味は?」

「わからない」

「わからないって…」

 

あきれながらハリーを見つめる士堂。そんな中心配そうに見つめていたロンが、フクロウ便に気づく。

 

「あのふくろう、箒を持っているけど誰にだろう?」

 

ふくろうはそういうロンの前を通ってハリーのもとに箒をとどけてどこかに飛び去って行く。宛名がハリーなのを確認した本人が荷を解くと、そこには新品の箒が包まれていた。

 

「ハリー、これすごいよニンバス2000だよ、そこらへんの箒とは違う!」

 

クディッチ好きのロンが興奮しながら解説している中、ハリーは教師がいる机から視線を感じた。目を向けるとマクゴナガル先生がにっこりと微笑みながら箒を届けたフクロウを撫でていた。

 

「こりゃ本当に勝たなきゃまずいことになるな、ハリー。」

 

そういって士堂は食後のミルクを飲みほした。

 

 

クディッチ会場は熱気にあふれていた。グリフィンドール対スリザリンというライバルカードに今回からハリーが加わる。グリフィンドールの勝利を望む人と、スリザリンの勝利と人気者のハリーが負けるところを見たい人で会場の熱気は上がる一方だった。

士堂は観客席でロンやハーマイオニーと一緒に応援していた。このクディッチは学校の成績に反映される。更に魔法族の中で屈指の人気のスポーツだからか、先生らも観覧している事に驚いた。

そんな感想を抱いていると試合開始のホイッスルが鳴り響く。序盤は一進一退の攻防であり白熱した試合展開を見せていた。3人も小さい旗を振って応援する。

異変が起きたのは中盤ごろだろうか。ハリーが素っ頓狂な動きを見せ始めたのだ。まるで振り落とされないかのように体を左右に振ったり上下に動いたりと、試合に関係のない動きを見せた。

 

「箒が故障したのか?」

 

士堂の疑問に近くにいたクディッチ狂のシェーマスがそれに答える。

 

「それはないね、古い箒ならいざ知らずハリーの箒は最新式だ。闇の魔法でも使わない限り干渉なんてできないぜ。」

 

その言葉を聞いたハーマイオニーがロンの持つ双眼鏡を手に取ってどこかを確認する。すると興奮した口調で士堂とロンにささやく。

 

「スネイプ先生だわ! 呪文をかけて妨害しているの!」

「何?」

「スネイプ先生がハリーを見つめながら口で呪文を唱えていたのを見たわ!」

 

そういうとハーマイオニーは双眼鏡をロンに返してどこかにかけていく。

慌てて士堂が追いかける中、ロンはスネイプ先生とハリーの動きを監視することにした。

ハーマイオニーは一足先に先生たちの通路の下側にもぐりこんだ。遅れて士堂も到着するが士堂は何をするかが分からない。

 

「どうするつもりだ、ハーマイオニー?!」

 

小声で問いただす士堂に人差し指で黙らすと、ハーマイオニーは通路の隙間から見えるスネイプ先生のローブに呪文を唱えた。

 

『ラカーナム、インフラマーレ』

 

するとローブに火が付き、教師人のボックスが混乱を起こした。と同時にハリーも箒のコントロールを取り戻す。運よくスニッチを見つけたハリーは箒の上に立ってスニッチを呑み込むという荒行で、グリフィンドールに勝利をもたらして見せた。

 

試合の後4人はハグリッドに試合中の出来事とハリーのスネイプ先生への疑惑をぶつけた。

 

「お前さんたちフラッフィーを知っちょるのか?」

 

スネイプ先生への疑惑をハグリッドが否定する中、4階で見た三頭犬の話になった。するとハグリッドがそう漏らしたのを士堂が聞き逃さなかった。

 

「あの犬はハグリッドの?」

「うんだ、去年アイルランドでみしったやつからもらったんだ。今年ダンブルドア先生に貸してニコラス・フラメルの…」

 

そこまで言うと自分の失言に気づいたのか、このことに首を突っ込まないように4人に繰り返し言うと逃げるように小屋に逃げるように帰っていった。

 

「こりゃハリーの妄想でもあながちなさそう…かな?」

 

ロンのつぶやきに反論できるのは少なくともこの中にはいなかった。

 

その後4人でニコラス・フラメルなる人物について調べるもめぼしい情報が見つからない。図書館をよく利用するハーマイオニーはいざ知らず、ほか3人は調べものは課題以外ですることはやはり少ない。おまけに何から調べたらいいかの検討がつかないから本の対象すら絞り込めなかった。そして士堂には大きな疑問が残っていたのだ。

 

「ダンブルドア校長が何かを隠したにせよ、一年生の自分たちがかかわる必要があるのか?」

 

この疑問はニコラス・フラメルと並んで彼らにとっての疑問になるはずであった。

しかしハリーが持ち前の正義感からか自分が守る、ぐらいの気概でいるしロンとハーマイオニーはハリーが狙われた事実から無関係でいられないと考えていた。そんな彼らをみながら士堂は何をすべきか決めかねていた。

