機動戦士ガンダム 宇宙の渡り鳥    作:青色のラピス

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第三話

なんとなく窓の外を見る。真っ暗闇の中にたくさんの星がキラキラと輝いている。まるで宝石みたいだ。地球の上や、コロニーの中からでは絶対に見えない宇宙を直接見れる部屋ならではの光景だった。

え?俺がいまどこにいるかって?

なんと俺は現在軍艦――ネルソン級軽空母二番艦ナイチンゲールの中にいる。それも原作には存在しない作戦遂行のために。

なんでそうなったかって?

それは数日前まで遡ることになる……。

 

 △▼△

 

ホワイトベースが出発し、数日がたった頃、テム・レイ博士達が目を覚ました。幸いにも特に障害はなかったらしく、ピンピンしているらしい。

どれくらいかというと元気すぎて、絶対安静と医者から言われているのに抜け出してしまうくらいだとのことだ。

それからさらに数日後。俺はワッケイン司令に呼び出されていた。……何かやらかしたわけじゃないぞ。証拠にカロッソや、隊長達MSパイロットや、整備士、佐官など様々な人間が呼び出されていた。

 

「……諸君、急な召集にもかかわらず集まってくれて感謝する。」

 

全員がそろったのを確認し、司令が重苦しく口を開いた。

 

「レイ博士達が目覚めた、このことを知っているな?」

 

俺達は全員静かに頷く。

俺達の反応を見て、司令も小さく頷き、言葉を続ける。

 

「今次の大戦において連邦は圧倒的に不利な状況と言わざるをえないだろう。……ドミドル中佐、理由は分かるか?」

 

「……ジオンと連邦の主力機の性能差だと思います。我々の既存の戦力では太刀打ちできません。」

 

まさしくその通りだ。ジオンと連邦の国力を比較すると約三十倍以上の差がある。普通は連邦が圧勝してお終いだ。

だが、ジオンは勝利している。ギリギリの辛勝ではなく、圧倒的な快勝だ。しかし,ジオンが快進撃を続けているのは彼らの主力MSザクの力によるものだろう。確かに現在の連邦の主力であるガンキャノンや、セイバーフィッシュⅡ、六十一式戦車とは比べものにならない性能を持つ。実際に戦って肌で感じたわけではなく、原作知識によるものだが、この世界でもその認識は間違っていなさそうだ。

だが、それは()の話だ。連邦が新型量産機を開発すれば戦況は反転する。連邦が今量産しようとしているのはザクを遥かに超える性能を持つ機体なのだから。

 

「中佐の言うとおりだ。……それを覆す、ひいてはこの戦況をひっくり返す方法があるとすれば?」

 

ひっくり返す?

どうするのだ? 連邦の命運を乗せた艦(ホワイトベース)は既に出発し、ジャブローに向かっている。残念なことに原作通り大気圏突入前にシャアの襲撃を受けたらしい。できれば原作と違いそのままジャブローに着いていて欲しいがどうなっていることやら…。

話を戻すが他の軍人達も同じらしく、皆首をかしげている。

 

「今、ルナツー(ここ)にはガンダム一号機とレイ博士がいる。」

 

この場にいる俺を含めた全員の表情が歪む。

 

「ふむ、気づいたみたいだな。そうだ。君達に与える任務は、これからガンダム一号機とレイ博士以下開発チームおよびガンダム一号機のテストパイロットをジャブローへ送り届ける。それの護衛をしてもらいたい。」

 

「無理です!! 先日ホワイトベースがどうなったかご存じないのですか?! 下手をすれば連邦の最高機密と頭脳が宇宙の塵と化しますぞ!!」

 

一人の高官が声を荒げて反対する。

当たり前だ。博打を打つよりも悪質な手だ。

おまけにジオンはホワイトベースが地球に降下したことを受けて地球の周回軌道上に多くの艦隊を派遣するらしい。二度目は難しいなんてものではないだろう。

端的に俺達に死ねといっているようなものだ。

 

「ああ、そうだな。失敗したときの損失は計り知れないだろう。さらに成功確率も低い。」

 

「なら!!」

 

「だが、成功したら? それにホワイトベースが確実にジャブローへ到着できるとも限らないだろう。打てる手は全て打っておくべきだと私は思う。」

 

全員が押し黙る。

全員が目をそらしていたことを指摘されたからだ。もし、ホワイトベースが沈んだらどうしよう、ということを。答えなんてなかった。皆、考えたくなかったからだ。

 

「……このまま戦争が続けばさらに悲劇は広まるだろう。コロニー落としや毒ガスによる虐殺、君達は未来の世代にこれらを味合わせたいのか?」

 

多くの人間が顔を下に向ける。中には顔を真っ赤にしている者も、真っ青にして震えている者もいる。思い出したのだろう、もしくは想像したのだろう、あの悲劇を。

俺も似たようなものだった。

“レン・アマキ”はアイランド・イフィッシュ出身の人間だった。アイランド・イフィッシュはジオンのコロニー落としのために犠牲になっている。彼の記憶が叫ぶ。ジオンを許さない、と。

それは悍ましいほどの憎悪だった。気分が悪くなる。同時に自分を見失いそうになる。いったい俺は誰なんだ?俺は“俺”なのか?それとも“レン・アマキ”なのか?

それとも――

 

「私はこの悲劇を未来へつなぐことを良しとは思わない。……君達も同じ結論に至ったみたいだな。」

 

司令の声ではっと正気に戻る。

周りを見ると全員がどこか悲壮な、されど決意を秘めた表情をしている。

 

「よし、それでは作戦を説明しよう。ファーウェイ少佐、頼む。」

 

「分かりました。では――

 

 ▼△▼

 

と、いうわけで俺は今軍艦の中にいる。

ちなみに地球に降下した後のことだが、その後は全て現地の友軍に任せるらしい。仕方が無い。ルナツーに大気圏突入が可能な軍艦(ペガサス級)などないからな。……おそらく、そこにいる友軍からはさぞかし文句を言われただろう。

作戦に参加しているのはサラミス級一隻にネルソン級が二隻だ。少しでも早くするために戦艦は含まれていない。

 

『総員第一種戦闘配備!! MSパイロットはコクピットに待機してろ!! 今から護衛対象が大気圏に突入する!! 不測の事態に対処できるよう準備しておけよ!!』

 

艦長からの艦内放送が入りる。

どうやらこのまま何も起こらず終わりそうである。足の速い艦のみで構成したのが功を奏したみたいだな。

 

――数刻後、あんなことになるとは誰が思っただろうか。

せめてもの救いは護衛対象を守り切ることができたことくらいだろう。

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