ハリーポッターと代行者   作:岸辺吉影

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帰還

目を覚ますとつんとした匂いが鼻につく。瞬きしながら士堂が体を起こすとそこは病室だった。ベッドが並ぶ一番奥に寝かされているようだ、と士堂がぼんやりと認識すると妙齢の女性が駆け寄ってくる。

 

「目を覚ましましたね、ミスター士堂? 気分はどうでしょうか?」

「ええ、大丈夫ですよ、マダム…ポンフリー?」

 

ホグワーツの医務室を担当している校医の名に自信がなかった士堂にマダムは優しく微笑む。

 

「合っていますよ、私の名を覚えてくれるのはうれしいですが、複雑です。本来は会わないのが一番なんですからね。」

 

視線を足元にずらすと備え付けのテーブルにお菓子やメッセージ入りのカードがおいてある。見ればいたずらグッズもあるからウィーズリー兄弟も来てくれたらしい。

そして枕元には展開されたままの黒鍵が立てかけてある。そこには何も手が付けられておらず、誰も触れていないのが分かった。

 

「誰が黒鍵をここに?」

 

士堂の謎に答えたのはこの世で一番頼れる人だった。

 

「わしじゃよ、士堂。目が覚めて何よりじゃよ。」

 

そういってハリーらを後ろに引き付けてダンブルドア校長が歩み寄ってきた。

 

「大丈夫かい、士堂?」

「目が覚めなくて心配したんだ。本当に大丈夫?」

「そうよ、どこか痛まない? あなたずっと眠っていたのよ。」

 

立て続けの質問にダンブルドア校長が手で制する。

 

「まあまあ、落ち着き給え。マダムの治療は完璧じゃった。体は問題ないじゃろう。それよりも状況を説明したほうがいいかの。」

 

士堂の枕元に3人が寄ってから、ダンブルドア校長はベッドに腰掛けて話始めた。

 

「まず、賢者の石は無事じゃ。あの後わしが回収し、ニコラスと協議した結果砕いておいた。あんなものを残しておいても意味がないじゃろう?」

 

そういって士堂に目を向ける。その視線から士堂は思いつくままに質問をした。

 

「なぜクィレルがヴォルデモートと一緒に行動を?」

「推測じゃがアルバニアの森で会ったと見える。休暇中に立ち寄ったのが分かっておるからの。なぜ、かはさらにあいまいじゃがヴォルデモートの甘言に惑わされたのじゃろう。あやつはそうした術に長けておった。」

「どうやって倒したんです、僕呪文を食らってから記憶があいまいで…」

 

士堂の発言に驚く3人だったが想定内のことかのように校長は話す。

 

「ハリーが倒したんじゃ。ハリーの愛の魔法での。」

「愛?」

 

士堂の言葉を受けさらに話が続く。

 

「ハリーが11年前にヴォルデモートを倒せたのは母親の残した愛の魔法ゆえじゃ。古代から伝わる犠牲の上に成り立つ最強の防御魔法。

これがある限りハリーにヴォルデモートは手出しできずにおるのじゃ。クィレル先生が打ち滅ぼされたのもその魔法の効果じゃろう。」

「ハリーから聞いた話から推察するに、クィレル先生は君との戦闘で体にひどくダメージを受けたと見える。元々憑依されると、生命力と魔力が著しく弱まる傾向があっての。

そこに加えて君との戦闘でクィレル先生は抜け殻に近い状態で魔法に対して抵抗力が削がれたとみている。ハリーに魔法を使わずに近づいたのは使わなかったのではなく、使えなかったんじゃろうな。」

 

クィレルの戦闘について概略をつかんだものの、疑問は残っていた。

 

「なぜ黒鍵が僕のところに?」

「君が使ったからじゃ。霊魂の状態になったヴォルデモートに君が投擲したところをハリーがみておる。」

 

その答えは士堂にとってうれしくないものである。使うことを祖父から止められたにもかかわらずに無断で使ったからだ。

 

「心配せんでもよい。今回の件はわしが手紙ですでに報告済みじゃ。怒ってはおらんようじゃったよ。」

 

そういってダンブルドア校長は、4階で紅茶を飲んだ時のようにウインクして見せる。

 