 

ホグワーツもクリスマス休暇が近づき帰省の準備をする生徒が多かった。ハーマイオニーは実家に帰る用意をして大広間に降りてきていた。

 

「私は帰るけど皆は?」

 

チェスをするハリーとロン、それを眺めながら柄を磨く士堂はハーマイオニーの問いに答える。

 

「僕はパパとママがビルのところに行くから今年はみんなで残るよ。」

「僕も残る。ホグワーツのクリスマスに興味があるからね。」

「僕は帰ってもね…」

 

三者三様の答えを聞きハーマイオニーは話す。

 

「じゃあ3人も残るんだからニコラス・フラメルのことちゃんと調べておいてね。」

「もう何を調べればいいんだよ、考え付く全部の本に目を通したぜ!」

 

ロンの嘆きに彼女は答えを提示した。

 

「閲覧禁止の棚はまだでしょ? 一般の棚にないならあそこしかないわ。協力して探してね、盗んででもよ。私からのクリスマスの課題よ。」

 

そう言い残してハーマイオニーは大広間を出た。

 

「ハーマイオニー、すっかり悪に染まったな。」

 

士堂のつぶやきにハリーとロンは無言でうなずく。

 

 

ホグワーツのクリスマスはハロウィン同様装飾が施される。談話室にはきらびやかなクリスマスツリーがおかれ、ホグワーツに残った人あての手紙やプレゼントが自動的に置かれている。ベルの音がどこからか聞こえてくるのが目覚まし代わりとなって士堂は目を覚ました。談話室ではすでにロンが起きて、自分宛のプレゼントに目を通していた。

 

「メリークリスマス、士堂。君にもプレゼントが来ているよ。」

「メリークリスマス、ロン。そいつはどうも」

 

士堂宛には祖父母からクリスマス仕様の手作りクッキーの詰め合わせ、ハーマイオニーからは柄を磨くためのクリームとタオルがセットになって入っている。

 

「ああ、またママがセーターを送ってきた。君とハリーの分もあるぞ。」

 

大きく胸にRと書かれたセーターを手に取りながらロンがため息をつく。

 

「そんなこと言うな、僕の祖母から君たち宛のプレゼントだ。うちの教会製の十字架だ。最近作っていないのにな、こっちも張り切ってるよ。」

 

ちょうどその時ハリーも目を覚ます。

 

「「ハリー、メリークリスマス。」」

「メリークリスマス、ロン、士堂。」

 

ハリーはどこか浮かない顔をしながら談話室への階段を下りている。

 

「僕宛のプレゼントなんてないよ、きっと。」

 

そう愚痴るハリーに二人はハリーへのプレゼントがあることを告げると、今まで見た中でも最上級の笑顔を浮かべながら、ハリーが談話室に降りてくる。ロンの母と士堂の祖母、ハグリッドやハーマイオニーからのプレゼントに喜びつつハリーは自分宛のプレゼントの荷を解く。箱の中には手紙と茶色の下地に鈍い輝きを放つマントが入っていた。

 

「ハリー、メリークリスマス、これは私が君の父さんから生前預かっていたものだ。君に返す時が来たようだから上手に使いなさい。」

 

差出人の名がなかったから誰から贈られたか3人にはつかなかった。物は試しとハリーがマントを羽織ってみるとハリーの体が消え、首だけになってしまった!

 

「ハリー、それ透明マントだよ! フレッドたちが持っているものとも違う、滅多にないものだよ!」

 

ハリーは人生で初めてクリスマスが楽しいと思えた。その後は3人でチェスをしたり、ウィーズリー夫人からのセーターを着たりする。

その夜士堂は誰かにたたき起こされた。真夜中に叩き起こされるとは思っていないから、二度寝をしようとすると切羽詰まったようなハリーの大声が聞こえる。

 

「ちょっと来て、士堂!君にも見てもらいたいんだ!」

 

ハリーや同じく叩き起こされたロンとともに4階に行くと、そこには大きな姿鏡がおかれていた。曇ったガラス面やくすんだ額縁から見るに相当古いものだろう。その鏡の前に立つとハリーは二人にせかすように聞く。

 

「鏡に何が写ってる? 何が見える?」

 

そういわれた二人は順番に鏡の前に立つ。するとロンは自分が勉強で主席を、クディッチでキャプテンとして優勝した姿を見る。士堂は

 

「これは…すごいや、決闘で100人抜きをしてるよ。表彰状…かな。そんなものまでもらってるよ。」

 

二人の答えにハリーは驚く。自分が見たときは死んだ両親が微笑みながらハリーの後ろに立っていたのに?!

