ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第13話 軍

転移エリアから降りるキリトとアスナの前に広がるのは、初めて…このゲームが『デスゲーム』であるということを告げられた場所だった。

あの日…2人はこの場所で宣言された。

赤く染まる空…不気味なフードの男…そして、茅場の淡々とした声。

今でも忘れられない。忘れられるはずがなかった。そのせいか、2人は無意識のうちに空を見詰めていた。

 

「パパ?」

 

そんな時、ユイから心配そうな声をかけられた2人はハッと意識を取り戻す。

 

「どうした、ユイ?」

 

「怖い顔……してた。ママも…」

 

「大丈夫だよ、ユイちゃん。それよりユイちゃん、この街並みとか、見たことあるかな?」

 

ユイは周囲をぐるっと見渡してから、首を横に振った。

 

「よし、少し回ろうか…」

 

キリトはユイを背中におぶり、アスナと共に街を歩く。

やはり『始まりの街』ということで、この第1層だけは異常なまでに広い。

キリト自身もβテストの時、迷ってしまうくらい広い。それくらい印象に残っているので、ユイも何かしら覚えているんじゃないかと、キリトは期待を持っているが…。

 

「ねえ、キリトくん」

 

「なんだ?アスナ」

 

「この第1層って…どれくらいプレイヤーがいるのかな?」

 

「えーと…SAOのプレイヤーは元々10000人…それでおよそ4000人死んで残っているのが6000人弱で…今の攻略組とかを考慮したら…400人はいると思うよ?どうかしたのか?」

 

「それにしては…人…少なくない?」

 

キリトは言われて、初めて気付いた。

確かにあの広場に到着してからプレイヤーがまるでいなかった。

いないというわけではないのだが、少なすぎる気がした。

プレイヤーたちは自宅から出たくないのか…それとも…。

 

「きゃああああ‼︎」

 

不意に悲鳴が街中に響いた。

キリトとアスナは互いに頷いて、その場へと駆けていくのだった。

 

 

 

 

悲鳴の方へ走っていくと、10歳くらいの少年少女、合わせて4人を取り囲む軍のプレイヤーと、「子供たちを放して‼︎」と必死に叫ぶ女性を見つけた。もちろん力のある軍は女性プレイヤーの言うことなど聞くはずがない。

…2人は前々から気付いていた。

軍は指揮官の命令有無に関係なく、他プレイヤーから金、アイテム、そして自由を強制していることを…。

更にそれが原因で以前の活気溢れていた第1層とは見違える程、雰囲気が逆転してしまったのも今の光景を見て予想出来た。

 

「そいつは無理だなあ。こいつらガキにも徴収が必要なんでね…。我らが軍が更なる力を手に入れるために」

 

「……そこを…退きなさいっ‼︎‼︎」

 

女性プレイヤーは腰の短剣に手を伸ばす。

アスナはここで我慢の限界を迎えた。

 

「キリトくん…行くよ…」

 

キリトの返事を待つ前にアスナは一気に駆け出し、アロイ装備と初期武器【ハンターナイフ】を身につける軍の真上を飛んで子供達の前に立った。

その跳躍力と走力に少しばかり驚く軍の連中だったが、すぐに自分たちの方が偉いんだ、強いんだと伝えたいのか、わざとらしい演説が始まった。

 

「なんだ貴様ら…我ら解放軍の職務を邪魔する気か⁈」

 

「俺たちの苦労も知らずに、のけのけと!」

 

「まあ、待て」

 

薄笑いを浮かべた1人が前に出る。

 

「テメエら…解放軍に逆らうっていうことがどういうことか…分かってんだろうな⁈」

 

男は鈍く光る片手剣を抜き、そう怒鳴った。

子供達は「ひぃ…!」と泣き出しそうな表情になる。

 

「…キリトくん、ユイちゃんとこの子たちをお願い」

 

「ああ」

 

アスナはストレージから剣を取り、抜く。

細剣から漏れ出るヒヤリとした冷気が足下を包み込む。

男は明らかに油断していて、女であるアスナに負けるはずがないと言いたげにニヤニヤしまくっていた。

その笑いが、アスナにとっては非常に嫌だった。

 

「せいっ‼︎」

 

アスナが放った単発SSリニアーが男の顔面の手前で止まる。

だが、ソードスキルの勢いだけで男は軽く後ろに飛んでしまう。

 

「どわああ‼︎」

 

吹っ飛んだ男は頭を振って、何が起こったのか考えようとするが、その前にアスナが口を開く。

 

「安心して。私はあなたを殺そうなんて思っていない…。直前で止めてるから。ただ…軽い反動があなたを襲っているだけ…。でも…本当のソードスキルによる恐怖は叩き込める…!」

 

キッと目を鋭くさせると、男は半ベソかいて逃げ出そうとするが、アスナは男の身体を更にもう一度吹き飛ばした。

すると、男は茫然としている仲間に叫ぶ。

 

