結局ニコラス・フラメルの謎はあっさり解けた。ロンがカエルチョコレートに付属されているダンブルドア校長の説明書きから、賢者の石というワードを発見したのだ。
これをきっかけにハーマイオニーが図書館で見直した結果、賢者の石は全ての物質を金に変えるほかに不老不死に使われることが判明した。4階に何が隠されているか分かった4人はハグリッドに夜中忠告することにしたのだ。
「おお、お前さんたちこんな夜中にどうした。出歩いていい時間じゃないだろ?それにお前さんらにかまってる暇はないんだ。」
そういってドアを閉めるハグリッドに4人が同時に声をかける。
「「「「賢者の石のことだよ」」」」
「何?」
慌ててドアを開けたハグリッドは4人を中に招き入れる。内装は木こり小屋のようだ。
大男のハグリッドに合わせて椅子やテーブルは通常よりも大きめであり、ダイアゴン横丁で見かけた魔法道具に似た代物や何かの魔法動物の巣やら卵らしきものがあちこちにおいてある。
4人を椅子に座らせるとハグリッドが訪ねてきた。
「お前さんらどこで賢者の石について知った?あれは秘密なんだ。」
「あの石をスネイプが盗もうとしているんだ。! なぜかはわからないけど。」
「なに、スネイプが? ばかいえスネイプ先生は石の守り人の一人だ。なんだって盗む必要がある? 前にもいったがあり得ん。 ささ、帰った帰った。」
「なんだって? 石の守り人の一人?」
「わかったわ。何人かの先生が守りの魔法をかけているのね。」
「そいうこった。特にフラッフィーの守りを破れるのは俺とダンブルドアの二人だけ…、おっといっちゃいけねんだったなこれは。」
11歳の誘導尋問にハグリッドは見事に引っかかって、守りの概要
までしゃべってしまった。慌てて4人を返そうとしても、ここまで聞いて帰れるわけでもなく4人は居座ろうとしていた。
その時暖炉にくべられた窯から何かが爆ぜる音がする。ハグリッドはその音を聞いて窯から何かを取り出すと、テーブルの上に大事そうに置いた。
「こりゃなんだ、ハグリッド?」
士堂の問いにロンが震える声で答えた。
「これ僕知ってる、どこで手に入れたんだこんなもの?」
「賭けでな、知らない奴だったが持て余している感じだったからな。」
そういっていると件のものはぐらぐらと揺れ始める。中から殻を突き破るように、緑と灰色の混じったような色をした小動物が出てきた。それはロン以外の3人でも一目でわかるほど、マグル界でも有名な魔法動物だった。
「ちゃんとママが分かっているな、ノーバンド。」
そういうハグリッドのひげを燃やすドラゴンの子供に、声も出ない士堂は外からの視線に気づく。さっと近寄るとすでに走り去った後であったが、きれいなブロンド頭の少年であるのは間違いではなかった。
「まずいよ、よりにもよってドラゴンのことがマルフォイにばれた。」
「ハグリッドは前から言っていたんだ、一度ドラゴンを飼ってみたいって。」
「まずいよそれは、とんでもなく。」
「何がまずいの?」
「ドラゴンの飼育は簡単じゃない。許可なしじゃ飼育なんてできない。大体そんな簡単に飼育できるならビルが困っちゃいないよ。」
急いで談話室に向かう4人は道中賢者の石ではなく、ハグリッドのドラゴンについてしゃべっている。焦るロンが理由を説明していると、急に士堂とハーマイオニーが止まった。目の前にはランプを持ったマクゴナガル先生と得意げなマルフォイが立っていたのだ。
「いいですか、どんな理由があろうと夜中に出歩くのは規則違反です。今回の規則違反の罰として一人50点減点します。」
怒りの表情を浮かべるマクゴナガル先生の提示に思わず声を上げる4人であったが、先生は無視する。そして視線を得意げに4人を見つめるマルフォイに向ける。
「あなたも50点減点ですよ。マルフォイ。」
「なぜです、マクゴナガル先生! 僕は、」
「ええ、先ほども申した通りいかなる理由があろうとこの時間に出歩いたからです。」
