サラミスからカプセルが飛び出し、重力に引きずりこまれていく。
……どうやら何もなく終わったようだ。ここに来るまで一度も襲撃を受けなかったため、最後の最後で何かあるのではとビクビクしていたが杞憂に終わりそうだ。
『なぁー、レンー。暇だーー。』
暇を持て余したカロッソが絡んでくる。
まぁ、MSに乗って宇宙の中に漂っているのだが、何もない。そうなるのは仕方が無いだろう。
『お前、作戦行動中に勝手に回線使うなよ…。後で隊長にどやされるぞ。暇なのは分かるがあと少しで戻れるんだ。我慢しろよ。』
『チェッ。相変わらずお堅いことで……。』
ぶつくさと文句を言いながらカロッソが通信を切る。まったくコイツは……。悪い奴じゃないんだが色々とルーズなところがあるんだよなぁ……。
『おーい、お前達。そろそろ帰投するぞ。』
どこかやる気の抜けた声で隊長が俺達に声をかける。……やれやれ、やっと終わりか。
でも、油断は禁物だ。帰りに何があるか分からないからな。
その瞬間、轟音を伴い一つの光が生まれた。
それも俺の目の前で。
△▼△
『なんだ?! 何が起こった?!』
『隊長? 隊長ーー!!』
『誰か指示をくれッ!! 俺達はいったいどうしたらいいんだぁーー?!』
『野郎、どこか――
間髪入れずにまた一つ光が生まれる。
一瞬で二機破壊された……。
でも、レーダーに反応もない。ここら辺はミノフスキーの濃度は低い。レーダーはまだ使える。
……くっそ、いったいどこから撃ってきたんだ?
『全員落ち着け!! そして散開しろ!! このままだと全員打ち落とされるぞ!! 早くしろ!!』
他の小隊の隊長が俺達に指示を下す。
パニックになりかけていた俺達はそれで少しは冷静になれたのだろう。
何も言わずに行動する。
デブリが少なく、隠れることができないのは痛いな……。機動力はザクの方が上なため、こそこそと打ち落とすしかこっちには打つ手がないのである。デブリがあったならこの物量を活かしてチマチマと執拗な攻撃ができたものを……。
『おい! アレを見ろ!!』
一人が叫び、指をさした。
黒いザクがとんでもないスピードで迫ってきていた。
それを見てその場にいる誰もが確信した。
アレはジオンのエースだ、と。
▼△▼
『総員ッ!! 黒いザクに照準を合わせろ!! 俺の合図で一斉射だ!! 一気に
再び指示が入り、俺達はその通りに行動する。一応俺達は正規兵だ。どれだけテンパっても指示さえ入れば訓練通りに動けるようにはなっている。
『撃てぇぇぇーーー!!』
ガンキャノンの両肩にあるキャノン砲が火を噴く。
火力は流石のものでザクなんて一撃で御陀仏にできる威力を持つ。スピードも中々のものだ
いくらエースといえどもこれだけの数ならば……!
しかし、そんな俺達の期待を裏切り、指示を出していた機体が木っ端微塵になる。驚愕して誰も声を出せずに呆然とする。
『嘘……だろう? なんで…嘘だ……。』
誰かが必死に絞り出した声を聞いて俺は正気に戻った。他にも正気に戻った奴もいたみたいだ。
しかし、直ぐに恐怖に支配され、デタラメに弾を撃つ。
狩人からしたら今の俺達は格好の獲物だろう。あっという間に三機が狩られる。
『ぎゃあぁぁっーー!!』
『カロッソ?!』
カロッソの機体が被弾し、動きが止まる。どうやら足を
『クソっ! 化け物めッ!』
ザクに向かって殴りかかる。
しかし、あっさりと避けられる。
『早く逃げろ! 早く!』
『あ、ああ。 すまない!』
カロッソが急いで逃げていく。しかし、足がないため、スピードが出ていない。
しかし、黒いザクはカロッソに見向きもしない。バズーカを捨てヒートホークに持ち替えている。
……不味い、接近戦になればガンキャノンがザクに勝つことはほぼ不可能だ。おまけに相手がエースともなればそれはさらに絶望的なものになるだろう。
向こうは俺の出方をうかがうことなく突っ込んできた。振り下ろされたオノをシールドで受け止める。
接近している今がチャンス……!
マシンガンをザクに近づけ、引き金を引く――前に蹴りを入れられ吹き飛ばされる。
『クソったれがぁ……。』
何とか機体を安定させるとその瞬間強い衝撃が俺を襲った。
最後に見えたのは狼が獲物を咥えた――狩人のマークだった。