駄文ですが読んでいただけたら幸いです。
※この話はギレンの野望準拠です。オリジン要素はほぼ入ってません。
『『ジークジオン!ジークジオン!ジークジオン!』』
小さい頃を思い出す時、いつもこのフレーズと人々の歓声を思い出す。
U.C.58年
俺が生まれたその年は、ジオン・ズム・ダイクンの名の元にサイド3ムンゾが独立した記念すべき年だった。
採掘した資源も工場で作った生産品も連邦に持っていかれ、自分達で自給できるにも関わらず食卓に並ぶのは高い関税を払ってまで他のコロニーから輸入した小麦やジャガイモのパンばかり。
移住でうまい汁が啜れたのはブッホやハロイといった連邦とのパイプを持ったほんの一握り。
あとは政治争いに敗れ宇宙に放り出された没落貴族か棄民政策で連れてこられた労働者しかいない。
それでいて連邦政府は、才能があれば誰でも出世できると歌いながら学校不足から来る競争率と授業料の高さで中産階級以下を切り捨てる始末。
できたてのサイド3に仕事を求めてサイド1から移住してきた老人たちや、地球から追い出されてやむおえず生活圏を移すことになった親世代からずっと聞かされてきたことだった。
同じ人間なのにアースノイドには見下され、地上なら持って当たり前の人権すら脅かされてきた。
それがこの独立で解放されたのだ。
スペースノイドによるスペースノイドのための生存圏の設立。
連邦政府は無論、どのサイドも連邦寄りで当てにならない以上、自分の国は自分で守らないといけない。
そう思って俺は士官学校に入ったんだけども…
『えー、数学2 語学1 化学1 物理2 体育4 技術4…
よくもまあこんな成績で我が校に入れたもんだ。裏口入学でもしたのか?』
中学もろくに出ていない自分の成績は散々。
在学中に行われるようになったモビルスーツ適正試験でA評価を取ったことで首の皮一枚繋がったものの、憧れだったグワジンやザンジバルの搭乗員への道はきれいさっぱり絶たれてしまった。
だが、今はそれで良かったと思っている。
なにせザクという戦局を覆せる強力な機体に乗れているのだから。
そのはずだった…
UC78年1月3日8時3分
『隊長!コロニーが…コロニーが!』
熱した焼きごてのように無機質なコロニーの外壁に続く真っ赤なクレーター。
コロニーの端から端まで数キロに渡ってできたそれは見るからに致命傷で、密閉型とは言えコロニーの外壁修復機能程度ではどうにもならないのは明白だった。
「…あ…ああ…」
焼け跡にそってコロニーに亀裂が走る。
そこから吹き出している白いモヤは空気だろうか。
何回か小規模な爆発を起こしてどんどん亀裂を広げていく。
いや、モヤだけじゃない。
白いガスに混じって黒い点のようなものが宇宙空間に飛び出していく。
最初は外壁の破片だと思った。
だけど、ザクのモノアイの望遠レンズはそれが瓦礫だけではなく、先ほどまで生きていたもののなれの果てであることを克明にモニターに表示していた。
「あああぁ…」
吐き気に襲われ直視するのに耐えられなくなり視線を反らすとモニターの端に映ったバズーカに目が止まった。
自分のザクが持っているバズーカだ。
そうだ核バズーカだ。
おれがうったんだ。
おれがあれをやって…
「アアアアアアアアアァァァァァ!!!!……………」
どうしてこうなってしまったんだ。
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U.C.79年1月3日2時20分(開戦5時間前)
開戦まであと5時間。
ムサイ級巡洋艦キールの狭い会議室では緊張が高まっていた。
書類を広げるわけでもないのに無駄に広い机と士官用だからと設置されたソファーに床面積を占領された、元から圧迫感のある部屋なのに余計に圧を感じる。
「よし、時間だ。これより最後のブリーフィングを行う。」
小隊長のドミンゴ大尉はそう言うと、手元の端末からディスプレイに密閉型のコロニーの映像を写し出した。
サイド3よりも一回りは大きい。
「見ての通りこれはサイド1のコロニーだ。流石は箱もの行政の連邦が初めて造っただけあってかなり大きいな。名を13バンチと言う。我々の目的はこのコロニーに駐留する連邦艦隊の撃破だ。」
コロニーのベイ部分が拡大される。
よく見るとベイの近くに小判鮫のように数隻の艦隊が張り付いていた。
「現在分かっているだけでも駐留しているのはサラミスが4隻にコロンブスが3隻。これに加えて場合によってはルナツーから派遣されたマゼランとサラミス3隻の艦隊が増援に来ている可能性がある。」
「まさしくけた違いだ。ですがそのための核弾頭でしょう?」
相槌をうつように3番機を務めるトーヤ軍曹がバズーカを肩で撃つ真似をした。
