サイド6へ赴くのはナイチンゲールだけではない。
そもどうやらガンダムNT-1は三機製造されたらしい。
それぞれが別々のコロニーでテストをされたようで俺達が請け負うのはリボー・コロニー。
そう、名作と名高い『ポケットの中の戦争』の舞台となるコロニーである。
「しっかし、一体何時新型をサイド6に送り込んだんだ?」
話を聞く限り、八月か九月頃には運び込まれ最終チェックが行われているそうだ。
テム・レイが一枚嚙んでいるとはいえ本当に開発が早い。
ルナツーにもジム改やジム・コマンドが少数ながら配備されている。
それに
「だけど、よりによってかあ……。」
今の俺の立ち位置は彼の有名なスカーレット隊の代わりだ。
ジオンは掴んでいないようで特に情報は回ってきていないから心配するだけ損だろうが……。
まあ、警戒するに越したことは無いだろう。
△▼△
「全く、サイド6の連中はこれだから……!」
入港と多少の作業を終えた後、艦長―――ジェイナー・エルグランデ大佐が声を荒げる。
予想通りサイド6の連中にいいように言われたようでご立腹のようだ。
因みに俺達が此処に来たのは休暇という体であるため中には街に繰り出している者もいる。
艦に残っているのはローテーション上、残留の当番の者のみだ。
「……そんなに酷かったんですか、艦長。」
「ああ、酷いもんだった。あいつ等口を開くたびに罰金、罰金だ! あの平和を守っているのは誰なのか分かってんのか!?」
おおう、随分ご立腹だ。
まあ、原作乖離の激しいこの世界ではどうなっているのか気になっていたが……。
この様子ではどうやら原作準拠のようだ。
「ははは……。まあ、こちらも強気に出ようにも出れませんからね……。」
「ちっ……。見てろよ、戦争が終わったら連中に目にもの見せてやる……!」
程々にお願いしますよ。いや、マジで。
正規軍人が一般市民を脅すのは、ねえ。
▼△▼
「お前も奇特な人間だな、レン。扱えもしないMSなのに見てるだけで楽しいのか?」
格納庫にて整備長が俺へ呟く。
俺が見ているのは格納庫に納められたアレックスだ。
他機体には見られない独特な色合いは武骨な増加装甲―――チョバムアーマーで覆われている。
ペーパースペックは唯でさえ高性能なRX-78-03をも凌駕しており、備考欄には反応族度が異常とも記入されている。これだけ見ると一体誰が扱うんだと言わんばかりのモンスターマシンである。
……しかし、今の天パ―――アムロ・レイならば涼しい顔で扱うのだろう。
あのイカレ主人公の活躍は原作と変わることなく、敵エースを次々と撃破。
宇宙に上がる直前にはマ・クベ中将とその麾下の軍団を諸共倒したとか。
もうリアル路線ではなくスーパー路線一直線である。
「楽しいって訳じゃありませんが……。まあ、面白いですよ。昔からこういう説明書を読むのが好きだったんでね。」
「へえ、そうかい。ならお前さん、パイロットじゃなくて整備兵目指せばよかったじゃねえか。」
確かにそうだ。
しかし、これは元居た"レン・アマキ"ではなく"俺"の趣味なんでな。
いや、もしかしたら彼も俺と同じように説明書好きだったのかもしれない。
まあ、確かめるなんてできないけど。
「しかし、MSパイロットが少尉含めて二人ですか……。あの、今ジオンの襲撃喰らったら不味くないですか?」
比較的若い整備兵が俺達に声をかける。
どうやら作業は一段落したようだ。彼以外にも複数の整備兵や技術士官がやって来る。
「馬鹿野郎、腐っても此処はサイド6だぞ? 幾らジオンでも中立コロニーには攻撃してこねえよ。」
「整備長のいう通りだぜ、流石に証拠も無く動くはずがねえよ。それに不興を買ってベンガミン商会を始めとした軍需産業を敵に回すことはしないさ。」
「まあ、そうだろ。……それよりもこの新型、NT-1、だっけ? 凄い性能ですね。あのアムロ・レイとか言うニュータイプでも動かせないんじゃないですか? 実際、腕利きのテストパイロットなんてロクに使えなかったそうですけど。」
「いや、噂じゃあマグネットコーティング済みの3号機でも性能不足の節があるらしい。そんなバケモノなら流石に扱えるんじゃねえのか?」
「ジオンのエースを軒並みぶっ倒したのは事実っぽいな。てっきり戦意高揚のプロバガンダかと。」
「あの戦果じゃあな……。誰もできねえよ、ありゃあ。」
『談笑中すまないが、緊急事態だ。』
「「「―――ッ!?」」」
下らない雑談に花を咲かせていると不意に艦長の声が響く。
どうやら艦内放送のようだ。
しかし、緊急事態だと? 一体何が起こったんだ?
『ジオンの艦隊だ。重巡と軽巡の軽い編成だ。MSの出撃準備、急いでくれ。準備が出来たMSは艦の外に待機だ。街へ繰り出した連中を回収次第出航する。』
ええ、マジで?
幾らジオンとはいえ、中立地帯に攻撃仕掛けてこない―――いや、待て。
これもしかし無くとも核攻撃じゃねえの?