ジオン襲来から三日あまりが経過した。
勝利したと言っても防衛戦で、しかも基地内に敵を招き入れたためかなりの被害が出た。
「……虚無だ。凄く虚無の中にいる……。」
MS部隊も言うに及ばずで俺は現在戦闘用に改修された作業ポッド―――ボールのテストを行っていた。
俺の乗機のジムは修理に時間がかかるらしく、代わりの機体をあてがわれたのだが……。
まさかのボールだった。
技術者曰く補給も満足に来ない以上使える物は何でも使わなければならないということらしい。
……せめてガンキャノンが良かったのだがどうやら取って置いたものは全部分解するか既に配備されたようで元ジム乗りは全員ボールに乗っていた。
言うまでもないが俺達の評価は動く棺桶。正直乗りたくない。
早くジム、いやMSに乗りたい。
『少尉? 少しは真面目にやってくれませんかね?』
『真面目にやってこれだよ!! というか我慢の限界だ! もっとマシにならないのか!?』
『それでも十分改善したんですよ? というかあなた達の要望全部聞いていたら
『俺達に死ねってか!?』
『はい、死んでください。』
『んだとゴラあっ!! 手前をぶっ殺すぞ!』
『俺達はモルモットじゃねえんだよ! このヒョロガリが!』
不味い。苛々していたせいかかなり適当な反応をしてしまった。
おまけに周りのパイロットまで切れてる。
いや、分かるけど! セイバーフィッシュⅡ以下の火力にガンタンク以下の機動力と運動性。極めつけにMSですらない。切れるのは正当だ。
だが、技術屋たちの言い分も一理あるのだ。
なにせ兵器は金がかかる。特に現代兵器と分類されるものはその中でも更に金がかかる。ミサイルや軍艦、MSと最早目が回るなんてものではない。
原作で執拗に低コスト化を進めていた理由が分かった気がする。
……まあ、今の俺は兵士だから知っている上で文句を垂れるのだが。あれ? 一番質悪くない、俺?
『うるせえ馬鹿ども! 一々高いマシンを破壊しやがって! 少しは反省しろッ!!』
『『『んだとゴルアッ!!』』』
……あー、もーどうにでもなーーれ。
俺は知らない。うん、知らん。
というか流石にこうなるとは予測できるか。
……いや、できたな。うん、知らん。知らないということにしておこう。
△▼△
そしてその次の日のことだった。俺達は全員驚愕していた。
「なあ、それはマジなのか……?」
周りが中々何も言おうとしないので俺が聞いた。
声が震えていた。正直、来ないと思っていた。いや、来るにしてももっと時間がかかると思っていた。
「ああ、マジらしい。エドワード・ボーマン提督率いる宇宙艦隊が今日の午後にでも到着するそうだ。……しかも物資に加えて新型艦や新型MSまでいるって噂だ。」
「マジかよ……!」
「俺達は見捨てられてなかったんだ……!」
「よっしゃあ! 連邦万歳! まだまだいけるぜえ!」
それを聞いた俺達はそれはもうはしゃいだ。子供かっていうくらいにはしゃいでいた。
なにせここ数日あらゆる物資を切り詰めるという発表がされたのだ。その範囲は凄まじく、薬品や衣服、果ては酒や煙草といった娯楽品も含まれる。一部の不良軍人どもは不満そうにしており、後一週間もすれば暴動でも起きるんじゃないか?というくらいだった。
そんな状態で補給が来ると分かれば誰だってはしゃぐ、勿論俺もはしゃぐ。
「コラっ!! 何をしとるか!」
その後上官が来るまではしゃいでいたおかげで、俺達全員が大目玉を食ったのは言うまでもないだろう。
▼△▼
「うおお……! すげえ…!」
「あれはペガサス級か……? それも四隻あるぜ。」
「見ろよ。新型空母まであるぜ! ビーハイヴ級か……。形は変だが十分よさそうじゃねえか。」
「そんなことよりMS見に行こうぜ。俺たちゃパイロットなんだからよお。」
訓練などの一日のスケジュールが終わった後、ドックに行ってみると他にも多くの兵士たちがいた。
どうやらみんな考えることは同じらしい。
「おお、アマキ少尉じゃねえか。あんたも見に来たのか?」
「ん? ああ、そうですけど……。ええと貴方は?」
「ああ、あんたのことは有名だからな。面識はなくとも知ってるやつは多いんだよ。」
「アンタがあのレン・アマキか! あのエース殺し!」
ちょっと待てなんだエース殺しって。
何? そんなに有名人なの、俺?