「無論その通りだが、いくら奇襲とは言えグラナダ占領後の戦闘だ。宣戦布告から早く見積もっても30分はかかる。その間にコンバットボックスを組まれてみろ。有効射程に入る前にアボンだ。」
「グラナダ占領……各コロニーに帰順を呼び掛けるためというのは分かりますが、連邦に喉元に刃を突きつけられたサイド達が今さら応じてくれますかね?」
ドミンゴ大尉は首を竦める。
「まあまずないだろうな。よってここでは連邦艦隊が出てきた場合のみを考えてミーティングしようと思う。もし開戦にもなっても出てこないようならベイごと核で吹き飛ばしてしまえ。コロニーもベイが壊れた程度ではびくともしないだろうからな。」
「まずマゼランだがあの艦の弱点は…」
会議室を出た頃にはもう4時を幾分か過ぎていた。
既に戦闘配備についている人もちらほら見かけ、モビルスーツ格納庫には必勝祈願といってザクにお祈りしている整備士まで居た。
あと3時間で戦争が始まる。
そう思うと実感がなくとも緊張してしまって何かやらなきゃいけないような気がしてくる。
ドミンゴ大尉には仮眠を取るように言われているが、一睡も出来そうにない。
そうこう歩いている内に気付けばロッカールームに来てしまっていた。
が、早くに来たにも関わらず既に先客が居座っていた。
2番機を務めるミフネ曹長と整備士のマイセン軍曹だ。
「おう早いなサトー少尉。どうだ一杯やってかないか?」
「曹長、朝酒は不味いですよ。軍曹もせっかく整備したザクに酔っぱらいを乗せる気ですか?」
「まあそう言いなさんな。こいつは昔っから酒入れてからが本番なんだ。」
どちらも共和国軍時代からのベテランで、この艦最古参の下士官なんだけども、コロニー公社時代からの習慣だと言ってどこからともなく酒を持ってくると仕事を始める前にこうして泡盛を始めだす。
本人達は朝酒は門田を売っても飲めとか言って進めてくるんだけど、彼らにとってアルコールが入ってれば酒なのでサマゴンだったり医務室からパクってきた薬用アルコールだったりザクに使うアルコールに卵を入れた卵酒だったりとろくなもんじゃない。
「本当にいいのか?士官用の調理室から銀蝿してきたボルドー産のコニャックだぞ。いい酒は酔わんし、禁酒なんて人生の半分を無駄にする大罪だぞ。」
「ボルドー産のコニャック!代用品のいも酒とかじゃなくて5000ドル位するあれですか!?」
5バンチ産のコニャックと言えばズムシティでもその道の店にでも行かないと出てこないような嗜好品だ。
この艦にあるのも衝撃的だが、何より1本、あっても2本3本しかないような高級品をパクってくる曹長も曹長だ。
いくら盗まれる方が悪いとは言え、バレたら下手すると軍法会議にかけられるんじゃないだろうか。
「こらこらそんな大声を出すな。どうせ戦が終わるまでは帰ってこられんし、お前も俺もこの艦もどうなっているか分からん。運良く生き残っているかもしれないし、ラグランジュポイントをさまよう幽霊になっているかもしれん。それなのにお偉いさんのポッケの中にいつまでも置いておけるかってんだ。ドミンゴは言わないが俺はハッキリ言うぞ。宇宙は人間の人知を越えて遥かに危険な場所だ。ドンパチやらないコロニー公社でさえ毎年数百人の犠牲者を出すような暗黒空間なんだぞ。そんなところで戦争をやろうってんだから今を逃したらもう飲めんぞ。」
ミフネ曹長はそう言うと黙ってコニャックの入った紙コップをつきだしてきた。
こうも言われたら飲まないわけにもいかない。
受けとるとクイッと一気に飲み干した。
いつも飲んでいるようなビールよりもアルコール度数が高いはずなのにまろやかな舌触りで思った以上にスルッと飲めてしまった。
「どうだ上手いだろう。この戦争に勝てば地球産のナポレオンが腹一杯飲めるようになる。貧乏酒生活ともおさらばさ。」
そうしたら俺も闇酒業から足を洗うかとマイセン軍曹も相槌をうつ。
「まあそんな良い未来のためにもまずは長生きすることさ。お前はまだ若いんだから無理に前に出ようとするな。俺の後ろを付いてこい。そうすれば少なくとも俺よりは後に死ねるさ。」
真面目か冗談か、ミフネ曹長は屈託のない笑顔で高らかにそう笑った。
U.C.79年1月3日7時20分
『『地球連邦政府並びに地球に住む全ての者達に告ぐ。私はジオン公国総帥ギレン・ザビである。』』
ついにこの時がやってきた。
結局あれから一睡も出来ずこの時を迎えてしまった。
自分は冷たいザクのコックピットの中で一人寂しく聞いていた。
現在、艦はソロモンから発進してサイド1の宙域に向かって全力で航行している。
あと20分もすれば戦闘宙域に入るだろう。