「そもそも君は不思議ではなかったかの? 君の家族が君が巻きこまれた事件について、心配の声を上げなかったことに。わしがすでに状況を報告しているから、と信頼をしてくれたんじゃ。」

 

思い返せばそうだった。定期的に届く手紙には近況報告と励ましの手紙だけだったから。あの時は巻き込まれた事件で頭がいっぱいで気づいていなかった。自分は冷静だと思っていたがそうではなかったようだ。

 

「じゃが今回の件はわしも想定外じゃった。もし君がいなかったらハリーはおろか、他のものも命が危うかったかもしれん。このことはわしの落ち度でもある、許してくれまいか。」

 

そういって頭を下げるダンブルドア校長に慌てて士堂が答える。

 

「やめてくださいよ、僕は大丈夫ですから。それよりも黒鍵がここにあるってことは僕について皆はどれほど知っているのですか?」

 

士堂の問いにひげをさすりながら校長は答える。

 

「今回の件は秘密にしておる。じゃが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()&()l()t();()b()r()&()g()t();()

目の前がまた暗くなりそうな士堂に隣にいたハーマイオニーが慌てて訂正する。

 

「皆はクィレルとあなたが戦ったということしか知らない。その剣をどう使ったかを知っているのはハリーだけよ。」

「僕は誰にも言っていないよ。だって信じてくれないもの、君がやったこと。」

 

ハリーが肩をすくめながら付け加えると、ロンが我慢できないように口を開く。

 

「なあ、聞いてもダメかも知れないけどさ。君って…何者何だい?」

 

ロンの問いはもっともであったがどう答えればよいかわからない。そんな士堂にダンブルドア校長が助け舟を出す。

 

「皆に教える必要はない。わしは士柳の友人ゆえ説明はできるが、君自身が3人に話すことに意味がある。今回の件があって話さないというのは難しいじゃろう?」

 

その言葉を受けて観念したかのように士堂は3人に目を向ける。

 

「分かった。君たちには話す。でもここじゃない、もっと時間が必要なんだ。根底が一緒のようで違うんだよ。」

 

士堂の答えに納得できないハーマイオニーや首をかしげるハリーとロンにダンブルドア校長が手をたたいて区切りをつけた。

 

「さあ、もうすぐ終業式じゃ。もちろん来るじゃろう?士堂。」

 

その言葉にうなづくと士堂は3人の前で黒鍵を手に取り、柄の状態に戻して腰に差した。

 

着替えた士堂を含めた4人が大広間に向かうとどこからか拍手が起こる。先生らも含めた視線は4人に集まるが、士堂は腰についた柄に目線を向ける生徒が少なくないことに気づく。グリフィンドールの机に座ると、目の前にネビルがいた。

 

「ネビル、無事だったか!」

 

士堂の驚きの声にネビルが背中を丸くする。

 

「僕、君たちが何をしに行くか知らなくて… もし僕が止めたままだったら賢者の石が…」

 

気弱なネビルに声をかけようとするとマクゴナガル先生が机のベルを鳴らし、ダンブルドア校長が立ち上がって話始めた。

 

 

「また一年が終わった。今年も最優秀の寮を表彰したいと思う。では得点を発表しよう。第4位グリフィンドール252点。第3位ハッフルパフ352点。第2位はレイブンクロー、得点は426点。そして第1位は472点で…スリザリンじゃ。」

 

点数が発表されるたび、4人の肩が丸くなり拍手も小さくなる。グリフィンドールの点数は4人で200点下げたからで、これがなかったら順位はまだましだったのだ。

マルフォイらが嬉しそうに騒ぎ、無表情で拍手するスネイプ先生をみながら士堂は気持ちが沈んでいくのが分かる。目の前のチキンやローストビーフがオブジェに見えてきた。

 

「よーしよし、スリザリンの諸君よくやった。じゃがのお、最近の出来事も換算せねばなるまい。飛び込みで得点を挙げた者がおる。」

校長の予想だにしない話にスネイプ先生とスリザリンの顔がこわばる。

 

「ハーマイオニー・グレンジャー。その冷静な頭脳で難題な問題を見事に解いて見せた。よってグリフィンドールに50点。」

 