「そりゃあ有名に決まってるだろ。俺達はアンタのおかげで生きているんだぜ。」
「ああ、お前がたった一人でエースに立ち向かってくれたおかげさ!」
「そうだぜ! それにエースを撃破しちまったんだろ? いやあ、すげえなお前!」
何だろう。こんなに褒められたことが無いから思わずニヤけそうになる。
ヤバい滅茶苦茶こそばゆい。
「と、とりあえず格納庫の方に行くわ! よく考えたら俺パイロットだしな!!」
「あ、逃げた。」
△▼△
あー……。えらい目に遭った……。
取り合えず格納庫へ逃げてきたが……。
「壮観だな……。」
ジムにガンキャノンは勿論、重装型ガンキャノンにジム・キャノン。さらにはジム・スナイパーカスタムまでいる。
よく見たらジムも仕様が若干違っている。どうやら地上で生産された正式な量産タイプらしい。
「おいおい、サンダーボルト版のジムまであるぞ……。エドワード・ボーマン提督って言ってたからもしかしたらなあって思ったけど……。」
サブアーム付きの大型バックパックを装備した正にオーバーテクノロジーとも言うべきド級機体。
機体色も青だし、小型デブリ対応のためにシーリング処理やバルカンの廃止がされている。
「ありゃ、アマキ少尉。作業していないからってヘルメットも無しじゃ危ないですよ。」
「ああ、すみません。……ん? ああ、あなたは確かナイチンゲールの……。」
「ええ、そうですよ。でも少し前に配置換えで基地の方に移動したんですよ。」
「あ、そうでしたか。しかし、凄いですねこのMSは。壮観です。」
「ええ、確かにこれは凄い。それに物資が搬入されてルナツーの工廠もフル稼働していますからね。もっとすごくなりますよ。」
「へー、それはまた……。」
不謹慎かもしれないが正直ワクワクしている。
ガンダムオタクであるのも勿論だがこれはどちらかと言えば兵士の性か?
「あ、そう言えば整備長があなたのことを探していましたよ。」
「整備長? ナイチンゲールの?」
「ええ、どうやら修理がほぼ終わったそうです。今からでも行ってみたらどうですか?」
▼△▼
軽空母ナイチンゲールの格納庫内は騒がしく雑多であった。
整備兵たちが声を上げ、MSの修理を行う。
使えないパーツを運び出し、新しいパーツを運び入れ、実際に装備させていく。
「ああ、いたいた。整備長! 何か用ですか?」
「ん? ああ、アマキ少尉か! お前のMSができたんだよ! ほら、あっちだ!」
整備長が指さす方へ向かう。
そこにあったものは―――
「ガン、ダム…?」
「? ああ、すまねえな! そいつ、ガンダムじゃねえんだわ!」
「へ? でも頭は……。」
「ああ、頭だけガンダムなんだよ。そうさな……強いて言うならばガンダム・ヘッドか?」
「ガンダム・ヘッド……。何ですかソレ……。」
「おいおい、露骨にテンションが下がったな……。まあ、仕方ねえか。それでも性能は上がってるぜ。何せコイツ一部RX-78の型落ちを使ってるからな。ほらバックパックなんてまんま同じだぜ。それに姿勢制御スラスターの増設だってしてある。」
「あ、本当だ……。……これならやれそうだな。」
確かに肩はサンダーボルト版のジムと同じように大型化しており、脚部やバックパックのスラスターの数も増えている。間違いなく機動力は向上しているはずだ。
「ただ、コア・ポッド―――最新の脱出機構は備えていないから気を付けてくれよ? まあ、エースを殺ったアンタなら大丈夫だろうがな!」
整備長、アンタもかよ。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
最近は筆の進みが良く、このペースを維持していきたい所です。
それでは、また次回!