モニターから見える格納庫内は無酸素状態を示す赤色のランプで真っ赤に染まっており、スクランブルが出ればいつでもハッチを開いて発進できるようになっている。
『『地球連邦政府は、我々を宇宙へと追いやり地上から宇宙を支配してきた。そして一握りのエリートがその私利私欲を満たすだけのために、我々スペースノイドは自由を奪われ続けてきたのである。』』
「手は曲がるか足は動くかバーニアは吹けるかスラスターは機能するか、出撃したらしっかり確認しろよ。計器なんか当てにするな。自分のカンを信じろ。俺の経験則上、壊れている時は大抵モニター表示もいかれてるからな。」
出撃前にドミンゴ大尉から言われたようにしっかりとロックされているかどうかを確認する。
マニピュレーターも動く、首も回る、メインカメラも目標を捉えられる。
準備万端問題なしだ。
『『…だがこの屈辱の歴史も今ここで終わる。腐敗した連邦を叩き、スペースノイドの真の自立を果たすために我らジオン公国は地球連邦政府に宣戦を布告する!』』
ギレン総帥の宣戦布告が終わると同時にハッチ解放を知らせる黄色いランプが回転を始めた。
それと共にコックピット内に発進準備を知らせるブザーが鳴り響く。
『いいか、外に出たらとにかく直ぐにムサイの外壁に貼りつけ。ムサイの全速力を利用して初速を稼ぐんだ。』
全回線を使った宣戦布告が終わったことでようやく小隊との通信が復旧したみたいだ。
「了解!」
『装備を落っことすんじゃねぇぞ。マッハでかっ飛ぶ宇宙ゴミになっちまうからな。』
「分かってます!」
『それじゃあ行くぞ!』
ミフネ曹長のザクがハッチの側のレバーを下げるとそれに呼応するように厚さ50センチもあるスチール合金製のハッチが静かに開き始めた。
『ほい、命綱だ。』
モビルスーツを回収するウインチ用のワイヤーが渡されたのでザクの腰に結びつける。
これが切れたら最後、何もない宇宙空間に放り出されて徒歩で艦隊を追いかける羽目になる。
ミフネ曹長は全員が命綱を結んだのを確認すると艦外に勢い良く飛び出した。
その姿にはまるで迷いがなく技量に絶対の自信があるのがひしひしと伝わってくる。
そしてそのままの勢いで格納庫側面の取っ手を掴むとそれを支点にすばやく跳躍して艦の側面に張り付いた。
バーニアなしにやるには慣性がモロに働くから制御が大変なはずなのに、さすが30年来のベテランだ。
『さあ曹長に続け。』
ドミンゴ大尉、トーヤ軍曹と次々に飛び出していく。
次は俺の番だ。
右のペダルを踏みこみ格納庫の外へと飛び出す。
すると今まで鉄の隔壁しか見えなかったモニター一面に白や青のイントネーションに彩られた宇宙空間が広がった。
いつ見ても幻想的な光景だ…
と思ったのもつかの間、内蔵が浮き上がったかのような感覚がしたかと思えば命綱にぐっと機体を持っていかれた。
『おいおい少尉殿、そんな溺れてると武装を全部吹っ飛ばしちまうぞ。』
そうだった。
こんな見とれている場合じゃなかった。
慌ててコンソールで武装を確認する。
右腕のマシンガンは…無事、腰のマガジンも…ある。背中のバズーカも…大丈夫だ。
飛ばされたものは一応ないみたいだ。
手信号で不具合のないことを伝えた。
『よし、全員無事だな。あとは俺に任せておけ。ここは俺の庭みたいなもんだ。隕石の数まできっちり頭に入っている。住所間違いなんて赤っ恥だからな。きっちり案内してやるよ。』
気づけばサイド1もかなり近いところまで来ていた。
自然とレバーを握る手も固くなってくる。
汗を脱ぐって手をグーパーしていると出撃を告げる二度目のブザーが鳴り響いた。
『全機発進!』
ドミンゴ大尉の号令のもと一斉に発進する。
ミノフスキー粒子が散布され始めたのか、ワイヤーから手を離した途端、あらゆる通信が途絶してしまった。
ふと見上げると、艦隊のあちこちから打ち出された照明弾が暗黒の宇宙を真っ昼間のように照らし出し、作戦の開始を告げていた。
見れば他のムサイからも一斉に発進していてちょっとした流星群みたいになっている。
これなら勝てる。
そんな漠然とした自信がこの時の俺を駆け巡っていた。
思えばこの自信が破滅の始まりだったのかもしれない。
ヨースケ・サトー少尉
UC58.2.27生まれ 20歳
サイド3 2バンチ出身。幼い頃に父親のツテで24バンチタイガーバウムに引っ越す。
そこで見た貧富の格差と聞き続けた差別の歴史から独立精神に目覚め学生運動に没頭。
就職に不安を覚えた父によって士官学校に入れられたことでより一層熱が入り、なんとか卒業に漕ぎ着ける。
…しかし、エリートコースでもなく民間に就職でもなく、最も危険の多いパイロットになったことで親子仲は悪化。
今は、父親の元同僚であるミフネ曹長の家に居候している。