今年こそは一年戦争編を完結できるよう頑張っていきます!
大変遅筆ですがお付き合い頂ければ幸いです。
ティベ級重巡洋艦一隻、ムサイ級軽巡洋艦二隻、ムサイ改級軽巡洋艦一隻の計四隻。
これがリボー・コロニーに接近するジオンの艦隊の構成だった。
空母や戦艦はいないが、戦艦に次ぐ火力を持つ重巡。しかもティベ級は旧式戦艦を改装したチベ級の改修艦だ。
MS戦に対応しているとはいえ、嘗てのミサイル火力を全部撤廃しているとは思えない。
……想定しなければならないだろう。
恐るべき核攻撃を。
南極条約は半ば形骸化している。俺の知る限り、では。
これは原作知識によるものではなく、既に地球各地でジオン将兵が脱出や撤退の際に核または水爆を用いたことを知っているからだ。
勿論、杞憂に終われば良い。というか杞憂に終わって欲しい。
幾ら何でもサイド6に核攻撃はやり過ぎだ。
中立を謳いながらも、連邦に協力したのは腹立たしいだろうが、もっと真面な方法で報復して欲しい……。
「相手もMSを展開か。こちらは五機、あちらは最低で十五機、か。一人三機。言うのは易いが、なあ……。」
MSに乗り込み、レーダーを使い敵の把握をする。
戦力差は絶望的だがこうも言ってられない。
気を重くしていると、
『アマキ少尉、カロッソ少尉たちが戻った! 直ちに出航せねばならん。しかし、MSの展開には時間がかかる……。少尉のガンダム・ヘッドは前衛に出て相手の気を引いてほしい。出来るな?』
『うへえ……。まあ、努力します。』
『済まないな。だが、これもガンダムの宿命だ。頑張ってくれ。』
ガンダムの宿命ねえ……。
俺の機体、七割方ジムなんだけどね。ガンダムなの頭だけよ?
無茶を言わないで欲しいなあ……。
△▼△
「メディウス中佐。連邦の艦が動きます!」
「やっとか! 待たせやがって……! ―――サイド6の領域を出た瞬間に一斉攻撃だ。MS部隊に砲兵班、何時でも撃てるように準備しておけよ!」
「「「了解!!」」」
「し、しかしサイド6近辺での戦闘行為は大丈夫なのでしょうか?」
若い士官がメディウス中佐に恐る恐る質問をする。
しかし、血気盛んな艦長は質問を一笑の下に退ける。
「問題ない。我等が攻撃するのは連邦の側面からだ。間違ってもコロニーには当らん。それに何か言っても問題ない。連邦の庇護にある連中に力を示せばいいだけだし、最悪この艦で核攻撃すれば黙るだろうさ!」
強い語気からなる言葉に気の弱い士官は直ぐに黙ってしまう。
核攻撃というワードに少し反感を抱くも、間違いを正せるはずもなく、一歩後ろに退く。
その行為を納得したと捉えたメディウス中佐は気をよくして連邦の艦―――ナイチンゲールを見据える。
「……しかし、何だアレは? バランスが台無しではないか。あれでは直ぐに終わるだろうなぁ……。全く、折角の初陣だというのに。」
メディウス中佐がぼやく。
そしてそのボヤキに別の士官、操舵手が答える。
「まあ、良いじゃないですか。正直、
「……それも、そうだな。」
やり取りをする彼等の顔は苦々しく、サイド6の役人達にいいようにされた過去を苦々しく思っている証拠でもあった。
「艦長、射程範囲内に入りました! 砲撃班、何時でもいけるそうです!」
オペレータが何時でも火蓋を落せると知らせる。
ナイチンゲールは撃ってこない。ならば機先を制するのは我等と言わんばかりにメディウス中佐は声を上げる。
「メガ粒子砲、放て! 一斉射後にはMS隊で片付けろ! あくまでも目標は敵に新型だ、そいつを狙え!」
メディウス中佐の命令に勢いよく応、と返事が返る。
声の大きさや質感からして士気が高いことがよく分かる。
そして高いのは士気だけでなく戦闘技術も高い。
編隊の動きはブレることなく、かと言って固い訳でもなく。
戦端が開かれるまで、そう時間はかからなかった。
『ガンダム!? コイツが
『待て、そいつは違う! 新型じゃない!』
最前衛にいる連邦機は一機。
レン・アマキの駆るガンダム・ヘッド。
ジオン兵のガンダムに対する恐怖は凄まじく、たとえそれが偽物であっても一瞬の隙を晒す。
そしてそれをレンが逃すはずもない。
確殺のビームスプレーガンが閃光を放つ。
しかし、彼等ジオン兵の練度も高い。
すぐさま
MS-14S ゲルググ初期生産型。
統合整備計画に組み込まれたジオンの最終量産機、その先行量産試作機。
ガンダムにも迫る性能を持つ傑作機だ。
それが、十五人の手練れが駆っている。
レンは直ぐにそのことを―――絶望を否応でも理解した。理解させられた。
レンは人知れず、歯噛みをした。
▼△▼
ゲルググの性能はピカイチだ。
装甲、機動力、汎用性。ガンダムに匹敵する性能とはよく言ったものだ。
相対している俺が一番理解している。
それに……十五機は流石に多いかなあ!?
