「があああああああっ!??」
尋常じゃない痛みによって目が覚める。
なんだ? 一体?
というかここはどこなんだ?
感触からベッドの上ということはわかるんだが……。
顔に包帯でも巻かれているのか何も見ることができない。
周囲から音もしないので何の情報を得ることもできない。
…どうやら死んだわけではないようだ。さっきから止むことのない痛みが俺に生を実感させる。
「……おや? 気がつきましたか?」
「…だ、れだ?」
「私は衛生兵ダグラス・コナー兵長です。アマキ少尉ここは軽空母ナイチンゲールの医務室です。」
「医務室? ……ああ、そうか。」
「……覚えてますか?」
「作戦のことか? 覚えてるよ。……損害は?」
「……サラミスが撃沈、ナイチンゲールこそ小破で済みましたがもう一隻は大破し、格納庫が炎上。消火は終わりましたがMSの収納は不可能な状況です。帰還したMSは2機ですがパイロットはあなたを含め3人が帰還しました。カプセルの突入が無事に成功したことがせめてもの救いですね。」
「……カロッソというパイロットは生きているのか?」
「カロッソ? …ああ、ケリィ少尉ですか。大丈夫です。逆に生還した中で一番ピンピンしてますよ。」
…そうか、無事だったのか。よかった。
それはともかく…。
「クソったれ!! あのボケいつかぶっ殺してやる!!」
「少尉!?」
いきなり大声を上げたせいか兵長が驚く。
しかしこちとら殺されかけているんだ。
これくらいは大目に見てほしいものである。
△▼△
見てもらえませんでした。
あの後般若の顔をした兵長に30分間の説教を受けた。
…まぁ、医務室で大声は駄目だったな。
マナーを欠いていることこの上なかったし。
俺がへこんでいると見舞いに来たカロッソが笑う。
「はっはっは!! 結構元気そうだなレン。心配して損したぜ。」
「お前なぁ…。それはないだろう…。」
お前を助けたのは俺だぞ?
少しくらい感謝してくれてもいいんじゃないか?
「いや、俺だってお前のこと助けたぜ? だからお相子だろ。」
それもそうだったな。
でも少しくらいは、なぁ?
「………静かになったな。」
「……ああ、そうだな。」
今、医務室に人がいないということ以前に前の戦いで多くの人間が死んだことが大きい。
少し前までは学生の修学旅行かと疑うほど賑やかだったのだが、今となっては寂れた旅館みたいになってしまった。
改めて実感した。実感せざるを得なかった。
俺が楽観的過ぎたこと。
そして、ここは、どうしようもないほど残酷な戦場であることを。
―――後から思えばここは俺の一つのターニングポイントだったのだろう。
すごく小さくて、忘れてしまいそうなありふれた出来事だった。
それでも、"とあるガンダム好き"から他の誰でもない"レン・アマキ"という人間になるための大切な要素であったことは確かだろう。
▼△▼
それからの宇宙の旅は快適(?)の一言に尽きた。
俺達が襲撃を受けた後すぐにマゼラン級を含む艦隊が救援に来たのが大きいだろう。
MS戦ならともかく艦隊戦ともなれば連邦に大きなアドバンテージを持つ。
分厚い装甲と対ビームコーティングが施されたマゼラン級は生半可な火砲では傷をつけることなど不可能だ。
そもそも接近するにはアホみたいな数の機銃を突破する必要があるのだが、生半可な腕のパイロットではすぐさま木っ端みじんにされてお終いだろう。
その上、火砲の威力もお墨付きだ。
サラミス級もマゼラン級よりは劣るが、それでも高い水準の性能を有している。
大艦巨砲主義の産物とよく揶揄されるが、あくまでMSのせいで時代遅れになってしまっているだけでMSがいない、少ないといった状況なら返り討ちにするくらい訳ないのだ。
実際に襲撃に来たジオン軍を一瞬で宇宙の塵に変えていたしな。
大変だったのはルナツーに帰還した後だ。
今回の大損害の責任を取らされたとかそういう訳ではない。(一応作戦は成功したし、どうやらレイ博士たちは無事にジャブローに到着したようだ。)
単純に部隊の再編や訓練の一新に伴い忙しくなっただけだ。
ちなみに今回生き残ったパイロット3人は全員MS小隊の隊長になった。
普通なら喜ぶべきことなのだが、誰も喜んではいなかった。
何故なら、それは熟練のパイロットがどこまでも不足しているというどうしようもない現状の証明に他ならないからだ。
△▼△
『ぐうっ……!』
加速に伴うGに耐えられずうめき声が漏れる。予想よりもかかったな…。
それでもまだ耐えきれる範疇だ。そのままスピードを維持して突撃する。
向かう先には二機のガンキャノン。訓練の模擬戦の相手だ。
そのまま速度を落とさずに狙いをつけて引き金を引く。
相手の動きが鈍く、簡単に撃墜判定がでる。
二人ともMSの操縦がほぼ初めてとはいえ酷すぎるな。
ほぼ棒立ちだったぞ…。
『少尉殿ぉ。そろそろ終わりにしましょうよぉ。』
『そうだぜ。もう俺たちゃもうクタクタだよ。』
一緒に訓練をしている部下の二人が文句をつける。
『はあ……。まだ全然動かせてないだろう。それに俺の機体だってまだまだなんだ。もう少しだけでも付き合ってもらうぞ。』
二人が揃って鬼!悪魔!人でなし!とか言っていたが無視だ無視。
「あーーー。酷い目にあった…。」
「…疲れたぜ……。」
「お前ら…。これくらいでへばるか普通? 一応二人とも元戦闘機乗りだろう?」
「戦闘機とMSじゃあ全然違いますよ!!」
「そうだぜ。操縦方法も索敵も何もかも違うんだ。もう少しくらいゆっくりやってくれてもいいんじゃねぇか。」
……なるほど。そういう意見もあるのか。
そういえば見落としていたな。
「分かった。分かった。考えとくよ。」
「分かってくれたならいいです。そういえば少尉殿と俺達の機体って何が違うんですか。」
ああ、そういえば何も説明していなかったな。
前の作戦で機体を失った俺は新しい機体を支給されたのだ。
「俺のは後期型だな。お前たちが乗っている前期型と比べてスラスターの増設、ジェネレーターの強化、指が3本から5本にふえたって感じかな。あと兵装のテストでビームライフルとビームサーベルが装備されているくらいだな。」
「そんなに変わってないな。」
「いや、結構変わっているぞ。スラスターが増えたから機動力は上がっているし、指が増えたおかげで武器を持つときの安定性はかなり増したぜ。後ジェネレーターの強化でビーム兵器が使えるようになったのは大きいな。」
「ビーム兵器? そういえばビームサーベルって何だ?」
「ビーム兵器ってのはそうだな、簡単に言うと軍艦のメガ粒子砲みたいなものだな。凄いぞ。どんなに装甲が分厚くたってコイツなら一発だ。ビームライフルはまんまメガ粒子砲を小さくしたものだな。ビームサーベルはそれを剣状にしている白兵戦用の武器だな。」
「へえ、すごいですね。俺達にも早く配備されませんかねぇ。」
「近いうちされるんじゃないのか?ガンキャノンの前期型じゃあ無理があるからな。」
とか言ってるが正直後期型でもかなり無理があるけどな。
ビーム兵器が使えたところで機動力がザクと比べて致命的なのは変わっていないからだ。
……さっさとジム完成しないかなあ。