立て続けに爆発が三つ生まれる。
どうやらカロッソの奴が増援を早速全滅させたようだ。
……早すぎない?
こっちは敵エースまだまだ健在何だけど……。
『隊長……! 駄目です、狙えません!』
『ああッ!? じゃあ、要らないな! 別の場所の援護に行け!』
『隊長が離れて下さいよぉ!』
いや、でも離れたら――ってうおおおっ!
ああもう一番の取り柄のスピードを封じているのに此処まで苦戦するとはねえ……!
ビームサーベルを振るい、ヒートホークの斬撃を防ぐ。
パワーは断然ガンダム・ヘッドの方が高く、サーベルが二本あり手数の多いというのに全然抑えきれない。
「だあああああッ!! いい加減に、死ねええええ!!」
防御を捨て、無茶苦茶にサーベルを振るう。
流石に二刀流の攻撃は受け流せる訳が無く、何かを斬り落とす感触を得る。
左腕だ。黒いザクの左腕が漂っている。溶断された跡がある。
つまり、俺が斬り落としたのだ。
戦力は三割減といったところか?
「そして、こっちはほぼ無傷。……あの時の借りを返すぞ、狩人。」
再び、二本のサーベルで斬りかかる。
流石に厳しいのか、動力パイプや装甲へサーベルがかすり始める。
ブースターをふかし過ぎたのか、ザクに胴体がぶつかる。
間髪要らずに蹴りを入れられ、距離が離れる。
……って、不味い!
距離が生まれればあの加速が来る!
「させるかああああッッ!!」
襲い来る衝撃を無視して、アクセルを踏み、接近する。
機体の胴体と胴体がぶつかり、パイロットの俺にも衝撃が襲い、気が遠くなりそうになる。
でも距離は潰せた。
零距離からサーベルを振るう。
二本からなる斬撃は複雑かつ凄まじい数を誇り確実に殺す――はずだった。
「腕が!? 馬鹿な、何処から……!」
後、一歩でザクを両断できるという所でジムの腕が破壊される。
動きに耐え切れず自壊したのではない。
超長距離からの狙撃で破壊されたのだ。
「くっ……! 何処からだ……!? ――『二等兵! 敵の狙撃だ、何処からか分かるか!?』」
大声で回線を回すが、応答はない。
クソッ、ミノフスキーが濃すぎるのか?
「ッ!?」
鋭い殺気を感じ取り、機体を動かす。
直感に従って正解だった。
動いた瞬間に銃弾が通り過ぎたからだ。ビーム弾ではないが、超長距離からのスナイプなど一発でジムなぞオシャカだ。
「……駄目だな、チキンレースをするにはやられ過ぎた。狩人も撤退したし、味方も交代を始めてる。潮時だな。」
△▼△
母艦へ帰投する途中、他の部隊も帰投していた。
中にはカロッソの小隊も含まれていた。
どうやらカロッソの所は部下二人とも無事らしい。
『カロッソ、無事だったか。』
『ああ、日々の訓練の成果がやっと出たぜ!』
カロッソは余程嬉しいのか自身の戦果を自慢する。
実際、キャノン一機でザク三機は大戦果と言ってもいいだろう。
『……なあ、お前の所と一緒に行動していた奴知らねえか?』
『そう言えばいねえな。なあ、お前たちは知らねえか?』
『『……。』』
カロッソの部下二人は何も言わない。
顔を背け、青くして。
俺はそれで察した。
しかし、何処か楽観していた。
あれだけ訓練を積んだのだ。
何処かで落伍したか、補給で先に戻っていると。
▼△▼
結局、二等兵は戻ってこなかった。
少尉は無事だったが、彼だけは戻ってこなかった。
艦橋に行って確認してもらったが、
「レン、入るぞ。」
自室にてベッドの上で蹲っているとカロッソがずかずかと入って来る。
「……なんだ、どうした。」
「お前の部下、死んだだってな。」
「ああ、死んだな。それが? 笑いにでもきたのか?」
「そう言えば満足か?」
「ーーーッ!! うるっせえ、お前に俺の気持ちが分かるかよ! 覚悟したはずだった。これは戦争だ。誰も彼もが死ぬ! 俺も彼も殺した。ならこれは当然の報いだろうさ! でもな俺はずっと逃げていたんだ! 戦争からも覚悟からも何もかも!! 所詮己には違うと高を括っていたんだ!!」
そうだ。
俺は逃げていた。
戦争を真面に見ながら見ていなかった。
所詮フィクションの延長線上と心の底で笑っていた。
その証拠に、俺は今までの部下達の
「俺は一度も! 部下達を見ていなかった! 見たくなかった! 死の責任など背負いたくなかったからだッ!! そうだ、あいつは俺が殺したんだ。俺は、何かしてやることもできなかった。エース気取りで命一つ守れなかったんだ!!」
一頻り怒鳴り、ふと冷静になると俺は
不条理な怒りをぶつけてしまった、と俺が後悔するにはもう遅かった。
「レン。俺も部下を二人失った。」
しかし、カロッソは決して怒らなかった。
それどころか優しい声で俺を諭す。
「正直、お前ほど深く考えていなかった。達観してるんだろう。軍人の道を選んだ時から、所詮俺達は消耗品だと。」
「でもあの時、辛かった。苦しかった。足を止めたくなった。……部下共に無事なお前を呪いそうになった。」
「でも違うんだ。そうじゃない。そうしたら俺はあいつらに報いれない。でもな、レン。俺達はあいつらに報いることは出来ないんだ。もう何処にもあいつらはいないんだから。」
「なら、必死に生きようぜ。折角生き残って、あいつらの死を無駄にしないように、同じ失敗をしないように。必死に懸命に。」
そう言ってカロッソは出ていった。
俺は少しの間、友の言葉を脳内で反芻し、部屋から飛び出した。
△▼△
「少尉。いや、グレム・ハヤシ少尉。」
俺が向かったのは残った部下の部屋だった。
少尉は、いやグレムは何時もと同じ様子だった。
「え、レン。どうしたんだ?」
「俺を殴れ。」
「はあ? 一体どうした?」
「ケジメだ。良いから早くしてくれ。」
「……はあ、分かったぜ。」
そう言ってグレムは拳を握り、思い切り振るう。
奴の拳を受けるために思い切り歯を食い縛る。
……しかし、俺の鳩尾に奴の拳はめり込んだ。
「がはっ……!! おい、何で鳩尾……!? 普通、顔だろ……!?」
「え、いや歯を無くしたら大変だろうなって思ったからさ……。」
やべえ、結構良いのが入ったせいで息ができない。
全く本当に締まらないな、これ。
「……もしかしてコイツのこと気にしてるのか? あんまり気にしても仕方ないぜ。そういうもんだろ、戦争って。」
「確かにそうだ。―――でも、俺は嫌なんだ。だから死なないでくれ。俺も、死なせないようにする。」
真っ直ぐ、俺は部下の目を見る。
グレムはそんな俺の様子に呆れたのか、一つ溜息を吐く。
「全く気にしなくていいのにさ。苦労するぜ。……でも、まあ、期待しているぜ、隊長?」