自分が減点されるとは考えていなかったのかマルフォイは悔しそうな顔を浮かべているしかなかった。
5人には罰則としてハグリッドと一緒に、禁じられた森の見回りに同行することになった。最近この森で不審な影とユニコーンの死体が確認されたからだ。
「じゃあお前さんたちは分かれて探してもらおう。ハリーとマルフォイにロンとハーマイオニー、士堂はおれについてこい。何かあったら大声で知らせろよ。」
「じゃあファングを貸して。」
不安になったマルフォイの提案にハグリッドはファングを二人に付けた。臆病だと忠告して。
禁じられた森でハグリッドから離れるのは、一年生にはリスクが高いように思えるが、罰則としての意味が込められていると考えられた。
各々がランプを片手に歩き始める。禁じられた森はホグワーツと同じ歴史を持ちながら、今なお魔法動物が数多く存在している。大気中には自然の魔力が立ち込めて、ホグワーツとはまた違う雰囲気を醸し出していた。魔術が大気中の魔力も使用する特徴があることからか、士堂はいつもより気が立っている気がしていた。そんな士堂にハグリッドが声をかける。
「お前さんとは考えたらちゃんと話したことはなかったな。ハリーの友達だから気に求めちょらんかった。」
「ハグリッドはハリーといつから仲がいいんだ?
」緊張をほぐすために士堂は話を合わせる。
「ちゃんと話したんはハリーを学校にいれる時からだな。ハリーのちっこいから知ってるがね。お前さんは寮であった時からか?」
「僕は行きの列車で一緒になってから。ハリーの小さい時を知っているっていつだい。ハリーは襲撃の後すぐに預けられたんじゃなかったか。」
「そのくそったれのところにつれてったんだ。知ってたらあんな所には預けなかったがな。知っとるだろう?」
ハグリッドは心底イラついたように言うが、実際のところは士堂も詳しくは知らない。ただクリスマスに銅貨一枚送ってくるあたり、想像するのはたやすかったが。
「ハリーとは仲良くしてやってくれ。あの子には友達っちゅうもんもいなかったんだ。お前ら3人はハリーといてやってくれ、な?」
大きい体に似合わぬ小さい目をうるうると滲ますハグリッドに無言で士堂はうなづいて見せる。
その時悲鳴声が森の王の方から聞こえてくる。
「マルフォイの声だ。」
声のする方角に走る士堂は杖を抜いて臨戦態勢に入っていた。
途中でロンたちと合流して先を急ぐと、マルフォイが一人で逃げてくる。
「あああそこにに。何かかがあ、」
怯えたマルフォイをハグリッドに任せると、士堂はマルフォイが来た道を急ぐ。程なくしてその先にハリーの姿を見つけるが近くに何かいるのが分かった。
『ルーモス 光よ」 』
呪文学で学んだ光の呪文を唱えて見てみると、そこにはケンタウルスが月明かりを浴びて優雅に立っていた。その足元には銀色の液体が流れている。
「おお、フィレンツェ。ポッターにあったか。」
「ハグリッド、ここは危険だ。すぐに皆を返しなさい。」
よく見えていなかったがフィレンツェの足元にはユニコーンの死体が横たわっていたのだ。
「じゃああの森に例のあの人がいたっていうの?」
ハリーからことの詳細を聞いたハーマイオニーが、夜の談話室で声を潜めながら問う。
ハリー曰く、あの夜ユニコーンの死体にしがみついて血をすする何かを発見して、襲われたところをフィレンツェに助けられたらしい。その時生きながらの死を与えるユニコーンの血の効果とともに、賢者の石をヴォルデモートが狙っていると忠告されたという。
「多分スネイプはヴォルデモートの為に賢者の石を盗もうとしていたんだ。」
「もしスネイプ先生がヴォルデモートのスパイだとしたらそれはあり得るけど、教師にはなれないだろ?」
ハリーの考えに士堂が反論するも納得していないハリーにおびえた表情のロンが聞く。
「じゃあ例のあの人はハリーを殺そうとしていたのか?」
「多分可能なら今夜中にでも」
「僕、君が危険な目にあっていたのに学期末試験のことを考えていたよ…。」
