ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第12話 家族の時間

ログハウスに戻って、キリトは倒れていた少女を自身のベッドに寝かせた。

スースーと静かな寝息を立てていて、見た通り、本当に幼い少女だった。

 

「やっぱり…カーソルは見えない。ここまで運べたことからNPCでもないし…どうなってんだろ…」

 

「そうだよね…。じゃあ、キリトくんの言う通り、この子はプレイヤーであの森を彷徨(さまよ)っていた…ってこと?」

 

「それはこの子が目を覚ますまで分からない。とにかく…今日はそっとしておいておこう」

 

 

 

 

夜…キリトと同じベッドで横になっても…アスナは昨日みたいな多幸感はほとんどなかった。理由は分かっている。

隣のベッドでまだ目を開けないあの子が気になっているからだ。

アスナはそっとベッドから抜け出して、あの子が寝ているベッドに入り込んだ。

そして…母親のように優しく抱き締めた。

 

(こんな地獄みたいな世界でただ1人…1人なんて…寂しかったろうね…)

 

と、思いながら,、アスナも眠りに落ちていくのであった。

 

 

 

 

朝日が目に当たって、アスナは目を覚ました。

時計を見るともうかなり遅い時間帯だった。昨日色々とあったから疲れていたのだろう。

まだ寝惚けから抜け出せずにベッドの方を見ると、黒い瞳をパチクリさせながら、少女は無言でアスナを見詰めていた。

 

「あっ‼︎き、キリトくんキリトくん‼︎起きて‼︎」

 

「ん……なんだよ、アスナ…こんな朝から…あ!」

 

キリトも集合したところで、2人は未だにボーッと見詰めている少女に質問する。

 

「ねえ…君、なんて名前なの?」

 

「……な、ま、え?なま…えは、ユ………イ…」

 

片言の日本語で話す『ユイ』と言う少女に、アスナとキリトはやはりどこかおかしいと思った。

 

「ユイちゃんかあ…。可愛い名前だね。お父さんやお母さんはいないの?」

 

「……わかん…ない」

 

「!そんな…」

 

お父さんもお母さんのことも分からないって言うことにアスナは少しだけショックを受ける。すると、キリトは優しい笑顔を見せながら、アスナに代わって質問する。

 

「ユイ…って呼んでいいかな?」

 

コクリと小さく頷くユイ。

 

「俺たちが誰か分からないと不安だろ?俺はキリト、こっちの可愛い奥さんがアスナ」

 

「かっ…かかか、可愛い……っ」

 

こんな時までアスナの胸を(えぐ)るような言葉を放つキリト。

しかも、初めて人の前で恥ずかしいことを言われたからか、アスナの顔は見る見るうちに真っ赤に染まっていった。

 

「きいと……あうな…?」

 

「ちょっと難しいか…。じゃあ、ユイが言いやすい表現で良いよ」

 

すると、ユイは暫し考え込んだ後にこう言った。

まずキ、リトを指差して…。

 

「パパ…」

 

「ぱ、パパ⁈俺が…?」

 

「あうなは…ママ…」

 

「えっ…あっ…」

 

2人とも戸惑ってしまうと、ユイの瞳が突然激しく(うるお)った。

『そう呼んじゃ…ダメかな』?と言いたげに…。

そんな切ない表情をされてしまっては、2人は何も反論出来ないと思った。

そして、アスナは笑顔を向けて、ユイに言った。

 

「そうだよ、ママだよ、ユイちゃん」

 

「…ママ!」

 

初めて見せた笑顔にアスナは嬉しく感じた。

そして、笑顔のユイちゃんを抱えて、一緒に台所へとアスナは駆けていった。

 

 

 

 

キリトはアスナが昼食に用意してくれた特製サンドイッチを食べながら新聞を読んでいた。このサンドイッチの中にはレア食材の【ガブリブロース】や【オニオニオン】が入っている。前者は非常に美味だが、後者は誰でも手に入れられるものだ。

だが、キリトはアスナの作ったものはたとえ通常の食材でも何倍に美味しく感じられると感じている。

そんな中、キリトのことをユイがジッと見ていた。

最初は構ってほしいのかと思ったが、ユイの視線は明らかにキリトの手に握られているサンドイッチに向いていた。

 

「…食べたいのか?」

 

「うん…パパとおんなじご飯がいい」

 

「…よし、それならほれ」

 

「あっ…!」

 

『キリトに食べて欲しかったのに…』と言いたげな表情のアスナ。

だが、それを横目にキリトはユイが頑張ってサンドイッチを頬張る姿に見惚(みと)れる。

何度も咀嚼(そしゃく)して、口の中をいっぱいにした。が、ユイの表情はとても辛そうなものだった。

 

「お、おいしい…」

 

「おい…辛いのをそこまで無理して食べなくてもいいんだぞ、ユイ」

 

そう…アスナが用意してくれたのは結構辛みの強いソースがかかったサンドイッチだったのだ。だが、ユイはそれを我慢して食べたのだ。

 

「おいしいもん!辛くない!」

 

「はいはい」

 

キリトがそう受け流すと、2人のログハウスに楽しい笑い声が響くのであった。

 

 

 

 

ユイとたくさん遊んだ後に、寝静まったのを見て、キリトとアスナと今後の話を始めた。

 

「キリトくん…やっぱりユイちゃんは…」

 

「ああ……記憶がないようだ」

 

「記憶がないどころじゃないよ……」

 

アスナは膝の上で手をギュッと握る。そして、目からは涙が零れた。

 

「まるで…赤ちゃんみたい……。きっと…本当は辛いんだろうって分かる…。ごめん…もう、どうしたらいいか分からなくて…」

 

「…アスナ、暫く…ユイは俺たちで預かる…というか……一緒に暮らそうよ?」

 

「キリトくん…」

 

「ユイが居たら…ここが本当の家族なんじゃないかって…思ったりするんだ」

 

「……そうだよね…。ママがしっかりしなきゃ…子供を育てられないよね…」

 

「ああ、だから…そんな心配そうな顔をするなよ。俺がついているんだから」

 

そう言って、キリトはアスナの涙を拭った。

 

「でも、まずはユイの家族を探そう」

 

「そうだね…。あの年の子供が1人でナーヴギアを被るのは考えられないからね」

 

「だから明日、久しぶりに第1層に行こう。そこなら色々な情報が手に入るし」

 

「一番の問題は軍ね」

 

アスナの言葉にキリトは緊張感を募らせた。

第1層を含め、約数層は軍のテリトリーで今でもかなりの横暴が続いている。

そこに攻略組が絡んでくるとなってしまうと、面倒なことになってしまう。

しかも2人は今は休暇中の身…。下手なことは出来ない。

キリトとアスナは互いに頷く。

すると、隣で寝ているユイから寝言が…。

 

「ママ……パパ……」

 

2人は優しく笑顔を作って、ユイの頭を撫でるのだった。




【補足1】
『ガブリブロース』
特産品『魔の化石』から入手できるレア食材。MHWよりは、入手は簡易。
いっつも思うけど…どうやったら化石から肉が出てくるんだ?

【補足2】
『オニオニオン』
野菜食材。栽培が可能。味は玉ねぎに近い…と思われる。
ナンバリングでは何度となく登場している食材。
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