何とか核弾頭と帰投し、そのままサイド6宙域から離脱できた。
幸いにも追撃はなく、積み込んだ物資に傷がつくことなく目的地にたどり着いた。
余談だがサイド6からは近辺で戦闘したことで大量の苦情を連邦軍は貰ったそうだ。
とはいっても襲って来たジオン軍が100%悪いから言われても困るけど……。
責任を受けて大佐から中佐に降格して三か月間の減給を受けた艦長が戦いから三日はそうぼやいていた。
ナイチンゲールの搭乗員全員の罰を受けてくれたからとても頭が上がらないから、聞いていたけど流石に飽きてきたのだ。
だから要塞に備え付けられている格納庫に俺は避難していた。
元ガノタの俺からすれば実際に動くリアルのMSを見れるのは結構な楽しみなのだ。
そして俺達が運んだMSはアレックス―――ガンダムNT-1だ。
数日後に入港するホワイトベースに格納され、一週間の完熟訓練を行った後にソロモン攻略作戦に投入される。
ナイチンゲールもホワイトベースと共に動くから一週間余りは戦場から離れられるのだ。
「あれを俺達が守ったのか。」
傷一つなく格納庫で整備を受けるアレックス。
連邦の最新技術を余す事無く詰め込み、常人では扱う事すら困難なニュータイプ専用機。
こうやってガンダムの世界に入ってようやくアムロ・レイの異常性を理解できた気がした。
試しにアレックスで設定したシミュレーターをやってみたが、扱うのが難しすぎてジムでやった方が上手くいった。
だけどアムロ・レイならアレックスを使って俺が使うジムの何倍もの働きをするんだろうな。
「アムロ・レイ……あの中学生頃の少年が……人を外見で判断するなって言うけど、なぁ?」
「―――君、アムロを知っているのか?」
声をかけられるとは思わず、びくっと震えてしまう。
あまりに情けない反応だから周りに誰かいたらきっと揶揄われるのは絶対であろう。
周囲に誰もいないことを感謝しながら、ゆっくりと振り向くとそこにはくたびれた雰囲気を纏う技術士官の姿があった。
年の頃は50か60か……どっちにせよ結構な年齢を重ねた人だろう。
だけどそんな情報がなくとも俺はその人物を直ぐに誰か分かった。
いや、間違えるはずもない。
向こうに面識がなくとも一方的に知っているはずなのだから。
「テム・レイ博士……ですか?」
「おや、私を知っていたのか。いや、君は……私を地球に送る作戦の従軍者かね?」
「ええ、その際に博士について少しだけ……。」
テム・レイ博士。
RXシリーズの製造計画の立案者にしてその責任者。
何故か酸素欠乏症にならず、俺達の手で地球に送り届けた人物だ。
「そうか……その件は感謝している。君達のお蔭でRX-78、ガンダムは真の完成を果たした。量産は出来なかったが、ジムのグレードアップは果たした。君達のような若い兵士も無駄に死なずに済むだろう。」
穏やかな表情で俺にそういう博士。
酸素欠乏症の彼の印象が強すぎて一瞬混乱したが、アニメや漫画でもブライト・ノアに対して同じような事を言っていた気がする。
きっと早く戦争を終わらせたいという想いは本当なのだろう。
「ありがとうございます。」
「感謝することはない。私は私の役割を果たしただけだ。君も君の役割を果たすといい……そして、平和な世界で君のしたい事をするんだ。」
平和な世界、か。
原作知識を参照すると百年経っても来そうにない。
でも、軍人として来るように頑張ってみようかな。
そして一週間ほどの短い休暇は直ぐに終わった。
休暇と言っても宇宙要塞内での休暇だからソロモン戦への対策はみっちり行っていたからあんまり休めなかった気がする。
「……いよいよだな、レン。」
「ああ。死ぬなよ、カロッソ。」
「当たり前だろ。お前も死ぬなよ、レン。」
作戦内容は頭に叩き込んだ。
機体もソロモン攻略に向けて改修を受けている。
充分とは口が裂けても言えないが完熟訓練は受けた。
やれることを、頑張ってやろう。
生きるために、死なせないために。
既に大激戦となっている宙域を肌で感じながら、俺はそう思った。
△▼△
俺達ナイチンゲールはホワイトベースと同じ時間に戦線に投入された。
既にワッケイン少将が率いる艦隊が先遣隊として攻撃を加えており、ソロモン艦隊を釘付けにしている。
とはいえ主力艦隊は未だ温存されており、大規模戦闘はまだ始まっていない。
だが後詰めの戦力を前線に配置したということは本体のティアンム中将は既に手を打っている。
つまり、敵本体を引きずり出す準備を終えている証拠なのだ。
『まもなく本隊のソーラー攻撃が始まる。本艦は攻撃後にMSを展開し、その援護に回る。MS隊は敵要塞の攻略が任務だ。ジオンのあなぐら目掛けて突っ込んでいけよ! パイロットは出撃準備、砲座班は何時でも撃てるようにしておけ!』
艦長が艦橋から威勢よく命令を下す。
どうやら訓戒に減給を受けたみたいで機嫌が悪いみたく普段よりも荒々しい。
申し訳ないなと心の中で同情するが、カロッソは笑いをこらえるので大変そうだった。
「おい、笑うのはないだろ。」
「いや、だってさぁ……あれだけ理不尽な目に遭ってたら笑っちまうだろ。」
カロッソの奴、以外と性格悪い所があるなと呆れるしかない。
頼りになる奴だし、信頼しているけど……昔からこうなのか?
「だけど、ソーラー攻撃っつてもどうやって敵本隊を引きずり出すんだ?」
今のワッケイン艦隊は大きくはない。
これでもジオンの艦隊三つ分にはなるが、ジオンが―――というよりドズル・ザビ中将が脅威に思う数ではない。
実際に本隊であるティアンム艦隊はワッケイン艦隊の艦の数だけでも倍はある。
さらに大戦以前から在籍するベテランが多くを占めている正に精鋭艦隊だ。
MSへの適応が遅れているのが弱点だが、それでも強力な戦力である。
『艦長、ドズルの艦隊が出ます! 旗艦グワジンと空母ドロワも確認できたとのこと―――三分後にソーラー攻撃を開始するとのことです!』
『やっとか! MS部隊を展開、砲座の標準を合わせろ! 攻撃後にホワイトベースを中心に攻勢に出る!』
艦長の声に艦内が一気に騒がしくなる。
格納庫の整備兵がカタパルトを準備し、ハッチが開かれる。
六機のMSのためだけに空間が開かれて地獄への片道切符が開かれた。
『準備完了! アマキ小隊、ケリィ小隊、発進急げよ! 流れ弾が飛んでくるからな!』
「そんなに急かさなくとも直ぐにいくさ。」
重装備になって幾分かピーキーになった相棒に辟易としながらカタパルトから射出された。
そして、その瞬間に眩しすぎる光がソロモンの岩盤を焼いた。
凄まじいまでの光量は膨大な熱量を有しており、MSや軍艦を問わずに溶かしていく。
爆発すら許されずに消えていく命はまさに無惨としか言いようがなかった。
「うわぁ……。」
テレビや漫画ではよく見た光景だが、実際に見るとその凄まじさに圧倒される。
直撃して蒸発した連中はまだいいが、下手に喰らって生きている奴は生き地獄。
ソロモン炎上。
呆然している所をカロッソの奴に笑われなかったのはせめてものだった。