機動戦士ガンダム 宇宙の渡り鳥    作:青色のラピス

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第十六話

サーベルとサーベルがぶつかり合う。プラズマの刃はぶつかるたびに眩しい閃光(ひかり)をまき散らしていく。一体どれくらいの時間が過ぎたのかも分からない。

ひたすらにレバーを動かし、敵の攻撃を捌く。

クソッたれなことに敵エースはどういう訳か片腕でも攻撃を巧みにいなし、その隙をついて攻撃を加えてくる。

ジム自慢のラージシールドは激しい接近戦でボロボロになっており、辛うじて盾の役割を果たしているという状態である。流石にジムの装甲は当てにできない以上、シールドの終わりが俺の命の切れ目だろう。

それに対し敵エースのドムは右腕の喪失以外に大したダメージを追っていない。

しかも分厚い装甲はさっき与えた爆発でも碌に傷ついておらず、理不尽さを感じる。

 

「こなくそおおッ!!」

 

レバーの引き金を引き、バルカンやらガトリング砲を乱射させる。

一見すると意味のない行為かもしれないが接近戦で距離が非常に近い場合には意味ができる。

バルカンの弾はドムの頭部に着弾し、カバーガラスを砕き、奥にある精密機械に着火――爆発する。

 

―――小癪!―――

 

その瞬間、やけに野太い男らしい声が聞こえた。

少し、驚いたのがいけなかった。

ドムの振り回したヒートサーベルによってジムの頭部を破壊される。

普通なら、これで終わりだろう。

一年戦争中の機体は頭部――メインカメラ――を破壊されればほぼ外の情報を得ることできない。

だが向こうはエース、というか機体色と声からしてガトー、アナベル・ガトーだ。

しかし、三年後の世界において大量殺戮を繰り広げたテロリストを連邦軍人として放っておく訳にはいかない。

ああ、それでもシステムが複雑すぎる。

これを……確かこうやれば……っと。

よし、これでないよりかは多分マシ……なはずだ。

 

「って、あああ駄目だ! 全然レーダーが役に立たん! それにカメラはサブだから精度が悪すぎる!」

 

しかし、コクピットハッチを全開にするよりはマシだろう。……流石に細かいデブリや流れ弾は怖いし。

……どうやらドムに動きはない。あちらも手こずっているのだろうな。

 

「悪いなあ……! ガトーさんよお…!」

 

サーベル電力を流し、最大出力で突っ込む。

狙いはコクピットだ。絶対に逃がしはしない…!

 

「死ねえええ!!」

 

サーベルがぐさりと電子音と共にドムの装甲を易々と貫く。

感触は意外とあっさりとしたものだった。

正直予想外過ぎて驚いてしまったくらいだ。

夢幻だろうかと疑ったが、ドムの爆発による衝撃は確実に現実のものだった。

 

 △▼△

 

目の前で青いドムが爆散する。

信じられない光景だった。

うだつの上がらない一MSパイロットの彼にとって彼のエース――アナベル・ガトーは間違いなく己の英雄とも言うべき人間だった。不屈であり、強靭。大尉でありながら基地司令のドズル・ザビ中将の信任厚き稀有な士官でもある。

 

―――だからこそ目の前の光景に対し、彼は嘆くことしかできなかった。

 

「大尉ぃ……。あなたがいなければ意味がないんですよお……。」

 

仇討ちをしようともそれは敵わない。

何故ならバラバラになっていた連邦軍が纏まりを取り戻し、こちらに向かってきている。

多少MSの動かし方に慣れているだけではどうしようもないほどの物量だ。

 

『…曹…! ……、聞……て…るのか…! ……!』

 

彼は目の前にいる連邦兵が憎かった。

それ以上に迷って何も出来ていない中途半端な自分がそれ以上に憎らしかった。

 

『軍曹! 聞こえているのか!』

 

『は、はいいッ!! って大尉!? 何処に、何処にいるんですかってうわあっ!!』

 

『……まったく何処を見ていたんだ貴様は……。』

 

 ▼△▼

 

