ソードアートオンライン Monster Hunter World 作:GZL
「な…なんじゃこりゃああああああああああ‼︎‼︎」
キリトは早朝にも関わらず、第22層全体に響き渡る程の大声を上げた。
その原因は彼の隣で寝ているアスナだった。
夫婦なのだが、アスナはまだ一緒のベッドで寝られない…ということで、キリトはそれぞれのシングルベッドを買ったのだが、キリトのベッドに潜り込んだアスナは彼の身体に抱きついて、よだれを垂らし、ムニャムニャと寝言を言っている。
「キリトくぅん……えへへ…大好きぃ…」
しかも、よだれはキリトの大事な場所に垂れていた。
キリトはどういう理由があったにせよ、早く起こさないと、自分を抑えられないと思い、アスナの肩を揺すった。
「おい、アスナ…起きてくれよ…。マジ…恥ずかしいんですけど…」
「キリトくぅん…暴れちゃダメだよお…」
「…ダメだこりゃ」
キリトは顔を赤くしながらも、そう呟いて、諦めて、再びベッドに倒れるのだった。
「…………」
「アスナ…元気出せよ…な?」
さっきのことが余程恥ずかしかったのか、顔を俯いて耳まで赤く染め上げているアスナ。ここまでシャイなら、同じベッドに潜り込まなきゃいいのに…とキリトは思いつつ、トーストを焼いて、アスナに渡した。
今の状態じゃ、アスナはとてもじゃないが料理は出来そうもなかった。
「ほら、アスナ」
「あ…あるがと…」
「寝ぼけてたアスナ…めっちゃ可愛かったよ?」
耳元で
熱い程に火照った頬を優しく触って、キリトはオデコにキスした。
「…もう、死んじゃいそう」
「どうして?」
「…幸せ…だから」
キリトはどうしてアスナはそんな大胆なことを何度も言えるのだろうと思った。
そして、トーストを放って、彼女にもう一度キスしようとした。
が…。
「あーーーーー‼︎キリトくんのバカ‼︎」
衝撃的なフックがキリトの顎を直撃し、吹っ飛ばすのだった。
顎を摩りながら、キリトはアスナの手を取って、22層にある散歩道を歩いていた。吹き抜ける柔らかな風が心地良かった。逆にそれがキリトの顎の痛みを長引かせている原因でもあるが…。
因みにアスナがキリトを殴った理由だが、食べ物を粗末にしたことだ。
トーストを投げてしまったことが彼女の導火線に火を付けてしまったようだ。料理スキルをカンストさせているアスナはキリトが想像する以上に食べ物に対する情熱が凄まじい。だから、食べ物を粗末にした奴は容赦しない…と、アスナは後々に言っていた。
「…ねえ、キリトくん。肩車して」
「肩車?」
突然言い出したことにキリトはちょっと動揺する。
「か、肩車?何でそんなことを?」
「だって、同じ高さから見た景色なんて飽きちゃうし…キリトくんの筋力パラメータなら余裕でしょ?」
「そいつはどうかな?案外アスナも重い……」
その先をキリトが言おうとしたとき、彼女の手には
「…言いすぎました…」
「よろしい」
束縛がキツい妻だとつくづく思うキリト。
キリトは溜め息がちに姿勢を低くする。ゴソゴソと何かやっているとアスナはこんなことも言ってきた。
「後ろ向いたら顔切り刻むからね!」
「理不尽だな、おい…」
そう呟くと、綺麗な太ももがキリトの両頬に触れる。
少しばかり恥ずかしながらも、キリトは足腰に力を込めて一気に立ち上がった。
するとアスナから嬉々とした声が上がった。
「うわああ!凄い良い眺めだよキリトくん!」
「俺には見えないけどな」
「じゃあ、後で私もやってあげよう!進め‼︎真っ直ぐ!」
「…へーい」
意外とアスナは子供なのかもしれない…とキリトは思うのだった。
アスナはとても楽しく感じていた。
キリトと一緒にやること全てが輝いているように思えた。
今もずっと肩車をして貰っているアスナだが、普段、他人にこんなことは頼めない。
愛している人にだから頼める、とっておきの特権だと感じていた。
アスナは誰もいないだろうからと、ワイワイと声を上げながらキリトと一緒に
「どうしたの?」
「よく見ろよ…」