お手玉の範疇を超えてるぜえ!?
『レン、待たせたな。少し下がれ!』
俺が苦戦する様子を見かねてカロッソから通信が入る。
ミノフスキーがまだ薄いこの宙域ではレーザー通信は問題なく稼働している。
『……分かった。少し下がる。援護を頼むぞ! だが気を付けろよ、コイツ等は全部新型だ! ザクやドムとは比べ物にならん!』
『クソったれめ、休暇付きの任務だと思ったのに!』
動きに若干無駄があるも慣れない機体を使っているためだろう。
数に技術、機体性能と劣っている俺達が付け入る隙は其処しかない。
当たり前だろう。
幾ら性能が高くともMSを己の手足が如く動かせないならば意味がない。
MSは機動兵器なのだ。移動砲台ではないのだ。
―――それを踏まえ、敢えて運用することになればそれは戦略になるが。
無数の光条が俺達を縫い込めるように輝く。
ナイチンゲールの艦砲射撃とMS部隊の掩護だ。
どうやら有効範囲内まで退けたらしい。
爆発は二つ。迂闊な間抜け野郎はやはり少ないか。
艦に十機、残り三機が俺の足止めか。
残った三機は全員手練れだな。狩人やガトー程じゃないがかなりの
「しかし動きはやはり、何処か拙い……!」
連携は凄まじいはずなのだろう。
本来なら俺が撃墜されているんだろう。
しかし、何となくだが分かる。
動きが一拍遅い。
装備の選択か、回避か防御か、何を迷っているのかは分からないが一瞬のラグがある。
「試してみるか……。」
大人しくかかってくれればいいんだがな……!
△▼△
ジオン兵は焦っていた。
圧倒的に優勢であるはずなのに手こずってしまったいるためだ。
『このガンダム擬きが……! ちょこまかと……!』
『落ち着け、慣れない機体なんだ。もっと慎重に行くぞ!』
『サーベル以外は既存品なのが救いだな……。』
マシンガンやバズーカの濃密な弾幕を展開する。
撃墜ではなく牽制を目的としているため、致命的なダメージを与えることこそ出来てはいないが、レンの動きは制限され、必要以上に精神を削られている。
ザクマシンガンの銃口が火を噴き、弾丸が雨のようにレンへ襲い掛かる。
ラージシールドを弾丸を受けるも、勢いは殺しきれず後退する。
(受けた? 今まで回避に徹していた奴が?)
