機動戦士ガンダム 宇宙の渡り鳥    作:青色のラピス

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第十三話

戦場は正にカオスの権化だった。

実弾とビームが飛び交い、鉄の棺桶がすぐさま出棺されていく。

光が生まれては消え、また生まれ、消えていく。

どこぞの海兵が見たなら生命(いのち)が勿体ないと叫ぶだろう。

しかし、そんな正論もここでは意味を成さない。

確かにここで終わらせてしまったのならどれ程素晴らしいのだろうか。

"俺"は"レン・アマキ"という人間に憑依しただけの存在であり、連邦の事情もジオンの理想なぞ欠片も興味がない。ただ生きていくために軍人をやっていると過言ではない。正直、"レン・アマキ"の心情は俺が代行するには重すぎるのだ。

だが、他の人間はそうはいかない。彼らは皆、何らかの思想もしくは譲れない何かに従っている。それはジオニズムだったり、誇りだったり、家族だったり、復讐心だったりする。譲れないものというだけあって、それらを抱えた人間は非常に頑固だ。特に思想家は始末が悪い。戦争が始まった時は思想に疑問を持たない。だからと言って戦争が終わりに近づけば物分かりが良くなるわけでもない。むしろ引くに引けなくなってより一層馬鹿になる。

つまり、今の俺が何を言いたいのかというと―――

 

『何でジムが後ろでチンタラしてるんだよッ!』

 

『手前らキャノンが役に立ってないからだよ! その肩にあるのはこけおどしかッ!』

 

『お前らッ! 喧嘩するんじゃねえッ! ジムは前衛、キャノンは後衛だ。しっかり役目を果たせ!』

 

『おらあッ! どけぇッ!』

 

『死ねええぇぇぇ!!』

 

―――誰でも良いからこの地獄から解放して欲しいです。 

 

 △▼△

 

戦場は正に狂気の坩堝というべき空間である。

その証拠に俺は他の兵士たちとコミュニケーションを上手くとることができない。

例を挙げるとするならこんな感じだ。

 

『おい、戦況はどうなっている!?』

 

『うるせー! ジムはさっさと突っ込みやがれ! ブッパで忙しいんだよ!』

 

『いや、この距離だとほぼ無駄撃ちだぞ……。……まあいいさ。ルナ『良いからさっさと突撃しろよッ!!』人が話している途中だろうが!!』

 

と、ものの見事に会話が成立しない。

まあ、俺が一旦補給に戻った際少し頭が冷えたせいもあるだろう。

記憶を掘り返せば、テンションは彼らと一ミリも変わらない酷いものだ。

とはいえ、ここに居ても何も変わらない。

……仕方ない。もっと前の方に行くか…。シールドは持っているから前衛はできるからな。

 

『二人とも、最前線に突っ込むぞ。準備はいいか?』

 

『問題なし、イケるぜ!』

 

『問題なしです、隊長。』

 

『よし、突っ込むぞッ!』

 

 ▼△▼

 

ジムのブースターに火をつけ、一気に加速させる。

加速のGはかつてのガンキャノンと比べ物にならず、思わずうめき声が出そうになる。

GだけでもきついというのにMSや戦艦のハリネズミのような射撃を防ぐなり避ける必要がある。

そのためあらゆる方向へ気を配る必要があり、高スピードでMSが動いているためGが正面以外の四方八方からかかる。

おまけに防御に徹するだけでは生き残ることはできても勝利することができない。

 

「そこだぁッ!」

 

狙いをつけ、レバーにある引き金を引く。

その瞬間、機体も俺と同じように引き金を引き銃口が光を放つ。

一条の光がザクを貫き、爆発させる。

爆発が生まれたことにより煙と光で一瞬だけ視界を閉ざされる。

その瞬間、MSの砲撃が俺達を襲う。弾はマシンガンやバズーカの実弾であるため構えていたシールドで十分防ぐことができる。ルナ・チタニウム合金様様だ。

しかし、なるほど攻めあぐねるはずだ。ただでさえ弾幕が濃い上にMSの射撃も正確。一度や二度なら凌げても何度も同じことを成功させることは難しいだろう。それに数を頼みとし、練度の低い今の連邦軍ではさらに難易度が上がる。

一機のリック・ドムがバズーカを捨てて前に出る。そして二本のヒートホークを腰から抜き放つ。

これだけ弾幕が濃い中で接近戦を挑むとは重度の馬鹿か猛者の二択だろう。

ヒートホークを振りかぶった瞬間に、腹部が発光する。

思わず目を閉じそうになる。しかし、閉じたら死ぬことは分かり切っているため根性で目を開けたままにする。

 

「そこだっ!」

 

ヒートホークの動きに合わせシールドを前に出し、初撃を防ぐ。

ドムは防がれた瞬間にヒートホークを手放し、もう一本のヒートホークを振る。

もう一撃は防ぎきれず、シールドを両断される。

 

「振りかぶった腕でどう防ぐつもりなんだ!?」

 

攻撃を終えた瞬間にコクピットへビームスプレーガンを突きつけ、零距離で打ち抜く。

コクピットと同時に動力系を打ち抜かれたドムは爆発せずに機能を停止する。

一息つきたいところだが、そうも言ってられない。いくら新型とはいえシールドを失った機体は絶好の獲物と認識しているのだろう。

 

「進むしかないならッ!」

 

後ろに逃げても状況は良くならない。むしろ逃げる途中で背中を狙われて御陀仏だ。

なら、最大速度で突撃するまで――!

 

『アマキの奴、抜け駆けか!?』

 

『ガキに先越されるわけにはいかねえ!』

 

そうすれば案の定、頭のネジがイカれた兵士たちが突撃をかます。

実弾の雨で何機かが脱落するが、数だけはある連邦だ。後ろから次々と一撃必殺のビームを雨のように撃ち込んでいく。これだけの数を撃ち込めば出鱈目に撃ったものでも何かしらに当たる。機銃や砲、MSはゆっくりと、されど確実に沈黙していく。

しかし、機銃や砲を潰しても軍艦は簡単に止まらない。

やはり艦橋を潰すしかないか……。

 

『アマキ少尉! 敵前逃亡か!?』

 

『んなわけねえだろ! 戦艦の艦橋を潰す! 船の動きを止めるんだよ!』

 

戦場の熱気に中てられて、知性がダダ下がりの同僚を無視してムサイの艦橋目掛けて突っ込む。

ムサイには機銃がないため対空能力が低い。肝心の主砲も破壊されており、護衛のMSがいくつかいるだけだ。

俺を近づけまいと弾幕を張るが、先程の比ではない。逆にスプレーガンの連射で無力化できる隙があるくらいだ。

隙があるならばついていくの戦場の鉄則である。なので間髪入れずにスプレーガンで無力化してしまう。

無力化されたMSを無視して飛翔を続けると直ぐに艦橋への接近に成功する。

 

「沈めッ!!」

 

艦橋へ向けてスプレーガンを撃ち込む。対ビームコーティングを施していないのか撃ち込まれたビーム弾は全て吸い込まれるように直撃する。ビームを鱈腹食う羽目になったムサイは当然のことながら大爆発を起こす。

完全に沈んだわけではないが、艦橋に主砲、格納庫は駄目になったから大丈夫だろう。

 

「ルナツーが危ない。……それにこんな空間に一秒たりとも長く居たくないからな…。」

 

もう一度ジムのブースターに火をつけて加速する。

向かう先はグワジン。おそらくこの艦隊の旗艦だ。

っと、その前に部下二人と合流しなきゃな。流石に放っておくことはできない。

……そもそもの話、俺がまた後先考えずに突撃したのが原因だし。

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