俺がエースを撃破した後、再び纏められた連邦のMS部隊がやって来た。

どうやら俺がエースを抑えている間に上手くやれたようで何とか敵部隊を撃退でき、俺への援軍としてやって来たらしい。

正直、助かった。

ドムの爆発により、機体が完全に駄目になった。もうピクリとも動かないのだ。

基地に帰ろうにもマシンの燃料的にも不安で、本当にどうしようか悩んでいたところだったからな……。

 

「やったじゃねえか! レン! お前もエースか!」

 

ルナツー基地に戻るとカロッソが後ろから背を叩き、陽気な表情で俺を祝福する。

他のパイロットも同様だ。

宇宙戦での初の黒星ということもあって皆のテンションが高い。

 

「……どうしたんだ? あんまり喜んでないみたいだな。」

 

「あ? あーー……。何というか、勝った気がしないんだよなあ……。」

 

「勝った気がしないなんて変な奴だな。MSは破壊できたんだろ? じゃあお前の勝ちなんじゃないのか?」

 

「いや、何か引っかかるんだよなあ……。」

 

「ガハハハ! 若造! そんなこと気にするな! 今は喜べば良い!」

 

それで良いのか兵士たち……。

それに最後の奴、かなりのベテランだろうが。少しは何か無いのか? というかあってくれ。

 

 △▼△

 

ルナツーの執務室。

基地司令官であるワッケイン少将はモニター通信を用いてジャブローの高官とビデオ通話をしていた。

内容は勿論、今回の戦いとこれからの大反抗作戦についてだ。

 

『そうか……。まさかジオンがルナツーに攻め込んでくるとは…。』

 

「はい、今回は何とか撃退できましたが……。こちらの損耗も激しく、正直な所、次は厳しいかと……。」

 

『……補給と増援か…。難しいな、ジャブローを始めとする工廠で艦隊の八割以上は再建できたが何処から打ち上げるべきか……。』

 

『うむ、それが問題だな。ワッケイン司令、我等はおよそ一か月後の八月にオデッサを攻める予定だ。それまで持ち堪えてくれんかね?』

 

「な!? エルラン中将! 流石に無理です!」

 

『ハッ! そもそもを言えば貴官にこそ問題があるのではないのか? 折角宇宙に残したティアンム艦隊やレビル艦隊の生き残りまでいたのだぞ? それらは全て間違いのない精鋭。それを上手く運用できないワッケイン少将貴官こそ問題なのでは?』

 

ワッケイン少将はエルラン中将の意見に口を挟まない。

彼も思っていたことなのだ。自分でももっと何かできるのではないか、と。

 

『待て、エルラン。身内で争っても仕方がないだろう。』

 

『マクレガー大将のいう通りだ。エルラン君。それにワッケイン少将はよくやっている。』

 

マクレガー大将とレビル大将がエルラン中将を窘める。

エルラン中将も上官に言われては何か言うこともできず、そのまま口を閉ざす。

 

『ではワシが行きましょう。ワシの艦隊は既に完成し、後は打ち出すのを待つだけ。訓練も十分であると自負しております。』

 

『な!? 正気か!』

 

『ボーマン提督、死にに行くようなものですぞ!』

 

『そうだ。それに適任は―――』

 

『はっはっは、ご冗談を。ティアンム中将。あなたほどの人を失う訳にはいきません。ここはワシが適任なのです。』

 

「ボーマン中将……。」

 

『……分かった。しかし、ボーマン中将だけでは心もとない。トーゴ准将、お願いできるかね?』

 

『自分が、ですか。……承知いたしました。』

 

その後もつつがなく会議は進行した。

 

 

歯車が動こうとしている。

錆び付いた歯車は誰にも気づかれることなく、その体躯を震わせ、運命の頸木を兵士たちにかけていく。

その結末は、果たしてどうなるのかは、誰も分からない。




ここまで読んで下さりありがとうございます!

アンケートをしてくださった方は更にありがとうございます!
これからはできるだけ本編の更新を頑張ってきますのでこれからもよろしくお願いいたします。

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