機動戦士ガンダム 宇宙の渡り鳥    作:青色のラピス

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第十話

ジオンの艦隊がルナツーへ向かっていく。

グワジン級戦艦を旗艦とした艦隊はかなりの規模である。

艦隊の構成はグワジン級戦艦が二隻、チベ級重巡洋艦が九隻、ムサイ改級軽巡洋艦が十三隻、ムサイ級軽巡洋艦が二十二隻、パプア改級輸送補給艦改装空母が三隻、パプア級輸送補給艦が八隻である。

それに対する連邦の艦隊はマゼラン級戦艦が十七隻、サラミス級軽巡洋艦が三十隻、コロンブス級輸送補給艦が十七隻、アメリゴ級駆逐艦が四十八隻、プリンス・エンリケ級ミサイルフリゲート艦が六隻、ネルソン級軽空母が四隻という構成だ。

連邦の方が軍艦の数は多く、圧倒的に連邦の方が有利だと考える人が多いだろう。事実アメリゴ級駆逐艦とプリンス・エンリケ級ミサイル・フリゲート艦には大量の誘導ミサイルが搭載されており文字通り連邦軍の主力だった。

しかしミノフスキー粒子の出現によって彼らへの大きな逆風が吹くこととなる。

誘導ミサイルやレーダーが無効化されたのだ。それに伴い戦闘は遠距離で撃ち合うのではなく接近戦が主体となったためだ。

更に連邦が不利な点は存在する。それはMSだ。パイロットの練度は勿論、MS自体の性能もだ。

だからと言ってジオンが圧倒的に有利かと言えばそういう訳ではない。数が負けているのは事実であり、今回の戦いは艦隊を壊滅させることではない。ルナツーを陥落させることが目的なのだ。長期戦を挑んでも地上での勢力図が変化すれば撤退せざるを得ない。それどころかただでさえ少ない戦力を減らしてしまい逆境に追い込まれてしまう可能性だってある。この時奇しくもオデッサにて連邦とジオンが地上での覇権をめぐり決戦へ挑もうとしていた。

戦争の行く末を決める長い長い日が始まる。

 

 △▼△

 

ジオンの艦隊は進む。途中で武装巡視艇と遭遇したが予想の範囲内だった。これだけの艦隊なら隠密行動をするのはほぼ不可能だからだ。

武装巡視艇が時間稼ぎをすることなく高速で撤退する。ジオンの将兵は「腰抜けめ!」と嘲笑する。

 

(やれやれこんな些細なことでここまで興奮するとは……。士気が高いのは良いことだがもう少し冷静になって欲しいものだ…。)

 

艦隊総司令官のドルカス・ドルドレイ中将はそう心の中で呟く。

彼はベテランの軍人だった。ジオンが独立する前からの軍人で元々は地球連邦軍所属だった。

数々のテロ組織や反乱を鎮圧し、数年前にジオン共和国軍へ移籍し今に至る。

そんな多くの戦いを経験している彼だからこそ慎重だった。

誰も彼もが有利だと高を括っている中数少ない冷静な人物だった。

その後は特に何とも遭遇することなくルナツーへ到達する。既にMSは艦の外に出ており戦闘準備は万全だった。

 

『全艦ミサイル一斉射!! その後にMS隊、突撃せよ!!』

 

司令官の命令が下り、ミサイルの雨が要塞へ降り注ぐ。要塞と迎撃のために出撃していた軍艦の機銃がミサイル迎撃のために火を噴く。

眩いばかりの輝きが起こる。その後ろからMSが武器を持ち襲い掛かる。

―――その瞬間、宇宙での戦争が始まった。いや、正しくは再開したと言った方が方が良いだろう。

 

 ▼△▼

 

青色の新型が宇宙を駆ける。重苦しい見た目に反してその機体はこの戦場にいるどの機体よりも軽快に動き回っていた。装備している最新の大型バズーカ――ジャイアント・バズで次々とMSと砲を破壊していく。

彼は間違いなくエースだった。

 

「フン、やはり愚鈍な連邦。今も時代遅れの旧型を使うか。」

 

青いジオンのエース――アナベル・ガトー大尉は毒づく。

彼は既にルナツーの岩盤に取り付いており、表層の敵を駆逐し、一人でも多くの後続を突入させるための援護をしている。既に多くの機体や軍艦を破壊し、大勢は決したと多くの人間は思うだろう。

