ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第42話 始祖神降臨

始祖の神:ルーツというスーパーアカウントでアンダーワールドにダイブしたアスナは、すぐ様眼前に広がっていた敵を固有スキルで殲滅した。しかし…それと同時に脳を突き刺すような痛みが襲う。

 

「ッ…」

 

あまりの痛みに意識が飛びそうにもなったが、どうにか保った。

これが比嘉から聞いていた固有スキル『紅光』の反動だった。これを使用すると、アスナ自身のフラクトライトに多大な負荷がかかるため、無闇に使用するのは控えろ…とのことだった。

だが、そんなことはすぐに片隅に置き、アスナは漸く地面の上に立つことが出来た。赤い土に枯れた木々が密集した地帯…アスナが知る現実世界とはまるで違う。まさに『暗黒界』と言ったところか…。

 

(まずは…キリトくんを探さないと…。彼のフラクトライトがまだ生きているんだから…きっとどこかで…)

 

すると、後方からロニエとユージオを支えるティーゼがゆっくりと近付き、声をかけた。

 

「あっ…あの…!」

 

「あなたは…神様…ですか?」

 

振り向いたアスナは一瞬驚くが、自分の服装が明らかに神様と間違われてもおかしくないので、その事はすぐに否定した。

 

「いえ…違うわ。あなた達と同じ人間よ。名前はアスナよ」

 

「アスナ…様、本当にありがとうございましたッ!あなたの神の力で私たち、整合騎士…いえ、人界軍を救ってくれました!」

 

「う…うん…そうなの…」

 

自分が神様だと未だに思われており、慣れないアスナ。

しかし、すぐにアスナは自分がここに来た本題を繰り出した。

 

「あの…私、人を探しに来たの…。キリトくんっていう、黒髪の…」

 

「キリト…!」

 

彼の名前にユージオはすぐに反応した。

アスナは彼らがキリトのことを知っていると分かり、詰め寄る。

 

「知ってるのね!キリトくんのこと…。どこなの?彼は…どこにいるの⁈」

 

しかし、ユージオはアスナにその答えをすぐに言うことが出来なかった。

アスナがキリトを探しに来たという事は、間違いなく別世界から来た事は容易に分かる。そんな彼が死んだ…などと言えば、彼女はどんなに悲しむか…分からない。それ故に、彼のことを言うことが出来ない。

しかし、その行為はキリトに会うことを待ち焦がれているアスナをイラつかせることになってしまう。

 

「どうして答えてくれないの?教えてよ…ねえ!」

 

口調が強くなり、先程の優しい表情は徐々に怒りへと変わっていく。

あまりに豹変にユージオが口を開こうとした時。

蒼い炎を纏った剣撃がアスナに向かってきた。アスナは反射的に剣を抜き、その一撃を弾いた。

 

「ッ⁈」

 

しかし、その分右腕に響いた衝撃はSAOなどと比較にならないものだった。まるで鋼鉄の壁に剣を叩きつけたかのような衝撃が肘にまで響き、アスナは表情を歪めた。

だが、剣撃を放った者はそこから追撃を仕掛ける。

アスナはそれも防御し、鍔迫り合いに持ち込み、そこで漸く襲撃者の顔を見ることが出来た。

金色の髪に青い瞳の女性…間違いなく、SAOの時に出会ったアリスそのものだった。今見せてる怒りの表情も…全く同じだった。

しかし…何の話し合いもなく剣を差し向けることだけは驚きを隠せない。

 

「貴様…何者だッ⁈その剣で…ユージオたちを斬ろうとしたなッ⁈」

 

「な…私は…っ、そんなつもりじゃ…!」

 

アスナは否定するが、一度火がついたアリスは止まらない。

鍔迫り合いから離脱し、蒼炎の斬撃を飛ばしてくる。

それをアスナは身体を捻らせながら回避し、4連撃SSガドラプル・ペインを打ち込んだ。

 

「⁈」

 

アリスはそれを辛うじて受け流したが、今までに見たことない剣技に動揺した。間違いなく4連続で放たれた突きなのだが、それはあまりに高速で素人ならば、1度しか突きを受けてないと勘違いするほどであった。明らかな強敵にアリスの視線は更に強くなる。

2人の戦いを見てるだけで止められない3人のところに、飛竜に乗って漸く辿り着いたイーディスが合流した。

 

「イーディス…!どうしたの⁈その傷!」

 

「大したことないわよ、あなたと比べたら。ユージオこそ、無理して動いたんでしょ?」

 

ギクっとするユージオだが、イーディスは咎めない。

それよりも目の前で剣をぶつける2人の美女に目を向けていた。

 

「…アリスと同等かそれ以上の美しさを誇るあの女性は誰?とても敵に見えないけど」

 

「あ、はい…。急襲を仕掛けてきた暗黒騎士団を神の力で地下深くへと落としたアスナ様です…。アリス様は…ちょっと勘違いしているようですが…」

 

「それと…彼女はキリトを探しに来たと言っていた」

 

「!キリトを…」

 

彼女が何者にせよ、こんな場所をいつまでも戦闘を続けられたら困る。

イーディスはアリスに声をかける。

 

「アリス!やめなさい」

 

「黙っていてください‼︎イーディス、この者は私がここで始末します!」

 

「だから話を聞いてって…!」

 

「うるさいッ‼︎狼藉者がッ‼︎」

 

と…いう風にすぐに戦闘が激化してしまう。

イーディスは「はあ…」と深く溜息を吐く。

 

「はあ…しょうがないなあ」

 