 

その後もハリーはクリスマスの晩餐にも出ず、時間があったら鏡の前に向かっていた。死んだ両親についてはヴォルデモート卿から自分を守って死んだこと以外知らない。この鏡には一番会いたい人がいることがハリーの心を虜にしていた。鏡の前で両親の姿を見ていると、背後から士堂が声をかける。

 

「ハリー、それはただの鏡だ。あまり熱心にのぞく必要はないぜ。ちょっとおかしいよ君。」

「でも鏡には僕の両親がいるんだ、僕の知らない両親が!!」

「ハリー。君の気持はわかるよ。でも僕らは両親には会えない。」

「でも、ここにはいるじゃないか!! ここには確かに、」

 

士堂が声をかけても食い下がるハリーに別の人物が声をかけた。

 

「友人の忠告は聞くものじゃ、ハリー。」

 

そこにいつのまにやらダンブルドア校長が立っている。目を見開く二人に歩み寄りながらなおも校長は言葉を紡ぐ。

 

「これはみぞの鏡と申してな、その人の心の奥底に眠る願望をうつしだすものじゃ。」

 

そこまで言うと、校長はハリーを自分の前に呼び話を続ける。

 

「君の友人の言うとおり、死んだご両親には残念ながら会うことはできぬ。昔から君のようにこの鏡に魅入られた多くのものがその身を滅ぼしたのじゃ。わしは君に同じ道をたどってほしくはないのじゃよ、ハリー。君には今大事な人がここにはいるはずじゃ。鏡に映る偶像よりも大事じゃと思うがの。」

 

ダンブルドア校長に初めて注意を受けたことでハリーは目をさましたようだ。ハリーに部屋に戻るように言った校長は、帰ろうとする士堂に声をかけた。

 

「君には何が見えたかの?」

 

その問いは士堂には想定外のものであったが、戸惑いながらも答える。

 

「僕は、決闘で多くの勝利を、」

 

そこまで言った士堂の言葉を老人はやんわりと否定する。

 

「君は嘘を言っておるの。君自身も見たのじゃろう?」

 

ご両親を、と続けられた言葉に少年は顔を青くした。なぜそのことが分かった?誰にも言ってはいないのに?

 

「フフフ、なぜわかったかという顔じゃな、まあこれは年寄りの勘というやつじゃ。おそらくご両親と一緒に代行者として活躍した姿、というのが正確かもしれんがの。」

 

さらに顔を青くする士堂に校長は微笑む。

 

「ああ、そんなに慌てなさんな。君が隠したことを責めはしない。なんせ君の持つ技は異端でありまだ誰にも明かしてはおらんじゃろうからの。むしろ当然ともいえる。」

 

そういうと杖を振ってどこからか机とティーセットを呼び出す。

 

「お茶でも飲んで話そうじゃないか、こんなのもまた一興じゃろう?」

 

出された紅茶に口をつけた士堂にダンブルドア校長は問いかける。

 

「君が自らの術を今まで見せびらかそうとしなかったことにわしは感心しておる。普通なら特別な力を持つ者の多くは、それを誇示しようとするもの。」

 

そう言って士堂に目を細めた校長がさらに問う。

 

「特にグリフィンドールとスリザリンはその傾向が出がちなんじゃよ。勇敢は言い換えれば無謀ともいえる。野心はそのまま力の誇示に繋がる大きな要因。二つの寮に選ばれたものは多かれ少なかれ力の誇示に走る傾向を皆持っているのじゃ。」

 

わしもその一人じゃ、とウインクする校長に士堂はふっと笑ってしまう。

 

「その賢明さに免じ、君から質問を受け付けよう。時間がないゆえ、あまり多くは語れぬじゃろうが。」

 

突然の提案に士堂は面食らうが思いのほかスッと言葉が出てくる。

 

「ではもし校長が、首を突っ込まなくてもいい問題に乗ろうとする友人がいたらどうしますか? どうしたらよいのでしょう?」

 

士堂の心からの疑問に、ダンブルドア校長は目を閉じながら答えを口にする。

 

「フム、わしなら止めるやもしれん。危険な道に歩む友を止めるは当然じゃ。」

 

そこまで言って紅茶に口をつけて、中々うまいじゃろうとウインクしてから話を続ける。

 

「じゃが聞く耳を持たぬものはいつ、どんなところにも居る。人の忠告が耳に入らず、一人で考えてあたかもそれがすべてだと信じるものが。もしそんな友人であるなら、わしはあえて火中の栗を拾うじゃろう。かかる火の粉を払いながら、友のそばにおることを選ぶやもしれん。」

 

「士堂、人は最善手を打とうとしてもそれが最善かどうかは結果を待つしかない。ああだこうだは後からいくらでもいえるものじゃよ。だからこそ、その時どうしたいかに委ねるのが案外一番良いやもしれぬ。」

 

これがわしの答えじゃ、といって校長は士堂を部屋に返した。

 

 

 

 

 




クヂィッチのあたり駆け足気味です。
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