ロンがいたたまれそうにする中、いたく冷静に答えたハリーにハーマイオニーが声をかける。
「ハリー、忘れたの。ホグワーツには例のあの人が恐れるダンブルドア校長がいるのよ。校長先生があなたに指一本触れさせないわ。」
「そうだな、だからロンが心配していた通り僕らは期末試験のことを考えようか。」
そう士堂が区切りをつけてこの夜は解散した。
学期末試験も終わり4人で部屋に戻る途中で、ハリーが額の傷に手をかけて顔をしかめる。
「ハリー、大丈夫か。前にも痛んでいたよな。」
心配そうなロンに大丈夫といってハリーは話す。
「何かが起きようとしているんだ。傷が痛むってことはそういうことだと思う。」
「でも守りはまだ機能している。ダンブルドア校長がいる中で盗むのは困難だと思うんだけどな。ハグリッドがかかわっているのが不安だけど。」
士堂の問いにハリーは何かに気づいたかのように走り出す。ハリーの突然の行動に3人が慌ててついていくとハリーは自分の考えを話しながらも歩を緩めない。
「話がうますぎるんだ! ドラゴンを飼いたかったハグリッドのもとに、たまたまドラゴンの卵を持った人が現れるなんて。しかもパブで会うなんておかしいよ。それにドラゴンの卵はめったに手に入らないんだ。なんで気づかなかったんだ!」
小屋の前で笛を吹くハグリッドを見つけるとハリーが問いただす。
「ハグリッド、ドラゴンの卵をくれたのはどんな人だった?」
突然のハリーの質問にハグリッドは普通に答えた。
「さあな、フードかぶっていたから顔は見ちゃいねえ。」
「でもフラッフィーのことは話したんだよね。」
「まあな、どんな生き物を飼っているか聞かれたからフラッフィーに比べりゃ、ドラゴンなんか楽なもんだといったよ。」
「フラッフィーに興味を待っていたの?」
「まあな、三頭犬なんて魔法界でもそうはいねえからな。なだめるコツさえ知ってりゃ楽なもんさといってやったよ。」
聞いているだけでも頭がいたくなるが、士堂はまさかと思いながら質問をぶつける。
「なだめ方なんて教えちゃいないよな?」
「いってやったさ、フラッフィーは音楽をちょっと聴いてりゃねんねしちまうってな。」
試験会場で不備がないか確認していたマクゴナガル先生は、グリフィンドールの新たな問題児が駆け込んでくるのを目にする。また何かやらかしたかと身構えると、予想外の問いに直面舌を10個すぐ用意したのにを
「ダンブルドア校長に今すぐ会いたいんです!」
「なぜです、校長先生は急用ができて先ほど立たれました。」
そういうと4人が顔をこわばらせる。その表情は規則違反の減免が通用しないと悟ったわけではなく、もっと緊迫した状況を想定しているようだった。
「賢者の石が狙われています!」
士堂の口から最高機密の内容が出たことにマクゴナガル先生は驚愕する。一体なぜそのことを。
「どこで石について知ったかは疑問ですが、守りは万全です。なぜ知ったかは今は問いません。他言は無用です、寮に戻りなさい。」
強い口調でそういって4人を返しても彼女の胸には不安が残る。何かが起こる予感が長い人生経験からはじき出された気がするのだ。
「フラッフィーの守りについて聞きだしたのはスネイプだ。ハグリッドに目をつけて機会をうかがっていたんだ。」
寮に帰る途中ハリーはスネイプ先生への疑惑を深めていた。
「ダンブルドア先生がいなくなる隙に石を狙うつもりだ。絶対にそうだ。」
士堂が反論しようとするとちょうど計ったようにスネイプ先生が通りかかる。
「これはこれは。こんないい天気に外に出歩かずに寮に戻るとは。勇敢で威勢のいいグリフィンドールの英雄らしくない。」
そう言ってハリーの瞳をのぞき込むようにしながら言葉を吐き出す。
「いわれなき理由で疑われてしまうぞ、ポッタ―。」
「ハリー、どうするんだよ。」
スネイプ先生が去ったあとロンがハリーに聞く。
「僕たちで石を守る。動くなら今夜しかない。」
次回からラストに向かいます。