未だに剣をぶつけ合う2人の間に剣を滑り込ませたイーディス。

それを見た2人は、流石に戦闘を止めざるを得なかった。そしてアリスの怒りの矛先はイーディスへと向けられる。

 

「何をするのですか、イーディス‼︎彼女は間違いなく敵の間者…!ここで私が…」

 

「いいから話を聞きなさいって、アリスの悪いところだよ?彼女はね…ピンチになってたあの子らとユージオを助けた人なんだよ?」

 

「し、しかし…彼女はユージオたちに剣を…」

 

「ああ、イーディスの言う通りだ」

 

するとそこに傷を1つも負っておらず、ピンピンなベルクーリがやって来た。

 

「叔父様…!拳闘士軍は⁈」

 

「ああ、あいつらは来なかったよ。そこの女神のお陰でな」

 

「……」

 

女神と呼ばれることに慣れないアスナは複雑な表情をしてしまう。

 

「そこの女神が振るった紅い光…それに触れた者は塵と化し、その地面は激しく裂けた。あまりの裂け目に、人間離れした跳躍力を持った拳闘士軍も流石に立ち往生していたぜ」

 

そこまで聞いたアリスは、更なる疑問をぶつける。

 

「では…叔父様はこの者が神話に登場する本物の始祖神だと言いたいのですか?」

 

どうやらまだアリスが持っているアスナへの不信感は晴れないようだ。

この疑り深さはSAOの時以上だ。

 

「そうでもないと思うぜ?本当に神様なら、話もろくに聞かない嬢ちゃん如き、神の一撃であの世行きだと思うぜ?ということは…」

 

そこまで言って、ベルクーリはアスナの方を向く。

やっと話が分かってくれる人が出来て、安心したアスナは息を深く吐きながら剣を納めた。

 

「はい…私は人間です。神ではありません。ただ…私がやって来たのかこの世界とは全く別のところです」

 

「ほう…ここで話すのもなんだ。みんなを集めて、話してもらおうじゃないか。そこの2人も来るといい。それと、俺には果酒を用意しておいてくれ」

 

ベルクーリの言葉にロニエとティーゼは「はい!」と答えた。

ベルクーリが林の奥へ行くと、アスナは足を進めてユージオの肩を強く掴んだ。

アリスは、その行動に怒りを露わにする。

 

「貴様…何を⁈」

 

「いいの、アリス」

 

今度はきちんとアリスを止めるイーディス。

 

「しかしイーディス!彼女は…!」

 

「彼女がここに来た目的は、キリトのことよ」

 

初めてそれを聞き、アリスは驚愕の表情へと変える。

ユージオは戸惑いを隠せずにいるが…アスナの表情を見た途端、動揺を隠せなかった。

アスナは、涙に潤んだ瞳をユージオに向け、声を震わせて聞いた。

 

「ねえ…教えて…。キリトくんは…キリトくんはどこにいるの?」

 

先程の戦闘で見せた気迫など全くない…純粋な女性の顔。

ユージオは一瞬視線を逸らしたが、いつまでも隠していてもアスナを苦しめるだけだと判断した。

息を吐き、ユージオは真実を語り始めた。

 

「君が探しているキリト…彼は…もういない」

 

「えっ…もういないって…どういうこと?」

 

アスナの脳内に比嘉の言葉が蘇る。

 

『キリトくんは…アンダーワールド内で死亡したと思われます』

 

この言葉をアスナは信じてなどいなかった。

キリトが負けるはずがない、今までだってどんな時でも必ず生きてきた。そう…思い込ませていたアスナだったが、現実は非情だ。

 

「キリトは、僕たちを…この世界を守るために、犠牲になった」

 

それを聞いた途端、アスナの身体がストンと崩れ落ちる。

同時にポロポロと涙が溢れた。

では何故フラクトライトがまだ維持出来ているのか?などと言った疑問は、この瞬間だけ吹き飛んでいた。

悲しみだけがアスナを襲う。

それを見ている5人も…あの時の悲しみ…苦しみを思い出してしまう。

だが、アスナも泣いてばかりはいられなかった。

襲撃者はアリスを狙っており、この戦争を止める術を人界軍に伝えなくてはならない。

張り裂けそうな悲しみをすぐに押し込み、アスナは立ち上がった。

 

「すぐに今の状況を話すわ。アリスたちを来て」

 

全員静かに頷き、アスナの後に続こうとした時、不意にイーディスが足を止めた。

 

「どうしました?イーディス」

 

「…ううん、何でも」

 

イーディスが気になったのは、腰にかけた黒剣であり…一瞬輝きを放ち、動いたように見えたが…気のせいだと思い、すぐに彼らの後を追うのだった。




【補足】
『始祖神:ルーツ』
人界を創造したと言われる始祖の神。そのアバターを使用して、アスナがアンダーワールドにダイブした。能力としては、人間を分子レベルで破壊する光線を天から降り注がせることが可能。それはぶつかった地面なども跡形もなく破壊する程。しかし、能力の使用は自らのフラクトライトに多大な負荷をかけるため、数回程しか利用出来ない。
元ネタはミラルーツ。正直…最初はアンイシュワルダにして、『地形操作』だけに特化するという案もありましたが、ボツにしました。理由としては、アイツ自体があまり神々しさがない…という点ですね。
余談ですが、最初の○○神…相当悩みました。創世神でも良いかなと思ったんですが、ルーツは全ての龍の始祖と言われているだけで、『創世』したわけではないんですよね…。そこから何度も考えて、1番シンプルな『始祖神』が良いかなと、思い至りました。
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