「お、お前ら‼︎この女と男、それにガキどもを捕まえろ‼︎そうしたら…給料上げてやるぞ‼︎」

 

他の奴らはお金が増えるという欲望に負けたのか全員一斉に剣を抜く。

アスナも剣を構えて、相手をしようと思ったが、キリトに肩を叩かれた。

 

「キリトくん」

 

「次は俺だ。大丈夫、一瞬で終わらせてやるよ」

 

そう言って、キリトは黒く輝く【覇王剣】を手に取った。

 

「解放軍を…舐めるんじゃねええ‼︎‼︎」

 

一斉に突撃してくる奴らにキリトは4連撃SSバーチカルスクエアを放って、全員を吹き飛ばす。これも当たってはいない。だが…信じられない衝撃波が彼らの身体を襲い、周囲の建物にも僅かなヒビを入れさせた。

 

「相手するならここじゃなくて、デュエルでやろう。ただし…その時は今度こそ命を奪うからな…。その気がある奴だけ来い!」

 

キリトの怒声が木霊すると、遂に恐怖に負けた彼らは背を向けて、泣きながら逃げていった。

 

「全く…子供にまで手を出しやがって…」

 

「大丈夫?君たち?」

 

アスナは子供たちに心配そうに聞く。

すると、少年少女たちは「「「「すげーーー‼︎」」」」と声を上げて、2人に走り寄ってきた。ユイをおぶっていたアスナは危うく落としけてしまう程に驚いてしまう。

 

「ねえ!どうやってあんなに強くなれるの⁈」

 

「この剣、すごいカッコいい!」

 

「お兄ちゃんの黒い剣もイケてる‼︎」

 

キリトもアスナもここまで褒められたり、武器に関して言われるのは初めてのことだったので、どうしたらいいのか狼狽(うろた)えていると、後ろからさっきの女性が…。

 

「本当にありがとうございました!子供たちを助けて頂いて…」

 

「いえ…あんな目に遭っているのを見て、放ってなんかおけませんよ。それより早く移動しましょう。奴らがまた来たら面倒ですからね」

 

「そ、そうですね!皆さん、こっちです!」

 

3人はその女性に連れられて、一旦とある場所に避難するのだった。

 

 

 

 

「凄い重い!こんなのどうやって振るの?」

 

「それはだな…カクカクジカジカ…」

 

キリトはそう説明を続けているが、いつまで質問タイムは続くのだろうか、と心の中で思っていた。もう既に1時間半くらい、子供たちの相手をしている。

それにしても子供達を預かって、軍から守るなんて…サーシャも凄い根性を持っているとキリトは思った。

 

「そういえば…!」

 

アスナが思い出したかのように声を上げ、ユイをサーシャの前に出した。

 

「この子…見覚えありませんか?22層の森の中で迷っていて…」

 

「うーん…私はありませんねえ…。でも親御さんなら探しているかもしれないので…また後日探してみます」

 

「そうですか…」

 

アスナは少し肩を落とした。

そんなアスナにキリトは優しく語りかける。

 

「大丈夫だよアスナ。きっと見つかる…」

 

「うん…そうだよね」

 

「先生!軍の人が来た‼︎」

 

1人の子供の発言により、場の空気が一気に変わった。

 

「人数は?」

 

「1人…それも女の人」

 

「私が出ます、女の人なら…どうにかなりますから」

 

そう言ってアスナがドアを開いた。

アスナの前には灰色の髪で軍のマークを付けたインゴット装備の女性プレイヤーが立っていた。

 

「あなたが先程、我々の部下を追い払ったプレイヤーですね…」

「ええ、そうよ。軍に反抗したからって、牢獄でも連れていくの?」

 

(ちょっと挑発的過ぎないか…)

 

と、キリトは言いたくなったが、その女性プレイヤーの口からは衝撃の言葉が…。

 

「実は…その件ではなくて…。おり言って…お願いがあるのです‼︎」




【補足1】
『アロイ装備』
モンハンシリーズの最初期の装備。王道な銀色の鎧。
第1層で調子に乗っている軍、という設定から、かなり弱い装備が良いと思って、これにしました。
私は3G以外でこの装備を使ったことないです。


【補足2】
『ハンターナイフ』
モンハンシリーズ最初期の片手剣。上記の『アロイ装備』と同じく、弱い弱い軍の武器なら何が良いかと考えた結果、これが最初に思い浮かびました。
記憶が正しければ、MH3で最初に持ってる武器がこれだったはず…。


【補足3】
『インゴット装備』
『アロイ装備』の上位互換…と私は認識してる。
銀色の『アロイ装備』と違い、銅色を基調としている。
3Gで『インゴットX装備』を作ろうとしたが、素材集めに絶望して、諦めたという、苦い思い出がある。
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