途端にグリフィンドールのテーブルが騒がしくなり、ハーマイオニーが恥ずかしそうな表情を浮かべる。

 

「次にロナルド・ウィーズリー。ホグワーツの歴史上、近年まれにみるチェスの腕を見せてくれた。50点。」

 

ロンの驚嘆の表情に周りが冷やかす中さらに続く。

 

「3人目はハリー・ポッター。その強い意志と卓越した勇気を讃えたい。―そこでグリフィンドールに60点。」

 

スリザリンのテーブルでマルフォイが顔をこわばらせながらこっちを見ている。大広間の誰もがその先を予感していた。

 

「4人目は士堂・安倍。見事な防衛術と剣の腕前はゴドリック・グリフィンドールを彷彿とさせた、よってグリフィンドールに60点。」

「スリザリンに並んだわ!」

 

ハーマイオニーの声にテーブルが期待感に満ちていく。

 

「最後に、敵に立ち向かうのには大変勇気がいるが、友人に立ち向かうのはもっと勇気がいる。その勇気を讃えネビル・ロングボトムに10点を与える。」

 

呆然とするネビルに士堂は声を掛ける。

 

「皆気にしちゃいないってことさ、逆に誇りに思っているよ。」

 

「では旗を変えなくてはの。」

 

校長の声にこたえるかのように獅子の紋章が入った黄色とオレンジの旗が大広間の天井を埋める。

 

「今年の優勝カップはグリフィンドールに!!」

 

その声とともにスリザリン以外の3寮から歓声が上がる。マクゴナガル先生が頬を赤くしながら拍手を送り、ハグリッドがガッツポーズをする。そしてグリフィンドールが帽子を天高く放ると同時にスリザリン以外の3寮も帽子を放り投げた。隣の人らと次々ハグをしながら今までにない充実感を味わう士堂らであった。

 

 

ホグワーツも区切りの日を迎えた。クリスマスと違い今度はハリーも実家に帰る必要がある。ハグリッドから渡された両親の写真を見ながらハリーがぼやく。

 

「僕、帰りたくない。ホグワーツにいたいよ、ずっと。」

 

ハリーの状況からボヤキとは言えないから訂正ができない。

 

「ハリー、僕んちに来なよ。ママもハリーなら来ていいって言ってるんだ。

「私も手紙を送るから、頑張ってハリー。」

「何なら僕んちでもいいぞ。祖父さん祖母さんしかいないし誘っても大丈夫だぜきっと。」

 

そう3人が声をかけていると列車はキングズ・クロス駅につく。

各々が荷物を持って家族のもとに向かう。ロンの家族は一目でわかった。皆一様に赤毛だったから。

 

「ああ、あなたが士堂ですね!」

 

そういうとロンの母親らしき人が士堂に駆け寄ってくる。

 

「モリー・ウィーズリーです。息子たちがお世話になったみたいで。」

「初めまして、士堂・安倍です。こっちも迷惑かけっぱなしですよ。」

 

ミス・ウィーズリーは士堂の手を握って感慨深そうに言う。

 

「あなたのご両親とは友人でした、あなたの姿を見れば喜んだでしょう。」

「あなたも両親と?」

「ええ、それは… ああ時間がない。是非我が家に来てください。その時話をしましょう。」

 

そういってミス・ウィーズリーは去っていった。

 

士堂があたりを見回すとちょうど祖母の道子が来るのが見えた。

 

「遅くなってしまったわ、ああお帰りなさい。大変だったでしょう?」

 

そういって荷を持とうとする祖母に中々返事が言えない。

 

「私たちは怒ってなどいません。友人を守るために力を行使したことを怒るほど、落ちぶれてはいません。胸を張って帰ってきなさい。」

 

何もかも御見通しの祖母に士堂は胸を張ってこたえる。

 

「ただいま、祖母ちゃん。」

 




区切りの話を書きました。憑依云々はオリ設定です。
秘密の部屋とアズカバンの囚人までは書こうと思っているので頑張ります
次は秘密の部屋の前の話になると思います。
文章は会話文と説明文の間を開けた方がいいんですかね?試しに開けてみました。
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