『―――お手玉はもう限界みたいだな!』
『お前……ッ! チイィ!』
シールド防御を見て一人が逸る。
膠着した状況にイラつきが溜まっていたのか、サーベルを抜刀し、敵を両断せんと迫ってゆく。
それを見た一人は不測の事態に備えるためにフォローに回る。
『しゃああああッ!』
―――一閃。
サーベルが翻り、ラージシールドは容易く溶断される。
対ビームコーティングなぞ無駄と言わんばかりの威力は普通なら恐怖で体を動かせなくなるだろう。
しかし、相手は余人ではないのだ。
彼等と同じ、手練れだ。
『―――なあッ!?』
『離れろ! そいつ―――!』
『チイ……ッ! 言わんこっちゃない……!』
戦場とはダンス会場だ。
ダンスのペアは兵士と死神。
死神の気分次第で首に当てられた鎌は引かれ、血潮を垂らす。
ビームサーベルの光は吸い込まれるようにゲルググを貫いた。
彼は賭けに勝ち、彼は負けた。
▼△▼
ビームサーベルの一突きの後、直ぐに距離を取る。
シールドを失ってしまった以上、数が減ったのに気が抜けなくなった。
爆発を背に接敵する。
左腕を盾代わりに前傾姿勢で突撃する。
ゲルググの兵装はザクマシンガンかザクバズーカないしジャイアント・バズ。
両腕部に二本の小型サブアームがあることからデザインはサンダーボルト版だな。
ナギナタではなくサーベルなのは驚いたが大したことじゃない。
「二つ……!」
近くにいたゲルググをビームサーベルでコックピットを破壊する。
左手に構えたスプレーガンが良い牽制になったみたいだ。
これだけ既存機体と違っていれば最適解を無意識化に求めるパイロットには大層負担だろう。
「取り合えず、ラス一―――うおっ!?」
一息を吐く間もなく、バズーカの弾頭が俺へお見舞いされる。
弾速の遅いザクバズーカで助かったな……。
距離は離れている。
ビーム兵器がサーベルしかないなら撃ち合いはこっちが有利……いやシールドがない以上こちらが不利でしかない。
「あの馬鹿でかいサーベル相手に接近戦か……!」
気が滅入りそうだが、不意打ちも多分通じない。
そもそもそういった策はもう品切れだし。
ゲルググが火器とシールドを捨ててサーベルを手に取る。
成程、相手も接近戦がご所望か。
確かに、この機体はガンダムのパーツを使っているため機動力と運動性は既存機体よりも高い。
一機で作れる弾幕などたかが知れている。故に、その間をすり抜けて接近することは容易い。
「それに連中、サーベルなら真面に扱えるだろうし、な。」
捨てた武装はジャイアント・バズ。
恐らく元ドム乗りか?
厄介だな……。
ゲルググが加速を始める。
そして同時にサーベルを振りかぶる。
こちらも加速……駄目だな。距離が足りない。
「くぅ……っ!?」
こちらもサーベルで応戦し、鍔迫り合いの形になるが……。
不味いパワー差がヤバい。
オマケに勢いも付けられて完全にパワー負けしている。
前身のスラスターを使って何とか相手を受け流す。
相手は受け流されたからといって簡単に体勢を崩すことは無く、そのまま一回転の後に再びサーベルを振りかぶる。
こちらも負けじとサーベルを振るい、応戦するもやはりジムとゲルググの間には如何ともしがたい性能差を理解させられる。
しかも相手もゲルググに対して順応し始めてないか?
明らかに動きが良くなっている、矢張り多少の無茶が必要かもしれないな……。
「ええい……。―――南無三!!」
再びゲルググを受け流―――ってうおおおっ!? ヤバい、ヤバい!!
あんにゃろう、逆に俺を受け流しやがった!
何とか直ぐに一回転をして鍔迫り合いからの距離を取ることができた。
が、冷汗が止まらない。
今、俺は運が良かった。
機体諸共真っ二つになっていないのは本当に運が良かったせいだ。
「……慢心してたつもりはないがな……!」
『レン、不味い。ナイチンゲールがヤバい! 早く戻ってくれないか!?―――ええい、鬱陶しい! おい、そっちに回ったぞ、残りは六機……いや四機か。いいか、つかず離れずの距離を保たせろ! 艦隊戦をさせないようにな!』
成程な……。
向こうも結構ヤバそうな感じだ。
絶対に生きる、そして目の前の強敵を倒す。そして短時間で、かつ機体のダメージと消耗は最小限。
「……ゲームならリセットしてるぜ。でも現実だしな―――死ぬ気でやるさ!」
この世界に来て何度目か分からない決意をして、機体越しにゲルググを睨みつける。
精々、余裕をこけばいい。
その豚鼻、へし曲げる苦労が減るだろうからな!