キリトの指差す先には釣りをしているプレイヤーが少しいて、キリトとアスナのイチャイチャの様子を全て見られてしまった。
カァーと頭の中が熱くなっていくのが分かるくらい、アスナは一気に恥ずかしさが上り詰めていく。
「…見られちゃった…」
「…しっかり掴まってろ‼︎」
そうキリトが言うと、アスナを肩車しながら一気に走っていき、山の中へと入っていった。
ちょっとだけ薄暗い道を肩車されながら歩いていると、不意にキリトがこんなことを言い出した。
「アスナ、この森ってさ…
そう聞いて、背筋がちょっと硬くなる。
「それって……ホラー系のモンスターってこと?フルフルベビーとか…あの気持ち悪いギィギ…とか…」
アスナははホラー系のモンスターは本当に苦手…どころか、大嫌いなのだ。
触るたくもないし、逢いたくもないし、戦いたくもないくらいに…。
だが、アスナの予想と反した答えが返ってきた。
「本物の幽霊だよ」
「え?」
アスナは背筋にゾッと悪寒が走った。
「つい先日…この森の芝を刈っていたウッドクラフターがいたんだ…。夢中になって刈っていたせいで、辺りは真っ暗。そろそろ帰宅しようとした時、木々の間で揺らめく白い影が…」
「ひっ…」
アスナが恐怖の声を漏らすと、キリトは笑いを漏らした。
「安心しろよ、アスナ。ここはゲームだぜ?そんな幽霊なんかいる訳ないだろ?」
「そ、そうだよね…。幽霊なんているはずが……ない……」
そう呟きながら森の方を見た途端、アスナの全身の筋肉が硬直した。
木々の間を歩く白い服を着た幽霊が…ゆっくり…ゆっくりとキリトたちの前を横切っていたのだ。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼︎‼︎降ろして降ろして降ろして‼︎」
「お、おい!どうしたんだよ⁈」
「前…‼︎前!前‼︎」
言葉を発するのも恐ろしい程、恐怖で口が震えてしまうアスナ。
キリトも漸く森の中を歩く白い影に気付いたのか、「えっ⁈マジかよ‼︎」と、驚きの声を上げていた。
2人はその白い影をじっと見詰めていると、2人に気付いたのか、ふっとこちらを見たのだ。目が合いそうになったので、アスナだけは思わず目を逸らして地面に伏せた。
だが、すぐにキリトは…。
「…?あれは…違う!幽霊なんかじゃない!」
1人先に幽霊の方に走っていくキリトにアスナは恐怖の声を上げる。
「置いていかないでよ‼︎もうーー!待ってよー‼︎」
1人でいるのが何より怖かったから、アスナは急いでキリトを追った。
そして、その幽霊がいる場所に恐る恐る向かうと、そこにいたのは意識のない白いワンピースを着た幼い少女だった。
歳は10歳くらい、裸足で武器もない。艶やかな黒髪が特徴的だった。
「プレイヤー?」
「こいつはバグってるのか?」
「どうしたの?」
「カーソルが出ないんだ」
キリトの言う通り、アスナの視線からも、この少女のカーソルも出てないし、何も表示されていないので、名前すら分からなかった。
「どうしてこの森に…」
「…考えるのは後にしよう。一旦家に戻ってこの子を寝かせてやろう。寒そうだしな…」
「そうね…」
キリトは少女を抱える。
2人はそのままログハウスへと戻ったが、この少女が…2人の生活にどれほど大きな変化を与える存在になろうとは…予想も出来なかった。
【補足1】
『フルフルベビー』
文字通り【奇怪竜フルフル】の幼体。MHRiseで【フルフル】が復活するから、何かしらで関連するものを登場させたかった。
【補足2】
『ギィギ』
【毒怪竜ギギネブラ】の幼体。人によっては、気持ち悪さよりも可愛さが勝るかも…。
私の初めてのモンハンがMH3、そして個人的にガチで怖いと思ったモンスター。孤島の洞窟で出会った時の恐怖は今も忘れない。
アンケートのご協力ありがとうございます。
アンケートをどのように活用するか、言っていませんでしたね。主に一番票が多かったものを登場させようかと思っています。
今回のアンケートは次の話までを期限とします。たまにアンケートを出していきたいと考えています。