戦車もどき(ガンタンク)MSの出来損ない(ガンキャノン)がガトーを迎撃せんと自慢の火砲を叩き込む。

通常のパイロットなら一瞬で鉄屑となる量の火砲を軽々と回避し、接近しヒートサーベルで両断していく。

ガトーは進んでいく。油断せずに慎重に。そして冷静に。ガトーだけではなく他のどの将兵もそうだった。

しかし、それはあくまで極めて主観的なものだった。それに彼らが気づくまでもう少しばかりの時間を要した。

………そしてその時が彼らの敗北だと誰も気づかずに。

 

 △▼△

 

まるで迷路みたいだと誰かが言った。事実ルナツーの中は入り組んでおり複雑だ。おまけにミノフスキー粒子の濃度が高くレーダーとレーザー回線が使用できず突入した他部隊と連携が取れず攻めあぐねているのが現状だ。

待ち伏せも当然ながら存在し、距離によっては一方的にスクラップにされる。

 

「チッ…。聞いてた話と違うぞ。ええ?」

 

ルナツーに突入した兵士の一人が文句を言う。彼は現在撤退している最中だった。

連邦の分厚い防衛網を突破し勇ましくルナツーに突入したところまでは良かった。仲間と一緒にこの戦争の後について呑気に駄弁っていたくらいだ。

しかし、その弛んだ空気は一気に引き締められることになる。

最初は些細な違和感だった。ミノフスキー粒子の濃度がおかしいのだ。ここは要塞の中だ。しかも中の作りは非常に複雑だ。それなら連邦は地の利を生かして伏兵を置くなり、ジオンの軍団を分断して各個撃破していくなど様々な戦法を取ることができるだろう。しかしミノフスキー粒子がここまで濃ければレーザー回線にレーダーはロクに機能していない。実際、彼の部隊全員がルナツーの中に侵入した瞬間、レーザー回線とレーダーが機能しなくなっていた。最初は大したことがないと笑い飛ばした。連邦の悪あがきだと。

しかし違った。これは連邦の作戦だった。証拠として突入した部隊はほぼ全てがロクな戦果を挙げることなく全滅している。後続とは合流できておらずこのままいけば多くの将兵が全滅すると彼が考えるのは当然のことだ。

―――そしてそれを予想しない指揮官がいない訳がないことも当然のことだろう。

 

 ▼△▼

 

場面は再び変わる。後方にいる艦隊だ。ここには旗艦とその護衛艦隊がいる。

ドルカス・ドルドレイ中将はここで指揮を執っている。

 

「攻略は順調です。このままいけば我が軍の勝利は確実でしょう。」

 

ドルカス・ドルドレイ中将は部下からの報告を聞く。

事実ジオンのMSはルナツー内部に次々と侵攻し、誰がどう見てもジオン優勢と答えるだろう。

 

「……そうか。しかし、ルナツーに侵入に成功してからかなりの時間が経っていると思うが最前線から何かないのかね?」

 

「……それがミノフスキー粒子の濃度が高く侵入した部隊と連絡が取れないのです。」

 

そうか、と答えて彼は頭を動かす。

やはり何かあると彼は考えた。彼は最初から冷静だった。常に戦場の情報を得て、最善を目指す。

そうだ、最初から何かおかしかったのだ。連邦の抵抗が弱すぎる。簡単に侵入できてしまった。

――まるでジオンを誘い込んでいるように。

そう気が付くや否や彼は撤退命令を出――せない。

彼が命令を出そうとした瞬間彼の乗る艦が大きな揺れに襲われたからだ。

 

「どうした! 何が起こった!」

 

「後方からの攻撃です! ミノフスキー粒子で分かりませんが、おそらく連邦のマゼラン級の攻撃です!」

 

「マゼラン級だと…? チッ、まあいい全艦90度回頭だ! MS隊は全部出せ! 迎撃しろ! そして砲撃班はメガ粒子砲の準備急げよ。射程距離に入った瞬間撃ち込んでやれ!」

 

彼がそう命令すると威勢良い了解という返事が返ってくる。

それと同時に連邦からの砲撃が始まる。それに応じてジオンも負けじと砲を鳴らす。

誰もが理解した。ここをが勝負どころだと。現在はスポーツの試合でいう0-0。丁度前半戦が終わったくらいだろうか。前半戦終了のホイッスルはなっていない。しかし、休憩もホイッスルも無視して後半戦が始まろうとしていた。当たり前だ。戦場にレフェリーなどいないのだから。そもそもの話、ルールなんてものも存在しないのだ。

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